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しおりを挟む私ーエレオノーラはまだ自国にいます。早くと言われたそうだけど、いつまでにと期限切られていないし。だらだらと引き伸ばす作戦ですわ。おーほほっほほ。腹黒でしょう?どうせ王太子はめちゃくちゃ嫌がってるはず。キルンベルガーの首脳部の言いなりになって、飛んで行っても(私は魔法使えないから飛べないけど)面会拒否なんだろうしね。
「王女殿下、これはなんでしょうか」
文官たちが持ち込んだ箱を指して、侍女のエレナが尋ねた。
「それは過去、我が国からキルンベルガーに嫁いだ王妃の書簡と我が国に残された形見分けの品物よ。陛下にお願いして、もう一度きちんと目を通したいとお願いしたのよ」
「読み返してどうされるのですか?」
「何か番に関する情報がないかと思ってね。座って読むからお茶お願いね」
エレナに頼んで、ソファの前のテーブルに箱を置いて蓋を開ける。中は王妃が我が国の妹に当てた書簡がほとんどだ。当時は羊皮紙だったので、保管がしっかりしているので、インクも薄れずに読むことができる。
キルンベルガーに嫁いだ当時王太子だった。婚約時代に手紙のやりとりとか、肖像画の交換はしていたようだ。それでも婚姻のためにキルンベルガー王国に行ったときが初対面だったらしい。それで、美丈夫な夫に一目惚れしたわけだ。なんて無駄なことをしたものだとしか言えない。王太子は義務の初夜が終わったら、さっさと自室に戻って、夫婦の寝室に一人、身体を清めることも無く、放置されたと書いてある。しかし、相手が仲のいい妹とはいえこんな生々しいこと書いて大丈夫かしら。受け取った妹は赤面しそうな内容である。前戯が無いとか誰も知りたくないだろうに。あ、私には必要な情報だわ。
それにしても自分に惚れてくれた妻に対して本当にひどい扱いだこと。一生懸命に歩み寄ろうとしているのに。跡継ぎが生まれたら閨に訪れることも無くなったか。公式の場では、いかにも優しげなのに、中に入ると会話も無い。
この国王は先祖返りではなかったのに、これか。だったら先祖返りの今の王太子のあの反応は普通なのかしら。あら、最後の方の手紙に、番対策の魔道具を開発できるかもしれないとある。番対策?何をするのだろうか?詳しく書いてないわ。キルンベルガーの魔術師に依頼したものが、何十年も経って開発できたとある。自分に間に合わなくとも息子の婚約者に渡したいとも書いてある。どんなものだろう。
この後に手紙はない。これが最後の手紙らしい。
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