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ミラ編
恋の成就
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ミラと手を繋いで帰る。ミラの手はひんやりとしている。冷たい手を私の気持ちで温めたい。
ようやく初恋にけりをつけられた。あの時アンジェが私に微笑んでくれても、ああ幸せそうと思っただけだった。
今はそばにいてくれるミラが愛しい。このまま一緒に一生いてくれないだろうか。
ミラは私のアンジェへの気持ちを知っている。マリアンヌとの関係も知っている。今更好きだと言っても気持ちを受け入れてくれるだろうか。
二人でミラの家まで戻った。エレナが出迎えてくれた。話があるからと客間に通してもらったが、ミラは訝しげだ。さあ私の気持ちはミラに届くのだろうか。
****
「アンジェ、どうした」
「どうしたとは?」
「誤魔化すな。パレードでエミールに手を振っただろう?」
うーん 国王になられても嫉妬深いこと。
「ええ 可愛らしい人と並んでいたから、幸せになったのだなと思って祝福の気持ちで手を振りましたの」
腕を引かれて抱きこまれる。相変わらずです。そこに
「おとうさまぁ おかあさまぁ」
侍従に手を引かれた王子と乳母に抱かれた王女がやって来た。バルコニーに続く扉を開けようと近衛騎士達が続々と入室して来た。
「さあ 国民に挨拶するぞ」
**
戴冠式に続く祝宴も全て終わり、今は真夜中だ。国王夫妻の寝室にエリック様と二人きり。婚姻時に寝室は分けないとエリック様が言い張ったので、いつも寝室は一つ。私が妊娠中、早速父の反対派閥が側妃の話を持ってきたが、恐ろしい剣幕でお断りになったそうだ。そんなエリック様はまだ私の初恋に拘っていらっしゃる。
「エリック様 いつも私の初恋に拘られるけど、エリック様の初恋はいつですか?」
ベットに横になっていたエリック様は驚いたように半身を起こした。でも私が誤魔化されないとばかりに、エリック様の頬を軽くつねったら笑い出した。
「いや 嫉妬されるとは嬉しいな」
いやいや誤魔化されません。睨んで差し上げました。
「そうだな。初恋は十六歳の時かな。図書室でよく会った少女だったと思う。いつも目を輝かせて本を読んでいた。だが当時既に彼女は婚約者がいたし、淡い思いはおしまいになった」
「その方は婚約者の方と結婚されたのですか」
「いいや 婚約破棄されて修道院に入ったと聞いたが、先程はエミールの隣にいたな。修道院から出たのだな」
びっくりした。何という縁だろう。
「では、まだ気持ちはお有りなのですか?」
拗ねた声になっただろう。でもベットに引き倒された。
「そんなわけはない。アンジェのデビュタントでの出会いが二度目の恋の開始さ」
「だったら私も一緒です。真摯に思って下さった方に二番目の恋をしました。二番目の恋だって本物だってことです」
「そうだな。その通りだ」
夜の帳はしめやかに下りた。
*****
エミール様と手を繋いで家に戻った。何かお話があると言う。どんな話なのだろう。客間で二人きりになると、婚約の申し込みをされた。
一瞬何を言われたわからなかった。
「もう初恋はいいのですか」
「初恋どころかマリアンヌとの関わりもある。こんな男ではだめだろうか?」
「そんなわけはありません。私こそ婚約破棄されて修道院に行っていたような女です。こんな女でいいのでしょうか」
「そんなことは関係ない。幸せにします。ホーク伯爵に申し込みに行ってからミラに申し込むべきでしたが、ミラに早く打ち明けたくて」
「もちろんお受けします」
涙があふれて来た。ぼたぼたと膝を濡らす。慌ててエミール様が横に座って肩を抱いてくださった。
辛く悲しい十年だったが私にも光りがさして来たのだ。幸せになりたい。マリアンヌ、エレナ許して私は幸せになりたい。
終
ミラ編の方が圧倒的に長くなってしまいました。なろうの方ではバッドエンドですのでハッピーエンドをお望みの方はこちらをお読みいただけると幸いです。ありがとうございました。←のつもりでしたがあちらも違うエンディングですがハッピーエンドになりました。よろしかったら覗いてみて下さい。
ようやく初恋にけりをつけられた。あの時アンジェが私に微笑んでくれても、ああ幸せそうと思っただけだった。
今はそばにいてくれるミラが愛しい。このまま一緒に一生いてくれないだろうか。
ミラは私のアンジェへの気持ちを知っている。マリアンヌとの関係も知っている。今更好きだと言っても気持ちを受け入れてくれるだろうか。
二人でミラの家まで戻った。エレナが出迎えてくれた。話があるからと客間に通してもらったが、ミラは訝しげだ。さあ私の気持ちはミラに届くのだろうか。
****
「アンジェ、どうした」
「どうしたとは?」
「誤魔化すな。パレードでエミールに手を振っただろう?」
うーん 国王になられても嫉妬深いこと。
「ええ 可愛らしい人と並んでいたから、幸せになったのだなと思って祝福の気持ちで手を振りましたの」
腕を引かれて抱きこまれる。相変わらずです。そこに
「おとうさまぁ おかあさまぁ」
侍従に手を引かれた王子と乳母に抱かれた王女がやって来た。バルコニーに続く扉を開けようと近衛騎士達が続々と入室して来た。
「さあ 国民に挨拶するぞ」
**
戴冠式に続く祝宴も全て終わり、今は真夜中だ。国王夫妻の寝室にエリック様と二人きり。婚姻時に寝室は分けないとエリック様が言い張ったので、いつも寝室は一つ。私が妊娠中、早速父の反対派閥が側妃の話を持ってきたが、恐ろしい剣幕でお断りになったそうだ。そんなエリック様はまだ私の初恋に拘っていらっしゃる。
「エリック様 いつも私の初恋に拘られるけど、エリック様の初恋はいつですか?」
ベットに横になっていたエリック様は驚いたように半身を起こした。でも私が誤魔化されないとばかりに、エリック様の頬を軽くつねったら笑い出した。
「いや 嫉妬されるとは嬉しいな」
いやいや誤魔化されません。睨んで差し上げました。
「そうだな。初恋は十六歳の時かな。図書室でよく会った少女だったと思う。いつも目を輝かせて本を読んでいた。だが当時既に彼女は婚約者がいたし、淡い思いはおしまいになった」
「その方は婚約者の方と結婚されたのですか」
「いいや 婚約破棄されて修道院に入ったと聞いたが、先程はエミールの隣にいたな。修道院から出たのだな」
びっくりした。何という縁だろう。
「では、まだ気持ちはお有りなのですか?」
拗ねた声になっただろう。でもベットに引き倒された。
「そんなわけはない。アンジェのデビュタントでの出会いが二度目の恋の開始さ」
「だったら私も一緒です。真摯に思って下さった方に二番目の恋をしました。二番目の恋だって本物だってことです」
「そうだな。その通りだ」
夜の帳はしめやかに下りた。
*****
エミール様と手を繋いで家に戻った。何かお話があると言う。どんな話なのだろう。客間で二人きりになると、婚約の申し込みをされた。
一瞬何を言われたわからなかった。
「もう初恋はいいのですか」
「初恋どころかマリアンヌとの関わりもある。こんな男ではだめだろうか?」
「そんなわけはありません。私こそ婚約破棄されて修道院に行っていたような女です。こんな女でいいのでしょうか」
「そんなことは関係ない。幸せにします。ホーク伯爵に申し込みに行ってからミラに申し込むべきでしたが、ミラに早く打ち明けたくて」
「もちろんお受けします」
涙があふれて来た。ぼたぼたと膝を濡らす。慌ててエミール様が横に座って肩を抱いてくださった。
辛く悲しい十年だったが私にも光りがさして来たのだ。幸せになりたい。マリアンヌ、エレナ許して私は幸せになりたい。
終
ミラ編の方が圧倒的に長くなってしまいました。なろうの方ではバッドエンドですのでハッピーエンドをお望みの方はこちらをお読みいただけると幸いです。ありがとうございました。←のつもりでしたがあちらも違うエンディングですがハッピーエンドになりました。よろしかったら覗いてみて下さい。
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