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ミラ編 IF
マリアンヌとの別離 IF
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本土に戻って来てこの家には数ヶ月しか住んでないけれども、離島と違って水もあり買いに行けば食料も手に入る。便利な毎日だった。元々離島から持ってきた荷物は無いに等しく、こちらでもマリアンヌの看病でほぼ外出できなかったので、着替えが少しあるだけだったので、荷造りも手間が掛からなかった。
マリアンヌは数日前から医師が来て睡眠薬を加減して、迎えが来る当日眠っている状態で出て行くことになった。エレナは入院先について行きマリアンヌの身の回りの世話をすることになった。費用は全てエミール様が出してくださると言う。
エミリアにお母さんの病気が悪くなって入院すること、エレナはお母さんについて行くけれど、エミリアはエミール様の元に行く事を言い聞かせたが、どうしても私について行きたいと泣くので、新しい両親が決まるまで私の邸に住まわせることになった。兄はどうやら別邸に私が移ったらすぐに縁談を持ち込みたかったらしく、エミリアを一時預かる事を嫌がった。それでも新しい両親が見つかるまでと言う約束でやっと認めてくれた。
マリアンヌとエレナと別れる日がやってきた。
「ミラ、あなたは幸せになって、必ずよ」
エレナは痛いほど私の手を握り締めた。私達親子はなぜ幸せになれないんだろうと泣くエレナを思い出した。エレナ…私も幸せになんてなれないとは言えないから、曖昧に頷いた。
エミリアは泣きもせず、私のスカートの裾を握りしめていた。二人を乗せて馬車が去って行く。私の足元にエミリアが屈み込んで泣き出した。幼いのに次から次へと環境が変わり母親とも別れてしまった。この子の辛さはどこで晴らす事ができるのだろうか。そんな風に思っていたら、背後からやってきた人がエミリアを抱き上げた。
「エミール様」
エミリアを抱き上げたエミール様を見上げると、いつもの私が大好きな穏やかな笑みを向けてくれた。
「ミラ嬢の邸まで送って行くよ」
エミール様が泣くエミリアを抱いたまま、馬車で送って下さった。懐かしい亡き母の実家からの持参金である邸は手入れされ外見も見違えるほどだった。馬車で玄関ポーチに付けると中から母代わりだったエレナが出てきた。
「お嬢様 お元気そうで、やっとお会いできました。伯爵様から馴染みの侍女と護衛を連れていけと言っていただいたので、お嬢様と顔見知りのものを選んで参りました」
「私とエミリアが住むだけだからそんなに人はいらないわよ。私も平民だから自分のことは全部自分で出来るのよ」
エレナが泣いてしまった。
「大切にお育てして、どなたにお嫁いりしても恥ずかしくないお嬢様でしたのに」
「もう嫁入りする身分でも年でも無いわ。この邸を維持する人数だけ残してあとは返して」
そんな会話を交わしていると、寝ていたエミリアが起きて、エミール様に下ろしてくれと言っている。
「エレナ この子がエミリア。平民の子なのでそう言う風に扱って。下手にお嬢様扱いされたら今後の生活が困るから」
エレナがエミリアの手を引いて部屋に連れて行った。
「エミール様 よろしかったらお茶いかがですか」
客間に二人で入って行き、そこにいた侍女にお茶の用意を頼んだ。侍女がカップをソーサーごと滑らすように二人の前に起き扉を開けて下がって行った。ここでは私もまだ未婚の女性なんだなと思って笑えた。
「ミラ嬢 あなたが笑ったの初めて見ました。やはりマリアンヌの看病は負担でしたね。申し訳ありませんでした。私も商会を立ち上げたばかりで、引き受けたマリアンヌを十分に世話もせずに入院させることになって後悔することばかりです。せめてエミリアの引き取り先だけは、厳選しますので」
本当にこの方は真面目で誠実な方だ。この方が魂の底から愛する人とは誰なんだろう。
マリアンヌは数日前から医師が来て睡眠薬を加減して、迎えが来る当日眠っている状態で出て行くことになった。エレナは入院先について行きマリアンヌの身の回りの世話をすることになった。費用は全てエミール様が出してくださると言う。
エミリアにお母さんの病気が悪くなって入院すること、エレナはお母さんについて行くけれど、エミリアはエミール様の元に行く事を言い聞かせたが、どうしても私について行きたいと泣くので、新しい両親が決まるまで私の邸に住まわせることになった。兄はどうやら別邸に私が移ったらすぐに縁談を持ち込みたかったらしく、エミリアを一時預かる事を嫌がった。それでも新しい両親が見つかるまでと言う約束でやっと認めてくれた。
マリアンヌとエレナと別れる日がやってきた。
「ミラ、あなたは幸せになって、必ずよ」
エレナは痛いほど私の手を握り締めた。私達親子はなぜ幸せになれないんだろうと泣くエレナを思い出した。エレナ…私も幸せになんてなれないとは言えないから、曖昧に頷いた。
エミリアは泣きもせず、私のスカートの裾を握りしめていた。二人を乗せて馬車が去って行く。私の足元にエミリアが屈み込んで泣き出した。幼いのに次から次へと環境が変わり母親とも別れてしまった。この子の辛さはどこで晴らす事ができるのだろうか。そんな風に思っていたら、背後からやってきた人がエミリアを抱き上げた。
「エミール様」
エミリアを抱き上げたエミール様を見上げると、いつもの私が大好きな穏やかな笑みを向けてくれた。
「ミラ嬢の邸まで送って行くよ」
エミール様が泣くエミリアを抱いたまま、馬車で送って下さった。懐かしい亡き母の実家からの持参金である邸は手入れされ外見も見違えるほどだった。馬車で玄関ポーチに付けると中から母代わりだったエレナが出てきた。
「お嬢様 お元気そうで、やっとお会いできました。伯爵様から馴染みの侍女と護衛を連れていけと言っていただいたので、お嬢様と顔見知りのものを選んで参りました」
「私とエミリアが住むだけだからそんなに人はいらないわよ。私も平民だから自分のことは全部自分で出来るのよ」
エレナが泣いてしまった。
「大切にお育てして、どなたにお嫁いりしても恥ずかしくないお嬢様でしたのに」
「もう嫁入りする身分でも年でも無いわ。この邸を維持する人数だけ残してあとは返して」
そんな会話を交わしていると、寝ていたエミリアが起きて、エミール様に下ろしてくれと言っている。
「エレナ この子がエミリア。平民の子なのでそう言う風に扱って。下手にお嬢様扱いされたら今後の生活が困るから」
エレナがエミリアの手を引いて部屋に連れて行った。
「エミール様 よろしかったらお茶いかがですか」
客間に二人で入って行き、そこにいた侍女にお茶の用意を頼んだ。侍女がカップをソーサーごと滑らすように二人の前に起き扉を開けて下がって行った。ここでは私もまだ未婚の女性なんだなと思って笑えた。
「ミラ嬢 あなたが笑ったの初めて見ました。やはりマリアンヌの看病は負担でしたね。申し訳ありませんでした。私も商会を立ち上げたばかりで、引き受けたマリアンヌを十分に世話もせずに入院させることになって後悔することばかりです。せめてエミリアの引き取り先だけは、厳選しますので」
本当にこの方は真面目で誠実な方だ。この方が魂の底から愛する人とは誰なんだろう。
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