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ミラ編 IF
ミラの告白 IF
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「エミール様 エミリアをこのまま私が引き取る事をどう思われますか。兄には反対されました」
エミール様が私をじっと見つめて、ほっとため息をつかれた。
「ホーク伯爵に妹なら絶対エミリアを引き取ると言うから反対してくれと言われています」
「やはり未婚の女が幼い子を引き取るのは無理があるのでしょうか」
「ミラ嬢 エミリアはやはり両親揃った家に引き取られた方がいいと思います。一時はあの子も慣れ親しんだ大人と離れて辛いでしょうが、将来を考えると私達と全く関係ない家に引き取られた方が自分の生まれを知らずに済みます」
言ってしまってもいいだろうか。このまま初恋のように後悔と哀しみだけに終わるぐらいなら、自分の手で粉々にして未練は断ち切りたい。
「エミール様 エミール様には想いびとがいらっしゃると聞きました。その方と結ばれてエミリアを引き取ることはできませんでしょうか」
エミール様はびっくりした顔を私に向けた。そして合点がいったように頷いた。
「ああ エレナですね。エレナにマリアンヌと結婚してエミリアを育てて欲しいと言われた事があって」
「すみません。個人的な事に踏み込みたいわけではなく……」
いや 十分に踏み込んでいる。何を愚かなことを言ってるのだろう。あまりの羞恥に顔に熱が溜まって来た。きっと真っ赤に見えるだろう。
「いいえ あなたには私がエミリアの父親かと疑われたことも知られてますので、聞いていただいてもいいですか?どうしてマリアンヌと関係を持つに至ったか」
エミール様は両手の指を交差させてぎゅっと握りしめた。
「私がまだ十五の時に妃殿下に会ったのです。今もお美しいですが、幼少時も天使でした。心をあっという間に持って行かれました」
苦しい。こんな事を聞きたいんじゃない。マリアンヌの事より苦しい。エミール様の思い出す表情が優しげで慕わしげで本当に愛してらしたのだ。
「……という訳で愚かな私はドルン侯爵の罠に嵌り、マリアンヌと関係を持ったのです。それでエミリアの父親候補になってしまった訳なのです。ミラ嬢から見ると恋に狂って道を誤った愚かな男に見えますでしょう?」
エミール様は遠くを見つめるような目をしていらした。
「未練がましいと自分でも思いますが、彼女以外と結婚するつもりはないのでエレナの提案も断りました」
他の人を恋い慕うエミール様を見るのは辛い。胸がずきずき痛い。私はまた恋を沈黙に葬り去るのか。
「エミール様は一生もう恋をされないつもりですか。愛しく思うことはないのですか」
「このままです。もう後継のいる貴族でもありませんし、結婚しなくても文句を言う親もいません。商会は歳を取ったら欲しい人に適正な価格で譲ればいい。気が楽になりました」
これ以上は私には無理だ。曖昧に笑って話を済ませた。エミール様もそれ以上言わずに帰られた。次回のお約束はなかった。少しぼんやりしていたら、エレナが兄の訪問を知らせてきた。
「どうだろう。こんな改装で気に入ったか?」
「お兄様いらっしゃいませ。ありがとうございます。昔に戻ったようで満足です」
「そうか。それはよかった。お前には苦労を掛けたから出来るだけのことをしてやれとミュリエーヌにも言われている」
「お義姉様にお礼を言わないと」
「ところでそこでヘルマン氏に会ったが何か言われなかったか?」
「何かとは?」
「実は私からヘルマン氏にお前を貰ってもらえないか申し込みをした」
私は驚愕して思わず立ち上がってしまった。
「お兄様!なぜそんなことをなさったのですか!」
エミール様が私をじっと見つめて、ほっとため息をつかれた。
「ホーク伯爵に妹なら絶対エミリアを引き取ると言うから反対してくれと言われています」
「やはり未婚の女が幼い子を引き取るのは無理があるのでしょうか」
「ミラ嬢 エミリアはやはり両親揃った家に引き取られた方がいいと思います。一時はあの子も慣れ親しんだ大人と離れて辛いでしょうが、将来を考えると私達と全く関係ない家に引き取られた方が自分の生まれを知らずに済みます」
言ってしまってもいいだろうか。このまま初恋のように後悔と哀しみだけに終わるぐらいなら、自分の手で粉々にして未練は断ち切りたい。
「エミール様 エミール様には想いびとがいらっしゃると聞きました。その方と結ばれてエミリアを引き取ることはできませんでしょうか」
エミール様はびっくりした顔を私に向けた。そして合点がいったように頷いた。
「ああ エレナですね。エレナにマリアンヌと結婚してエミリアを育てて欲しいと言われた事があって」
「すみません。個人的な事に踏み込みたいわけではなく……」
いや 十分に踏み込んでいる。何を愚かなことを言ってるのだろう。あまりの羞恥に顔に熱が溜まって来た。きっと真っ赤に見えるだろう。
「いいえ あなたには私がエミリアの父親かと疑われたことも知られてますので、聞いていただいてもいいですか?どうしてマリアンヌと関係を持つに至ったか」
エミール様は両手の指を交差させてぎゅっと握りしめた。
「私がまだ十五の時に妃殿下に会ったのです。今もお美しいですが、幼少時も天使でした。心をあっという間に持って行かれました」
苦しい。こんな事を聞きたいんじゃない。マリアンヌの事より苦しい。エミール様の思い出す表情が優しげで慕わしげで本当に愛してらしたのだ。
「……という訳で愚かな私はドルン侯爵の罠に嵌り、マリアンヌと関係を持ったのです。それでエミリアの父親候補になってしまった訳なのです。ミラ嬢から見ると恋に狂って道を誤った愚かな男に見えますでしょう?」
エミール様は遠くを見つめるような目をしていらした。
「未練がましいと自分でも思いますが、彼女以外と結婚するつもりはないのでエレナの提案も断りました」
他の人を恋い慕うエミール様を見るのは辛い。胸がずきずき痛い。私はまた恋を沈黙に葬り去るのか。
「エミール様は一生もう恋をされないつもりですか。愛しく思うことはないのですか」
「このままです。もう後継のいる貴族でもありませんし、結婚しなくても文句を言う親もいません。商会は歳を取ったら欲しい人に適正な価格で譲ればいい。気が楽になりました」
これ以上は私には無理だ。曖昧に笑って話を済ませた。エミール様もそれ以上言わずに帰られた。次回のお約束はなかった。少しぼんやりしていたら、エレナが兄の訪問を知らせてきた。
「どうだろう。こんな改装で気に入ったか?」
「お兄様いらっしゃいませ。ありがとうございます。昔に戻ったようで満足です」
「そうか。それはよかった。お前には苦労を掛けたから出来るだけのことをしてやれとミュリエーヌにも言われている」
「お義姉様にお礼を言わないと」
「ところでそこでヘルマン氏に会ったが何か言われなかったか?」
「何かとは?」
「実は私からヘルマン氏にお前を貰ってもらえないか申し込みをした」
私は驚愕して思わず立ち上がってしまった。
「お兄様!なぜそんなことをなさったのですか!」
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