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学園入学前
親というもの リヒャルト殿下
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御前から辞去した後、自室に向かわずに歩き出すと、近衛が数人付き従ってきた。
「殿下、どちらに向われるのですか?」
私付きの護衛騎士ヤンが、小走りについてきた。すれ違う者達は頭を下げて、隅に控えるが、物言いたげな視線は送る。こう言った対応には慣れている。王族には名は連ねているが、私は微妙な立ち位置なのだ。何しろ私には王家の色がない。幼い頃これを知らずに、嫌な視線を向けるものがいると、乳母に泣きついたものだった。言葉こそないが、ジロジロ見られるのは嫌なものだ。
王宮から北門に向かい北の離宮を見下ろす場所に来た。王族が幽閉されるのに使われる王宮の一画でも極めて寂しい北の離宮を見下ろした。ここに国王が言っていた娼婦のような王太子妃が己れが連れ込んだ愛人と暮らしている。
国王の教えてくれた学園での婚約破棄事件は実は初耳ではない。ここ王宮は知りたくないことでも、忠義顔で知らせてくるところだ。国王の話を聞いて、随分マイルドに告げてくれたなと思ったくらいだ。知らしてきた者達はもっと下衆な言葉で知らせてきたからだ。
現在王太子と王太子妃は別居中だ。原因は王太子が私が生まれて、ようやく王太子妃の娼婦のような所業を知ったことだ。14歳の私でも思う、王太子はどれだけ目を眩ませていたのかと。王家の直系の血を引く男子は、成人までに必ず金色の瞳になる。私の瞳は琥珀色だ。王家の子でも母親の瞳が濃い色だと金色になるのが遅れるという過去の例がいくつもあるらしい。娼婦のような王太子妃は黒い瞳なので遅れているのではというのが表向き。実は王太子が父親ではないかもしれないという疑いがあるのだ。
娼婦のような王太子妃が、学園在学中に関係を持ったのは三人。王太子は金色の瞳、マイヒェルベック公爵は碧眼、ヘルツォーク侯爵は琥珀色の瞳だ。私が産まれた時このヘルツォーク侯爵の子ではないかと取り沙汰されて、ヘルツォーク侯爵は王太子の側近を辞退した。
私が王家の子であってもなくても、王太子妃は時期を見て愛人と共に処分されるらしい。王太子はどうなるんだろうか。本当ならとっくに譲位されているはずなのに、国王の意向で譲位されないのは、私の結果待ちなのだろうと思う。国王には息子が一人しかいない。そのため、あの事件ですぐ王太子を廃嫡できなかったという。だが今は年の離れた王弟に息子が生まれ金色の瞳なのだ。スペアは用意された。王太子も私も処分されるかもしれない。
自分の命に執着はない。親のしでかしたことで、私の未来はない。私を大事に思ってくれる侍従や乳母には申し訳ないが、私の心の中は常に虚しい。私が生まれてきた意味はなんなんだ?愛ってなんなんだ?親とはどういうものなんだ?私には一生答えは出そうにもない。
「殿下、どちらに向われるのですか?」
私付きの護衛騎士ヤンが、小走りについてきた。すれ違う者達は頭を下げて、隅に控えるが、物言いたげな視線は送る。こう言った対応には慣れている。王族には名は連ねているが、私は微妙な立ち位置なのだ。何しろ私には王家の色がない。幼い頃これを知らずに、嫌な視線を向けるものがいると、乳母に泣きついたものだった。言葉こそないが、ジロジロ見られるのは嫌なものだ。
王宮から北門に向かい北の離宮を見下ろす場所に来た。王族が幽閉されるのに使われる王宮の一画でも極めて寂しい北の離宮を見下ろした。ここに国王が言っていた娼婦のような王太子妃が己れが連れ込んだ愛人と暮らしている。
国王の教えてくれた学園での婚約破棄事件は実は初耳ではない。ここ王宮は知りたくないことでも、忠義顔で知らせてくるところだ。国王の話を聞いて、随分マイルドに告げてくれたなと思ったくらいだ。知らしてきた者達はもっと下衆な言葉で知らせてきたからだ。
現在王太子と王太子妃は別居中だ。原因は王太子が私が生まれて、ようやく王太子妃の娼婦のような所業を知ったことだ。14歳の私でも思う、王太子はどれだけ目を眩ませていたのかと。王家の直系の血を引く男子は、成人までに必ず金色の瞳になる。私の瞳は琥珀色だ。王家の子でも母親の瞳が濃い色だと金色になるのが遅れるという過去の例がいくつもあるらしい。娼婦のような王太子妃は黒い瞳なので遅れているのではというのが表向き。実は王太子が父親ではないかもしれないという疑いがあるのだ。
娼婦のような王太子妃が、学園在学中に関係を持ったのは三人。王太子は金色の瞳、マイヒェルベック公爵は碧眼、ヘルツォーク侯爵は琥珀色の瞳だ。私が産まれた時このヘルツォーク侯爵の子ではないかと取り沙汰されて、ヘルツォーク侯爵は王太子の側近を辞退した。
私が王家の子であってもなくても、王太子妃は時期を見て愛人と共に処分されるらしい。王太子はどうなるんだろうか。本当ならとっくに譲位されているはずなのに、国王の意向で譲位されないのは、私の結果待ちなのだろうと思う。国王には息子が一人しかいない。そのため、あの事件ですぐ王太子を廃嫡できなかったという。だが今は年の離れた王弟に息子が生まれ金色の瞳なのだ。スペアは用意された。王太子も私も処分されるかもしれない。
自分の命に執着はない。親のしでかしたことで、私の未来はない。私を大事に思ってくれる侍従や乳母には申し訳ないが、私の心の中は常に虚しい。私が生まれてきた意味はなんなんだ?愛ってなんなんだ?親とはどういうものなんだ?私には一生答えは出そうにもない。
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