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ミラ編

エミールの旅立

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 アンジェと王太子殿下の結婚式が大聖堂で執り行われた。もうなにをしてもアンジェは取り戻せない。
 式が終わった後バルコニーに出て祝福に駆けつけた国民の歓声を浴びて、美しいウエディングドレス姿のアンジェを王太子殿下が愛おしそうに見つめると、アンジェは満面の笑みで微笑み返す。それを見て自分の恋はもう終わったのだなと思った。
 それでもアンジェの幸福を祈ってる。我ながら未練だと思うがアンジェ以外の人間と婚姻を結ぶ気はない。
 
 

 侯爵家存続も足掻いてみたが、立て直しは無理だった。侯爵位と領地をそのまま返上すると国に申請した。陛下から爵位と領地を国に返上する代わりに、元領地の特産物を優先的に扱うという権利とまとまった金を渡すと連絡があった。
 その金で身体の弱い母のために保養地にコテージを買い、二人が困らない程度だが父が散財できないように預託金を信頼のおける執事に託して父と移住させた。

 私は平民になって商会を立ち上げて元領地の特産物の商売をすることにした。
 父の執務を手伝っている間もやっていたが、まだまだ未熟だ。手慣れた熟練の商会に入って経験を積んで自分の商会を立ち上げようとした。幸い侯爵家で執務している時に顔見知りになった会頭が雇ってくれた。
 商会の外国の支店に赴任し、五年滞在した。その間に人脈もでき、五年ぶりに祖国に帰って自分の商会を立ち上げるために準備に入った。

 そんな時にホーク伯爵が訪ねて来て、ホーク伯爵の妹御からの手紙を渡された。

「数年前からお探ししていたのですが、爵位を返上されてから行方が分からなくて苦労しました。やっと妹からの手紙を渡せます。と言っても数年前のものなので、状況は変わっているかもしれません。」

「妹御と面識は無いのですが?」

「そうだと思います。妹は今離島の修道院にいます。」

 離島の修道院?なんのことだろうと手紙を開く。文面に目を走らせて驚愕に目をむいた。マリアンヌが私の子を産んだ?!
 マリアンヌはあの時処刑されたと聞いた。それなのに生きていたという事だろうがか。私の子と言うが、最初の一回以外男性用の避妊薬を飲んでいた。にわかには信じられないが、院長からの添状もある手紙だから無下にはできない。

「わかりました。船で離島に一度渡って妹御と話させてもらえますか?」

「そうですか。この五年この件が片付かないと本土には戻れないと言うので困惑してました。」

「それはどういうことなのでしょうか」

「妹は冤罪をかけられて婚約破棄になり、亡くなった父に離島の修道院にやられていました。ですが冤罪を掛けた相手が処刑されて、冤罪だったと公表されたのです。父が亡くなり伯爵家も代替わりしたので、戻って来るように言ってるのですが、この手紙の件が片付かないと戻れないの一点張りで。どうか解決して妹が戻ってこれるように力を貸してください。」

 
 手紙をだすより離島へ赴こう。全てはそれからだ。
 
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