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公爵令嬢 3

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 第二学年で帝国第一王女が留学してきて、第二王子を取られてしまった。父公爵に言ってもこれだけは、どうにもならなかった。帝国は父公爵より強力な札なのか。勉強が嫌いだから、我が国にとって帝国どんな存在かよくわからない。
 最近父公爵は寝込んでいることが多い。さっさと第二王子と婚約破棄して、伯爵令息と婚約したい。彼なら私を身分から裏切れない。あの子爵令嬢は泣いているのだろうな。あの程度の身分で美しいものを、自分のものにしようなんておこがましい。


 今年の王宮舞踏会では、第二王子からエスコートできないと言ってきた。では伯爵令息にエスコートしなさいと言うと、第二王子の婚約者をエスコートすることはできないと言われた。では、私は一人で行けと言うのか。
 歯ぎしりするほど腹立たしい。美しいものは私のものなのに。

 第二王子からドレスが贈られて来ないだろうと思って、父公爵に強請って私の一番好きな紅色でリボンとレースで飾ったドレスを仕立てた。伯爵令息の瞳の色のサファイアの首飾りと耳飾りを身につけた。侍女が色が合いませんとか言っていたが、私の好きな色で固めて何が悪いと押し切った。

 

 そして今一人で王宮舞踏会に来ている。入り口まで侍従の先導で入ると、すでに煌びやかなドレスに身に纏った女性や正装の男性が踊っていた。真ん中では第二王子が第一王女と優雅に踊っていた。少し前ならカッとなっただろうが、今の私には伯爵令息がいる。彼にキスをしてもらうためにも第二王子は切り捨てないといけない。

 踊り終えた第二王子が壁際に下がったのを見て、近づいて行った。第二王子は私を見ても平然としていた。

 第二王子、私があなたの婚約者ですよね。なのにそんな女と浮気している。もう結構です。私にはもう愛し合ってる人もいますし、婚約破棄して下さい。異論はありませんよね。

 一気に言ってやったが、第二王子は麗しい顔で皮肉そうな笑みを漏らした。周りの貴族達は息を飲んで成り行きを見つめている。


 公爵令嬢、第一王女をもてなすのは国交と言いましたよね。私はきちんと説明しました。あなたの愛し合ってる人いうのは、私の従兄弟の伯爵令息でしょうか。
 あなたは父公爵の力をもって無理矢理彼らの婚約を壊したそうですね。しかも私という婚約者がいるのに、伯爵家に婚約するように圧力をかけましたね。
 そして公爵家から格上の王家への婚約破棄を申し出るとは。しかもこんな公的な場所で。あなたの気持ちがわかりません。公爵家がどうなってもいいのですか。
 あなたの父の公爵は今瀕死の床にいるとか。こんな場所にいる場合ではないのでは。


 私はカッとした。自分のしたことを棚に上げて私を非難するとは。許せないと口を開こうとしたら、長兄に無理矢理腕を引かれ、頬をぶたれた。王家に無礼をするとはゆるなさいと言われた。
 私を助けてくれるはずの父公爵を探したがいない。私にキスをしてくれるはずの伯爵令息もいない。私の味方が一人もいない。なぜなんだろう。
 長兄に引きずられるように舞踏会を後にするとき、出口に伯爵令息がいた。助けてほしくて腕を伸ばすと、彼は無表情で踵を返した。


 馬車に無理矢理押し込められ、邸に戻ると執事や使用人がばたばたと走って来て、長兄に父公爵の容態が悪化した事を伝えて来た。私は長兄の腕を振り切って父公爵のもとに行った。すでに顔色が変わった父公爵にすがり付き、伯爵令息と婚約したいと訴えた。


 すがり付いた時、父公爵が甘やかしすぎた。弁えることのできない子にしたのは私のせいだなと震える腕を上げて、乾いた指で私の頬を触った。


 遅すぎます。いくら相思相愛の女の子でもやりすぎでしょう。これは自ら第二王子に婚約破棄を宣言しました。格上の王家にした不敬は許されません。


 長兄が父公爵に告げると、父公爵は最後の息を吐き切って目を瞑った。


 


 私は父公爵の葬儀にも出れなかった。王家に対して不敬を働いたとして、学園も退学になり領地の邸で拘束されている。
 長兄と次兄がやって来た。長兄が公爵を継ぎ、次兄が伯爵を継ぐそうだが、どうでもよかった。

 長兄がこれからは私が当主なのでお前は甘やかさない。修道院に行くか領地の外れの邸に数人の使用人と逼塞するか選べという。
 そんなの美しいものが手に入らないならなんでもいい。なんなら殺してくれてもいい。

 でもそう言えば、私の母は父公爵にとってなんだったのか知りたくて尋ねた。
 私の母は公爵家で侍女をしていた貧しい男爵家の娘だと言う。侍女として働くうちに手がつき、父公爵の妾になった。その後正妻が亡くなって妻にした。
 私を産んだ時産褥熱で亡くなった母は私によく似た女だった、それから父公爵は残された私を溺愛したというわけらしい。


 父公爵に溺愛されたと言われても、実感がない。私の欲しいものを叶えてくれるのは、父として当たり前ではないかと長兄に言うとお前に反省はないのだなとため息をつき帰ってしまった。
 次兄が残って何をいうかと待っていたら、長兄次兄の母には相思相愛の婚約者がいたのに、父公爵が権力で割り入って破棄させて自分が娶った。無理矢理だったので長兄次兄の母が気持ちを父公爵に傾けないと、手のひらを返して子だけ産ませて放置した。お前は本当に父に似ているよと吐き捨てて去っていった。


 
 
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