62 / 69
62
しおりを挟む「何を言っているんですか」
あ、しまった。つい口から言葉が溢れた。慌てて黙ろうとすると、テオバルトがこちらをみた。
「今は無礼講だ。この部屋にも防音の魔術が掛けてある。なんでも言ってくれ」
いつのまに掛けられていたのだろう。でも、まあ、お陰で先程から弱小国の王女と思えない言動も外に漏れてないのか。言ってしまえ。王妃の事は自分のことでもある。王妃の言っていた被害者同盟なのだ。
「では、王太子殿下の御言葉に甘えまして。陛下、それで守ってなどおりませんから」
国王が私に視線を向ける。
「夫に蔑ろにされた妻に使用人がどういう態度を取るかおわかりですか」
「使用人?マディは国から連れてきた使用人は少なかったから、我が国のものを付けたが……」
私のご先祖様のこの国の王妃から妹に宛てた手紙にも書いてあったのだ。国王に愛されいない、もしくは大事にされてないことが使用人に知れ渡り、自分の世話がおざなりになっていることがつらつらと嘆いてあった。王妃なのに自分の出す常識的な命令ですら後回しにされると。
「その使用人はどういう風にみていたでしょうね。跡取りを産んだら離宮に放置。閨に呼ばれることもなく、公務でしか国王に会わない王妃の事を。その待遇がいいと誰が確かめましたか」
国王は愕然としたようだ。気がつかなかったのか。そこに王太子が割り入った。
「私が母上に自分の意思で会いに行った時に、侍女や侍従の態度が目に付いたので、母の国から付いてきた侍女を呼んで事情を聞いた。遅くなってしまったが、使用人は私の傘下にいるものに全員入れ替えた」
おや、王太子は気がついたのか。
「私がもっと早く母上を訪ねていればご不自由をおかけする事はなかったのにと反省している」
「テオバルト、私に報告がなかったようだが」
顔色を変えた国王が立ち上がる。
「父上の態度から母上のことを言っても無駄だと判断しました。母上の事は私が護れば良いと。王妃の予算も使い込まれていましたので犯人を処断し実家に返済させました。母上に侍従を付け、満額の予算と返済させた金額をお渡ししました」
「ーーーーテオバルトには感謝しているわ。そのお金をリヒャルトやニックに魔道具の開発費として渡せたもの」
今まで青い顔で黙っていた王妃がぽつりと漏らした。
王太子はちょっと見直したかな。国王はダメだね。有罪確定!
11
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
聖女と聖主がらぶらぶなのが世界平和に繋がります(格好良すぎて聖主以外目に入りません)
ユミグ
恋愛
世界に淀みが溜まると魔物が強くなっていく中ある書物に書かれてある召喚をウォーカー国でする事に…:
召喚された?聖女と美醜逆転な世界で理不尽に生きてきた聖主とのらぶらぶなオハナシ:
極力山なし谷なしで進めたいっ…!けど、無理かもしれない………ーーツガイ表現がありますが、出てきません
分厚いメガネを外した令嬢は美人?
しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。
学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。
そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。
しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。
会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった?
この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。
一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
月読の塔の姫君
舘野寧依
恋愛
『イルーシャはわたし、わたしはイルーシャ』
今まで惰性で生きてきた少女、由希。ある日目覚めたらなぜか絶世の美女になっていた彼女は、古の王妃として第二の人生を歩むこととなって──
これは伝説の姫君と呼ばれた少女とその周囲の人々と国の変化の物語。
番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!?
貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。
愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる