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「まあ、大体言いたいことはわかる。王太子がエレオノーラ王女に会って惹かれたのは、王太子の強大な魔力が指輪の魔道具の効果を打ち消したのではないかと不安なのだろう?」


「そうだ。天才ボルフガングの作った魔道具だから精度は高いと思うが、何しろ作られてから一度もメンテナンスを受けていない。王太子の先祖返りの膨大な魔力は伊達じゃない。エレオノーラ王女が番だと魔道具から漏れ出てるなにかを察知してるのではないかとね。その上、もし、エレオノーラ王女が今までの態度を許して殿下と婚姻して下さり、将来二人の間に王女が生まれたら、番だったのか!と否応もなくわかってしまう。そうしたら、なんだ、やはり番を求める気持ちは、魔道具なんかで抑えることができないんだと貴族達に言われて、魔道具をつけようとしなくなる事が心配なんだ」

 ニックがリヒャルトをじっと見た。リヒャルトはほっとため息を付いた。

「確かにそうだな。番同士だったら女の子も生まれる。ニックの言う通り、番を必要としない国を作りたいのに、あの二人が結ばれたら元の木阿弥の可能性は高い。だからといって臣下として、今まで一切女に興味を持たなかった王太子の気持ちを無下にはできないな」

 ニックもリヒャルトも番をわからなくするために努力を重ねてきたのに、この状況ではため息しか出ない。

「魔道具の開発に成功して、これでうまくいくと思ったのに、また問題が起きたな。番とは本当に罪深い」

 リヒャルトはニックと見つめあった視線をそっと外した。男同士で見つめ合う趣味はなかったようだ。

「そう言えば、ニック、君の妹のアデーレはどうしてるんだ」

 ニックはいきなり自分の妹の話になって口籠った。

「ーーーーまあ、立ち直るにはまだ時間がかかりそうだ。我が家は私だけ魔力があって、父母も弟妹にもなかったから、番の観念は自分だけだと油断していた。まさかアデーレが魔術士のデックと結婚することになるとは予想もつかなかったよ。しかも二人が知り合ったのは、私を通じてだからな……」

「ニックのせいじゃないだろう。惹かれ合うなんて、予想できないし。二人は相思相愛だと評判だったじゃないか」

 リヒャルトは慰めるが、皮肉げに唇を歪めるニック。

「相思相愛でもデックに番が見つかったら、塵芥のように捨てられたんだ」
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