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「はーくっしょん!!」

「殿下、風邪ですか」

「竜人の子孫は身体も頑強だから風邪はひかん!」

 俺はテオバルト、惚けたことを言ったのは、側近の公爵子息のリヒャルトだ。
 誰かおれの噂をしているのか?まあ、どうせいい事は言われてないだろう。竜人の子孫である我ら王族は番でない人間との間に子供ができにくい。実際、現国王である父の子供は俺だけだ。また、なぜか女は生まれにくい。長いキルンベルガー王国の歴史の中で、王女が生まれたことは一例か二例かそのぐらいらしい。

 俺は先祖返りらしい。王族の中でも強大な魔力をもち、一人で大きな魔法も使える。俺ほどで無くとも、王族達はそれなりに魔力を持ち、魔法を使える。遠くても微かに王族の血をひくだけでも、戦力になる。それゆえにに、我が国の軍隊は強力である。
 ここにいるリヒャルトも、さる代の王弟が正妻との間に子供を設けたのに、番を見つけて離縁した息子の子孫だから、魔力を持ち魔法が使える。軍事的なことでも頼もしい側近だ。

 だが、リヒャルトは自分が番が見つかって、父親に追い出された息子の末のせいか、番と言う存在に辛辣だ。必要ではないとまで言い放つ。
 番を求める本能のせいで、近隣諸国に迷惑をかけていると言い張るのだ。
 番を求めて放浪などできないし、人間の血で薄まって、始祖のように異世界にいる番を感知などできない。自国で探すのがやっとの状況で、結婚しないわけにはいかないから、同盟国の王女と縁を結ぶ事が多いのだが、番を求める本能が邪魔をして、婚姻を結んだ相手と形だけの仲になりがちだ。

 それは先祖返りの俺はもっと切実なものだから、リヒャルトの言う事も理解できる。
 理性では理解できるが、本能が番を求めるのだ。そんな俺と形だけ婚約しても、幸せにはしてやれない。
 俺は先祖返りだから、婚約者と婚姻を結んだ後に、番が出てきたらリヒャルトの先祖のような事になってしまう。婚約者がいつ番が出てくるか、びくびくして不安に思うのも気の毒だ。番でないと言うだけで、何も悪いことしたわけでもないのに、怯えて暮らす事になるなんて。

 だから、わざと婚約者には冷たくして来た。その様子を見て、これは無理だと諦めてくれるのを待っていた。
 それなのに、直接会わせようと、婚約者を我が国に呼んだだと!会わないぞ!絶対に。
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