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 などと過去に思考を飛ばしていたら、父王が恐る恐る声をかけてきた。

「エレオノーラ、大丈夫か」

 ちらりと父王を見ると、心配そうに眉間に皺を寄せてこちらを見つめている。

「お父様、大丈夫です。ちょっと考え事をしていただけです」

 明らかにホッとした顔を見せた父王に重ねて言った。

「気を失って、婚約が無くなっていれば、こんなに嬉しいことはないのですけれどね」

 それを聞いてまた眉間に皺が寄った父王は

「すまない」

 とぽつりと漏らし、父王の隣に立っているのに、いままで存在が無かった母、王妃が涙で瞳に膜を作っている。
 その隣の兄達三人もいるだけだ。少しは何か言えと思うのだけどね。

「陛下、エレオノーラをどうしてもキルンベルガーに行かせないといけないのですか」

「王妃、断ることができればどんなにいいか。だが、我が国はキルンベルガーの申し出を断ることはできないのだ」

 国王夫妻の後ろに控えている宰相も申し訳なさげにうつむいている。弱小国ってつらい!とでも思っているのかも。これだけ我がレーゼル王国の重要人物達が雁首揃えても、いい案もでないし、キルンベルガーの申し出通りに、私は彼の国に行くしかないみたいです。

「……それで、お父様、キルンベルガーに赴いて、いったい何をすればいいのですか」

「そうですとも、父上、エレオノーラは王太子に嫌われているのに。行ってどうするというのですか」

 うるさいな。一の兄よ。いくら嫌いな相手でも、あっちにも嫌われているという事実は、乙女の心に突き刺さるのよ!会ったことも無いのに、番じゃないからって、嫌うって理不尽だと思いません?王太子なんか番探して異世界行ってしまえと常々思っておりますわ。

「それがだな。キルンベルガーの王族は成人になる十八歳で婚姻を結ぶと決められている」

「知ってます。子供ができにくいからだそうですね」

 一の兄がふむふむと頷く。あなたも、もう二十歳過ぎているのだから、さっさと結婚しなさいよと私は内心毒突くのである。我が国の三兄弟も未だに誰も婚約者がいないのだ。見かけは悪くはないとおもうし、なにしろ王子様である。三兄弟とも我が国の貴族令嬢のあこがれだと、幼なじみの公爵令嬢レティシアに聞いている。が、選り好みなのか婚約者すらいない。
 まあ、本当は生け贄になっている私に忖度しているせいだとは気がついている。そんなことに関係なく兄達にはさっさと性格のいい令嬢と結ばれてほしいものだ。私のお一人様計画のためにも!
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