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 リヒャルトの話は続く。

「番と言う本能を憎んでいても、自分も竜人。番を求める本能がある。自分に自分が憎んでいる本能がある。だったら番を消せばいいと思った様でそう言うメモが残っています」

「そんなに嫌な本能なら、ニック卿やリヒャルト卿のように本能を抑え込む魔道具を開発すればよかったのでは?比類なき天才なんでしょう?」

「まあ凡人なら王女殿下の言われるようにしますよね。でも比類なき天才は違った」

 ニックが口を挟んできた。何よ。どうせ私は凡人よ。感じ悪いわね。リヒャルトはニックの言葉に苦笑して続けた。

「どう言う思考回路かわかりませんが、番を感知する魔道具を完成させたようなんです」

 え?ようなんですって?

「つまり実物は残ってないのです」

「実物は残ってなくてよくわかりましたね」

「偏屈できちんと研究成果を文章にしておかない人だったらしく、我が先祖はね。書き散らかしたメモのようなものからの推測でしかないのですが、番を見つけ出す感知魔道具と番に付けさせる番とわからなくさせる魔道具の二つを完成させたようです」

「つまりそれって」

 私は自分の外れなくなった指輪を見つめた。

「そうです。その指輪が番とわからなくなる魔道具です。初めてお会いした時に魔道具だと私が気が付かなかったのは、まだ起動していなかったからです」

 おや、いいわけ?自分が魔道具に気が付かないわけないと言うことを言いたいわけ?

「そして私が気が付いたのは、その魔道具が起動したからですね」

 ニックがまた言葉を挟んだ。なんだか混乱するけれど大事な事は聞いておかなきゃ。

「そんなに短い間にこれが起動した訳はなんなのですか?」

 何か怖くて恐る恐る聞いてみる。

「その魔道具は竜人の番に反応して、認識させないための魔道具ですから、朝外れたのに夕方外れなくなった。そのあいだに会った竜人は我らと……」

「……王太子……」

 驚愕のあまり敬称はどこかに行った。

「そう、我らは番がわからない魔道具つけてますから、起動したのは王太子殿下に会われたからですね」

 ニックが淡々と言った。えええーーーー王女の仮面もどっかに吹っ飛んでしまった。

「あれ?でもアデリナにも会ってますよ」

「それが都合がいいとお思いでしょうが、彼女は女性なので、魔力はあっても竜人じゃないのです」

 何!そのご都合主義展開!
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