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ミラ編
三人での新生活
しおりを挟む行きは船酔いが酷かったけれど、帰りは問題なく港に着けた
エミール様が私に声をかけた。
「ホーク伯爵が一度邸に寄って欲しい言われていたのですが、どうされますか」
「亡くなった父に邸に寄り付くなと言われていますので、マリアンヌ達と行きます」」
エミール様は痛ましげに私を見つめられたけれどそれ以上言わなかった。
エミール様は手続きがあるので残ると言うので、迎えに来てくれた人に案内されて、馬車に乗った。エミリアは馬車からの景色に夢中だが、マリアンヌは修道院での態度はなりを潜め、おどおどとしている。
「エミール様の手配してくださった家で三人で暮らして行くの。このエミール様はエミリアの父親でもないし、マリアンヌの好きな人でもないのよ。御恩を感じて生活していきましょう」
そうマリアンヌに馬車の中で説明すると、青白い顔でうなずく。
「分かってる。なんの縁もないのにあの離島から出してもらえるのだもの。ちゃんと働くわ。働くのは嫌いじゃないの。父さんの宿屋でも修道院でも働いたもの」
「エミリアの父親だと思う人に会ったらどうするの?」
「どうもしないよ。だってもう身分が違うし、エミリアを渡すのも嫌だし」
ミラはマリアンヌが自分で思い込んでるエミリアの父親に会って騒がないか心配だった。死んだ事にはなっていてもマリアンヌは罪人だ。貴族に関わって騒がれるのはエミール様も困るだろう。
馬車が一軒のこじんまりとした家に着いた。荷物など何もないので、三人でそのまま家に入った。案内してくれた青年がついてきてくれて、内部の説明をしてくれた。下働きなど使用人は誰もおかないで三人でやって欲しいと言われた。昔の私なら不可能だがすでに修道院で十年も過ごして来た。あそこでした事に比べたら、井戸もありかまども薪もある。
****
数日経ってやっとかまどの具合や井戸の水汲みになれた頃にエミール様が訪ねて来た。
「いかがですか?何か不自由してることがあったら遠慮なく言って下さい」
なぜだろう。マリアンヌにエミール様が穏やかな微笑みかけているのを見ると胸が痛い。マリアンヌはエミール様の存在を誰かに置き換えているのでエミール様を忘れているから、全く知らない人として話している。二人の会話はよそよそしい。なのに過去に二人に合ったことを考えるとざわめくのだ。
エミリアは男の人で親切にしてくれた人は初めてなので、すっかりエミール様に懐いている。お土産に甘いお菓子をもらって飛び上がって喜んでいる。修道院で甘いものは贅沢でお菓子などほぼ口に入ることはなかったからだ。
エミリアとマリアンヌがお菓子に夢中になっている間にエミール様が話しかけて来た。
「三日後医師を連れてきます。その時一緒にあなたが会いたい人を連れて来ます」
「え 誰ですか」
「明後日のお楽しみです」
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