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 出迎えには国王夫妻と宰相、都合の付いたキルンベルガーの首脳陣が来ていた。
 一人一人紹介されて、なんでこんなにたくさん来ているのかと私は内心怯えた。

 ああ、もちろん王太子は居ない。王太子の側近達が呼びに行ったそうだが、誰も帰って来ないそうだ。いや、いっそ清々しいぐらいの嫌われっぷり。まず荷物を運び込むために、キルンベルガー側から付けられる侍女と護衛が紹介された。侍女長という年配の女性が私が滞在する居室まで先導してくれた。

 さすが強国。豪華な王宮だ。廊下に敷き詰められた絨毯までふかふかだ。エレナはふかふかに感動してるようで、踏みしめながら歩いているのが、目の端に映った。

「こちらでございます。奥が王女殿下の寝室でこちらが居間、隣が客間になっております。食事は晩餐は晩餐室で国王ご夫妻とご一緒にとっていただきますが、朝と昼はこちらに運ばせて頂きます。何か分からないことがありましたら……」

「連れて来た侍女達を、使用人棟に寝泊まりさせずに、近くにおいて欲しいのだけど」

「かしこまりました。廊下を挟んだ部屋を用意いたします。そちらに簡易キッチンがついておりますので、お茶などそちらでお入れくださいませ」

「護衛達もできるなら、近くがいいのだけど」

 この国で信用できるのは、付いてきてくれた者だけ。侍女はずっと私付きの侍女だし、護衛は一の兄が選りすぐってくれた騎士達だ。

「かしこまりました。この棟の入り口と王女殿下のお部屋の向かい側に侍女と護衛騎士の部屋を用意いたします」

 侍女長が独断で決められることではない。多分こう私が言うだろうと、予測して部屋は用意してあったのだろうな。

「そのようにしてくだい」

 今まで黙って聞いていた侍従が一歩前に出た。

「エレオノーラ王女殿下、旅路でお疲れでしょうが、よろしかったら王妃陛下がお茶にご招待したいと申されております」

 断ることなどできないわよね。

「旅路の埃にまみれております。お湯を使って着替えてからでよろしいでしょうか」

 侍従は恭しく頭を下げて

「そのようにお伝えします」

 と侍女長と一緒に下がって行った。

 現王妃は国を三つ挟んだ東の国の王女だった人だ。国王との仲はどうなんだろう。我が国の暗部では、本当のことは探れずに、仲睦まじいとしかわからなかった。だが、そんなことは信用できない。我が国出身の王妃ですら、対外的には仲睦まじいとされていたのだ。後継が出来れば、仲睦まじいとされてるのが、笑えるなと思った。
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