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「王太子殿下には協力していただけませんが、王女殿下になら協力していただけると思って参りました」

 協力?私は魔術師でもないし……

「私は何をすればいいのですか?」

「人体実験に付き合って欲しいのですが」

 人体実験……怖!私をバラバラにするのか?私の顔色が変わったのを見て、リヒャルトは顔の前で手を振った。

「お身体に影響はありませんからご安心ください」

「何をさせるつもりなのですか」

「最初は王女殿下に偽番の魔道具を付けていただこうかと思ったのですが、王女殿下は番として、望まれるのはお嫌なのですよね」

「もの凄く嫌です。でも王妃陛下に伺ったのですが、偽番の魔道具は王族に効かなかったとか……」

「確かに初期のはそうでした。また新しく開発したのです」

 ふぅーん。

「それ、私でなく王妃陛下に使われたらいかがですか。王妃陛下は国王陛下を諦めきれないと言う物言いでしたが」

「お若いのに、感受性豊かですね。王妃陛下の態度で察したのですか」

 これは褒めているのか、貶しているのか。美形は判断がつかない様な笑みをこぼしている。

「そうではないかなと思ったのです」

「そうですね。初期の偽番の魔道具は王妃陛下が実験台になったのですが、効きませんでした。だからか、もう試したくない。自分はこのままでいいとおっしゃるので報告も控えていたのですが、王女殿下から見てそう思えるのなら、王妃陛下に話をしてみます」

「あのう、人体実験の件は詳細を聞かないと承諾できませんが、一度王太子殿下にお会いできませんか?大体逃げ回っているのは、私が王太子殿下に惚れ込んだりしたら厄介とか思われてるんでしょう?」

 かなり美丈夫で女性の憧れのまととか聞いているしね。でも私はこんなにひどい目に遭わしてくれた王太子に惚れたりしない。

「王太子殿下は番でないと婚姻しないと言い張っている子供なだけですよ。そこまで自惚れてないと思うのですけれど」

 リヒャルトは今度は苦笑いをこぼす。

「なんでもいいです。私は国に不利益にならない様に婚約を解消したいだけなんです。王妃になりたいわけでもないし、王太子殿下と恋愛したいわけでもないのです」

「そうですか、会ったら何をおっしゃっるつもりなんですか」

「王太子殿下にはこの国一の魔力の持ち主で軍を率いていらっしゃる。はっきり言って、国王陛下より権力があるのではないのですか」

 私がそう言うとリヒャルトはすっと目を細めた。
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