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 そして冒頭に戻る。
 テオバルトはまだおのれの番と、巡り会うことを諦めていない。隣国の王女など婚約者として認めていないのだ。

 王族は成人(十八歳)を迎えると共に婚姻をする。竜人の血は人間の血で薄めて、人間により近くなっても、人間と子供ができにくく、女が生まれることはまれだ。そのために早婚と決められている。

 テオバルトはすでに成人して二年過ぎたが、番を見つけることを諦めてないので、婚約者として認めていない王女との婚姻は拒んでいる。拒んでいるが、テオバルトは王太子だ。子供を得ないではおけないので、周りはなんとか王太子を説得しようとして、王女との婚約はそのままにしている。

 このように先祖返りの王族は番への執着が強いのに、番が見つからない可能性が大きい。そのため周りの思惑で婚約者が決められる。先祖返りの王族には迷惑かも知れないが、婚約者に据えられる女性にはもっと大迷惑である。

 過去に先祖返りの王がいた。強い魔力に強い魔法で近隣諸国を従えたが、この国王にも番がみつからずに、近隣諸国の王女を娶った。娶ったが番でないと不満であった。そのために一夫一妻制の国であるにもかかわらず、彼は沢山の愛妾をもち、王妃は放置した。
 さらにまた過去に先祖返りの王弟がいた。強い魔力と強い魔法で、兄の国王を軍事の面でよく支えたが、番はみつからず、婚約者と婚姻した。仲は良くも悪くも無く、子供も生まれたが、隣国に軍を率いて遠征してそのときに番を見つけた。
 喜び勇んだ王弟は正妻と正妻が生んだ子供達を放逐した。慌てて間に入った兄の国王によって、その子供に爵位を与えて、正妻に慰謝料として領地を与えた。王弟はすでに過去の妻や子供は目に入らず、隣国から連れてきた番に夢中になった。

 このように先祖返りの王族には、この手の逸話は枚挙にいとまがない。

 そのために先祖返りと判明すると、王家は他国に伝わらない内に黙って婚約を結んでしまう。
 幸い?なことこに近隣諸国にこの国に求められて断れるような国はない。

 黙って婚約させられて、後日、先祖返りとわかっても、女性の方からは婚約を解消できない。
 過去に死んだことにして、逃げた他国の王女もいたらしいが、その国への軍事面での援助が無くなって、たいそう困ったことになったそうだ。

 本当に番というものは恐ろしいものだというのが近隣諸国の王家の感想である。

 そして今回の犠牲者はレーゼル王国の王女エレオノーラである。

 
 
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