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しおりを挟む「王女殿下はなにをおっしゃりたいのですか」
なんか急に空気が冷たくなったが、気にしない!
「そのままです。王太子殿下には権力がある。強国の軍を押さえているものがこの国の一番の権力者のはず。先祖返りでなく魔力も王族平均の国王陛下に、番で無い婚約者を排除するように指示しないのは疑問だと思ってるだけです」
リヒャルトはその美しい形を保っている薄い唇の口角をきゅっと上げてほほえんだ。
「ほおお、ちゃんと調べておいでになってるのですね」
「弱小国だからこそ情報戦に負けていては、生き残れません」
「そういう国は嫌いじゃ有りません。己の立場をきちんと理解した上で振る舞う。いいことだと思いますよ」
なーんか偉そうな人。王族の公爵家だから普通の公爵家より、王家寄りのはずなのに番反対派とか言うし、いっそ聞いてやるか。
「グートハイル伯爵は王族ですよね。でしたら番がいる。その番を探すつもりはないのですか」
「ありません」
ものすごくきっぱり言われたよ。
「先ほども言いましたが、どこにいるかもわからない、どんな人かもわからないそんな番を探すのは徒労でしかない。情報を集めていらっしゃるようですので、ご存じかと思いますが、私の家は過去、番を見つけて捨てられた王弟の子供が興した家です。ですから竜人の血が混じってはいるけれど、番に対する拒否感はすごい。五歳を過ぎれば、番の弊害を教え込まれ、そういう欲求と戦い、婚姻することになった伴侶を愛するよう、大事にするよう、家族になるようにと説かれます」
「押さえられるものなのですか?」
「我が家には先祖返りは出ませんでしたから、番に対する欲求はそこまで強くないので、できたことかもしれません。それに番に狂って正妻と嫡子を捨てた王弟がどうなったか知っているからでもあります」
リヒャルトが真顔でそう言い切った。
「どうなったか聞いてもいいですか」
「いいですよ。番がすでに結婚して夫も子供がいたことは知っていますか」
「はい、我が国の農家だったので」
「そうでしたね。彼女は人間だった。だから番などわからなかったのに、いきなり現れて攫った男など愛せるわけも無い。ずっと夫の元に帰りたい、子供に会いたいと泣いていたそうです。竜人は番が他の男と作った子供など許しません。下手すると殺してしまう。なので周りは慌てて、あなたの国に頼んで隠してもらったそうです。ですから、あなたの国に記録が残っていたのでしょう」
「番とされた彼女はどうなったのですか」
「彼女は最後まで王弟を拒否しました。身体を無理矢理暴かれても、泣きわめいて抵抗して衰弱していきました。そして亡くなったのです。最後は食べるものを拒否して餓死だったそうです」
その悲惨さに言葉も無い。
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