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3-8 襲撃
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「もーすこしゆっくりいこーよー……、……ねぇーったらぁー……」
「日が暮れる」
「はぁ……」
山を……登っていた。
山というか、殆どがけじゃないかってぐらい険しい岩肌を結梨戦闘にエミリア、クー様、僕の順番でよっこらせどっこらせと登っていた。
「大丈夫ですか……アカリ様……? やはり荷物は私が……」
「いやいや、ボディーガードなんだからこれぐらい僕が持つよ……」
エミリアは儀式の為の正装だそうで白の、まるでシスターみたいな服にマントを巻いている。
両脇にスリットが入っていて歩く分は問題なさそうだけど、「神聖な儀式」なのに鍋やら食糧やらを詰め込んだリュック(と呼ぶにはふくれあがっている)を背負わせるのはプライドが許さなかった。無論、ファンタジー世界に対する憧れからくるプライドだ。
「できる限りのことはさせてもらう……」
というか正直楽勝だと思ってた。運動神経は向こうの世界にいた頃の比じゃないし、体力も無尽蔵に湧き上がってくるもんだと。
しかし、どれだけ強い体でも限界はあるらしい。
自分の体積の何倍もある荷物を背負っての登山は確実に僕の体力を奪いーー、
「あ~っ!! もうダメだ……!! 少し休もう……」
膝を折った。
手頃な岩に座り込み首(こうべ)を垂れるとバカみたいに広がった青空が視界いっぱいに広がっていた。
「……異世界だなぁ……」
なんて言ってみたけど、多分どこの世界も山に登れば同じ景色なんだろう。
なんとなく向こうの世界が恋しくなった。特に思い残すこともない気がするけど。
「なにしてんのよ」
猫の運動神経を駆使すれば山登りなんて楽勝らしく、ひょいひょいと降りてきた結梨が向かい側の岩に飛び乗って不機嫌を露わにする。
「休憩」
「まだ先は長いわよ」
「急いだところで仕方ないじゃん」
「休んだところで先には進めないわよ」
「あー……空がキレーだなぁー……」
前に進まなきゃいけないことはわかってる。けど流石に疲れた。
なによりも「いつ襲われるかわからない」という緊張感が無駄に精神を削り取っていた。
「ハァ……」
心配そうにこちらを眺めているエミリアのそばには小さな青色の球体が浮いている。
人魂のように見えるそれは風に吹かれて右に左に揺らぎつつも彼女の元を離れない。
ーー大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)。
自動迎撃型の防御魔法で発動している限りは一定の範囲に飛び込んできた「物質」を防いでくれる。
不測の事態に備えて起動しておいたけどそれでも気は休まらなかった。
「思ったより疲れるなぁ……」
「山登りが?」
「違うよ……」
どうしてユーリは結梨でこんなに気楽なんだろうと不思議に思う。
人の命が掛かってんのになんでいつも通りにできるかなぁ……?
大胆不敵というか、怖いもの知らずなのは昔からだけどそういう性格を羨ましくも恨めしい。
少しぐらいそういう所を分けて欲しいもんだ。
「見習いたいとは思えないけど……」
「独り言多いね」
うっせーよ。
ささくれだった気持ちはエミリアにも伝わっているらしく、落ち着きを無くさせてることに申し訳なくは感じる。
でも心とは裏腹に気持ちは棘が刺さる一方だ。
「お茶でも淹れましょうか……?」
「いーや、気にしなくていい。平気だから」
「でも……」
クー様も気遣ってか僕の側に降り立っては顔色を伺ってくる。
そんな姿は可愛らしくもあり、……どうしてもエシリヤさんに言われたことを思い出させる。
「ドラゴンたちは妹を亡きものにしようとしています」
心通わせる者ーー、……この竜の国と呼ばれるクリューデルには昔から「ドラゴンを従える巫女」が継承されていた。
それは先代の祖母の死を境に途絶えてしまっていたのだが、エミリアがクー様ことホワードと心を通わせるようになってから「竜宮の巫女候補者」になったのだという。
国内に確認されている「人と暮らすドラゴン」は数体。
しかし、絶滅を危惧されているだけであってその個体数は少なくはないのだという。
「ドラゴンはすべての生物の上位的存在。神の遣いとも信仰される種族です。知性も高く、誇り高い……。そんな彼らだからこそ、『竜宮の巫女』の存在は耐え難いものなのでしょう」
そう語るエシリヤさんの表情は硬かった。
そこまでして、……妹の命をかけてまで継承しなければいけないものかと思ったけどそれはどうやら国の事情が絡んでいるらしく「巫女の存在はこの国の存在理由でもあるのです」だそうだ。
その辺の事情は詳しく教えてもらえなかった。
帰ってから追々、落ち着いて説明するとは言われたけど自国の脆い部分を部外者に話すのは気がひけるんだろう。
お姫様となれば国は我が家も当然だから。
……と街中での人々に愛されていた姿が浮かんだ。
きっと彼女は彼女で妹と国民、どちらも守りたいのだろう。
なら尚更、力になれるのならなりたいとは思う。……極力、面倒ごとにはなって欲しくはないけど……。平和主義者だから、一応……。
「どう? 少しは落ち着いた?」
「まーね……」
頭の中を整理すればなんてことない、困っている人がいるから力を貸す。単純な話だ。
そこに命が関わってくるかどうかだけーー、……そこが重いんだけどなぁ……。
「……ねぇ、ユーリ。僕が余計なお節介したこと根に持ってない?」
「ゆ・う・り。……なによいきなり」
「このまま部外者の僕がでしゃばっていいのかなーって……」
結梨の時も完全にそうだった。
あのときの僕は自分の弁えも考えず、踏み込み、そして力任せに解決した。
そしてそれは遺恨を残すことになった。
「……この国ことはこの国の人に任せた方がいいんじゃないかって思って」
「そ、「そんなことありません!!」……?」
結梨が何かいいかけたのをエミリアが遮った。
頬を赤くし、肩を引き上げてエミリアは憤る。
「アカリ様は部外者などではありません!! この国に伝わる伝承の黒の魔導士様に他ならないのですから!」
「え、ええっと……?」
確かに「この体は」その伝承の黒の魔導士なのかもしれないけど、中身は魔導士でなければ女でもない。ただの男子高校生だ。
「私はっ……アカリ様に巡り会えたこと……!! こうして、共に儀式に向かうことができることをっ……運命だと思っております!」
「…………」
エミリアにとって「黒の魔導士」とは一体なんなんだろう。
いや、エシリヤさんの反応も同じだった。
僕が結梨ーー、……黒猫を連れていることに驚き、そして「黒の魔導士」だと祭り立てた。
国の成り立ちに関わっているのは「竜宮の巫女」と「黒の魔導士」……だったっけ……。
そんなに大きな存在なのか……?
「……出来る限りの事はする……でも僕には記憶がなくてーー、」
「関係ありません!」
「っ……?」
普段の、とは言ってもここ数日で知り合ったばかりだけど。それでも僕の中にある印象とは随分違った様子で噛み付いてくるエミリアに若干押される。
大きな瞳が僕を捉えて逃(のが)さなかった。
「アカリ様は……記憶がなくとも……私の黒の魔導士様です……。……それは変わりません……」
顔に影が差した。
そして今になって気付かされる。
エミリアもきっと不安だったんだ。自分の置かれている状況に。
エシリヤさんが国のことを思うように、エミリアもこの国のことを大切に思っている。
だから彼女自身「竜宮の巫女」になることを拒みはしないし、逃げもしない。
でも……いくら異世界の、王国の姫さまであっても年は僕と変わらない。もしかするともっと幼いかもしれない。
そんな子供が命を狙われ続ける生活に不安を覚えないわけがないんだーー。
「……お互い様か……」
どうあったって人は自分以上の存在にはなれない。
無理したって自分は自分だ、背伸びしようがそう背丈は変わらない。できることは変わらない。
……なら、できることを増やすしかない。成長するか、誰かの手を借りるかーー。
「わかったよ。肝が座った。ーー僕は君の魔導士サマだ」
「……!!! はいっ!」
隣でクー様が嬉しそうに鳴いた。
結梨はなんだか不服そうに口を尖らせつつも蹴飛ばしてはこなかった。
たぶんこれでいい、これでーー、
「 ……!? 」
と青空を仰いだ瞬間、空中で何かが弾かれ、小さく「バチンッ」と音を立てて四散した。
「クーちゃん!!」
エミリアがクー様を肩に呼び戻し、結梨が「その何かが飛んできた方角」に体を跳ねさせる。
ビリビリと全身の神経が逆立つのを感じた。
第六感って奴の存在をありありと感じる。
「……結界の中は安全じゃなかったのかよ……」
いつのまにか周囲には幾多の影が蠢いている。
それらは岩肌に隠れ、じりじりと距離を測っているらしい。
「これか……エシリヤさんの言ってたのは……」
異様になのはその影に纏わりついている「ひとまわり大きな何か」だ。
どうやら普通の動物たちのようにも見えるがその体に何か「得体の知れないもの」が取り憑いている。
それを「おばけ」とか「オーラ」とか言えばいいのか分からないけど、ゆらゆらと、蜃気楼か霧のように周囲を漂い全身を覆っているように見える。
「おかげで何処に居るかは分かりやすいけど……こえぇぇ……」
ジリジリと距離を詰めてくるそれらに自然と足が後ろに下がった。
恐らくは動物的な本能だろう。全身が緊張し、感覚が尖る。
アルベルトさんと対峙した時とはまた違った「自然界に人が生きていた原始の記憶」とでもいうべきか。
周囲を囲まれ、完全に「獲物」として捉えられている状況に鼓動は早くなった。
「……アカリ様、ユーリ様。いざとなったら私とクーちゃんは置いてお逃げください」
儀式用の礼装とはいえ護身用に身につけていたナイフを抜きながらエミリアが言う。
「私たちは大丈夫ですから」
「……バカ言うなよ」
確かに怖い、その好意に甘えるなら今すぐ逃げ出してしまいたい。
……でも、そんなことはできない。だって、そのエミリアも声も震えていたから。強がっていたから。ーーだから、
「君は僕が守るって言っただろ」
ーー精一杯、僕も強がる。
声が若干震えてたかもしれないけど、それでもグッと足を踏み立たせてそれ以上、後退(さがらない)ように睨みつけた。
大丈夫、どうにかできるーー。
そう思えるのはアルベルトさんとの一戦があったからだ。元王国騎士団長とだってこの体でなら張りあえる……。なら、野獣ぐらいなんてことーー、
「燈(あかり)!」
「っ!!」
意識の外側から牙が飛び込んできた。
有利の叫び声で屈んだ所でマントがひっかかり、ボタンが弾けてそのまま持って行かれてしまう。下手したらそのままひきづられてたわけで、嫌な汗が額を伝った。
「んだよ……全然つえーじゃん……」
狼みたいなそいつは戦利品(僕のマント)を放り捨てると牙をむき出しに唸る。
野生の生き物特有の隙のなさに僕も唸る。
今ならわかるーー、アルベルトさん、全然殺す気は無かったんだ。
いま、ハッキリと向けられて全身で感じる。こんなの、向こうの世界(現実世界)では味わったことない――。
これが……“殺気”か……。
必要以上に手に力が入る、どちらか先に動いた方が殺(や)られるーー。そんな妄想さえ浮かんで、「クーちゃん!!」「クゥツ」「……!?」周りへの意識が薄まっていた。
振り返れば物陰に隠れて距離を詰めてきていた奴らが一斉に飛びかかってきていて、エミリアとクー様が応戦しようとしている。
とはいえ、ハナから狙いがエミリアだったのは明白で周囲360度、あちこちから飛びかかってくるそいつらをドラゴン一匹が守りきれるとも思えない。
大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)は既に消失してしまっているしーー、「くっそ……」間に合うかどうかはわからなかった。けれど、やるしかなかった。
頭の中で描かれる一つの魔法陣、鮮明に且つ確実に、図形を、文字を、正確にハッキリと想い、描きッ……、
「乱舞する竜の牙(ダンシング・スネークバイト)!!!」
腕を払った。
そして頭の中のイメージがそのまま反映され、魔法陣が空中に出現する。
貫くは雷竜の牙、雷鳴と共に打ち出されたそれらは空中で獣たちを補足し「嚙み砕く」。
一度実際に打っていたからこそイメージするのは簡単だった。頭の中の魔道書を捲ることなく、そのまま魔法陣を思い描けたーー、……イケる。なんとかなるーー。そう確信した時、魔法陣を打ち出すために払った腕を重い衝撃が襲い、
「ッぁ……?!」
走るような痛みが右手首から肩にかけて走り抜けた。
思わず奥歯を噛み締め、「そいつ」を睨みしめた。
当然だ、隙を見せれば襲われるーー。首筋に噛みつかれなかっただけ運が良かったと思うしかないっ……、
「んにゃろッ……!!」
噛み付いて離れない狼をそのままに地面に振り下ろし、骨まで牙が届いていたのか衝撃が改めて頭の芯にまで響く。
悲鳴をあげそうにもなるがそのまま左手を突き出し、
「雷竜(スネーク)の爪(クロウ)!!」
雷槍(らいそう)でもって焼き飛ばした。
目の前で弾ける電流に頭がクラつくがそれ以上に「また感電した」。
「ーーぁッ、だッ……?」
二日続けての感電。人生において雷に打たれる人がどれだけいるだろう。
極めて稀な体験をしているとは思うけど嬉しくもなんともない。
雷槍(らいそう)の反動で後ろに倒れそうになり、足を下げて踏ん張ろうとしたけど無駄だった。
そのまま地面に引っ張られるようにして倒れーー、傾いていく景色の中、エミリアと目が合った。
「っ……大天使(エンジェリング)の結界領域(バリアフィールド)」
まだ言うことを聞かない右手の代わりに左での指先を向け、発動させる。
エミリアの足元で大きく展開した魔法陣は一度収縮し、彼女の周りを囲うように大きな「光の輪」を生み出す。
それは大天使の加護とも言える絶対不可侵の領域ーー。
大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)とは違い、反撃こそできないが守りに徹するならこっちのほうがいい。
「アカリ様!」
「ぐへぁっ」
欠点として、味方だろうがなんだろうが、その範囲に近づいたものを「弾き飛ばす」のだけど。
「う……あ……」
「…………」
こてん、と地面に転がり背中で結梨の冷たい視線を感じた。
「……起こして……」
「……どうやってよ……」
幸いにも雷竜の乱舞(スネーク・バイト)の補足範囲に潜んでいたもので全てだったらしく、追撃はない。
周囲から立ち込める匂いは感電死した動物たちのものだろう。
今になって可哀想だなんて気持ちもこみ上げてくるけど仕方ない……やらなきゃやられてた。
ドクドクと血が流れ出る右腕はジクジク痛んだ。
本来なら絶叫ものだけどなんとか我慢できる痛みだ。女の子を傷物にしてしまっているのは……もう開き直って許してほしい。元の体の持ち主がいたとしても僕に入れ替わった時点でこうなることは仕方ないだろ……! ていうか入れ替わるなよ!! 黒の魔導士なんだろ!? なに他人の呪文の影響受けてんだ!!
「なに考えてるの?」
「……現実逃避……」
ビリビリと体が痙攣して動けない。
余計なことを考えるのは脳神経を若干やられてるのかもしれない。こまった。借り物なのに(2度目。
「あの……アカリ様……? ごめんなさい……」
「いや……いいよ……」
顔を見るのも恥ずかしいので伏せたままだ。
まさか自分で発動させた結界に弾き飛ばされるとは思ってもみなかった。
いや、なんとなく嫌な予感はしたけど……でもほら……安全第一って言うか……エミリアが大事っていうか……。
「とにかく……君が無事でよかったよ……」
「……!」
ずりずりと頬っぺたを地面に擦り付けながら見上げたら結梨の顔があった。
正しくは有利の顎があった。
超ど迫力、地面に転がって黒猫を見上げるとさながら怪獣の様だ。
「えっと……?」
ヒゲがピクピク動いて見下ろす瞳はなんだか冷たい。
ーー……もしかして怒っていらっしゃる……?
え……、なにに……? 腕に噛みつかれたこと……?! だったら狼もどきに言えよ!!
「あだッ……、……あだ……?」
ぺちん、とおでこを肉球で叩かれた。っていうか今のは叩かれたっていうか抑えられたっていうか……?
「……ユーリ……?」
ぷいっとそっぽを向いてしまい、視界から消えたかと思えば右腕の傷をざらざらとした感触が撫でた。
驚いて振り向くと(頬っぺたじょりじょり)結梨が猫の舌で舐めていた。
さながら、怪我をした主人を心配する飼い猫の様に。
「……」
回復魔法を打とうとしてくれていたエミリアを左手でせいしてとりあえず感謝を告げる。
ありがとう、と。結梨も結梨なりに心配してくれてたんだろう。その気持ちは凄く嬉しい。
背中を押された身としてはちょっと複雑な気もするけど、背中を押した側も心配ぐらいはしていたんだろう。
だから、ありがとう。ぺろぺろと、傷口を舐めてくれてありがとう。……なんだか生身の(っていうと変だけど)結梨に舐められてるのだと思うと変な気持ちも湧いてくるけど、とにかく今は、
「ごめん……猫の舌って痛いからやめてくんない……?」
ベシッと尻尾が両目を打った。
体のしびれが取れていることに気付いたのは、その痛みでひとしきりのたうち回ってからだった。
「日が暮れる」
「はぁ……」
山を……登っていた。
山というか、殆どがけじゃないかってぐらい険しい岩肌を結梨戦闘にエミリア、クー様、僕の順番でよっこらせどっこらせと登っていた。
「大丈夫ですか……アカリ様……? やはり荷物は私が……」
「いやいや、ボディーガードなんだからこれぐらい僕が持つよ……」
エミリアは儀式の為の正装だそうで白の、まるでシスターみたいな服にマントを巻いている。
両脇にスリットが入っていて歩く分は問題なさそうだけど、「神聖な儀式」なのに鍋やら食糧やらを詰め込んだリュック(と呼ぶにはふくれあがっている)を背負わせるのはプライドが許さなかった。無論、ファンタジー世界に対する憧れからくるプライドだ。
「できる限りのことはさせてもらう……」
というか正直楽勝だと思ってた。運動神経は向こうの世界にいた頃の比じゃないし、体力も無尽蔵に湧き上がってくるもんだと。
しかし、どれだけ強い体でも限界はあるらしい。
自分の体積の何倍もある荷物を背負っての登山は確実に僕の体力を奪いーー、
「あ~っ!! もうダメだ……!! 少し休もう……」
膝を折った。
手頃な岩に座り込み首(こうべ)を垂れるとバカみたいに広がった青空が視界いっぱいに広がっていた。
「……異世界だなぁ……」
なんて言ってみたけど、多分どこの世界も山に登れば同じ景色なんだろう。
なんとなく向こうの世界が恋しくなった。特に思い残すこともない気がするけど。
「なにしてんのよ」
猫の運動神経を駆使すれば山登りなんて楽勝らしく、ひょいひょいと降りてきた結梨が向かい側の岩に飛び乗って不機嫌を露わにする。
「休憩」
「まだ先は長いわよ」
「急いだところで仕方ないじゃん」
「休んだところで先には進めないわよ」
「あー……空がキレーだなぁー……」
前に進まなきゃいけないことはわかってる。けど流石に疲れた。
なによりも「いつ襲われるかわからない」という緊張感が無駄に精神を削り取っていた。
「ハァ……」
心配そうにこちらを眺めているエミリアのそばには小さな青色の球体が浮いている。
人魂のように見えるそれは風に吹かれて右に左に揺らぎつつも彼女の元を離れない。
ーー大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)。
自動迎撃型の防御魔法で発動している限りは一定の範囲に飛び込んできた「物質」を防いでくれる。
不測の事態に備えて起動しておいたけどそれでも気は休まらなかった。
「思ったより疲れるなぁ……」
「山登りが?」
「違うよ……」
どうしてユーリは結梨でこんなに気楽なんだろうと不思議に思う。
人の命が掛かってんのになんでいつも通りにできるかなぁ……?
大胆不敵というか、怖いもの知らずなのは昔からだけどそういう性格を羨ましくも恨めしい。
少しぐらいそういう所を分けて欲しいもんだ。
「見習いたいとは思えないけど……」
「独り言多いね」
うっせーよ。
ささくれだった気持ちはエミリアにも伝わっているらしく、落ち着きを無くさせてることに申し訳なくは感じる。
でも心とは裏腹に気持ちは棘が刺さる一方だ。
「お茶でも淹れましょうか……?」
「いーや、気にしなくていい。平気だから」
「でも……」
クー様も気遣ってか僕の側に降り立っては顔色を伺ってくる。
そんな姿は可愛らしくもあり、……どうしてもエシリヤさんに言われたことを思い出させる。
「ドラゴンたちは妹を亡きものにしようとしています」
心通わせる者ーー、……この竜の国と呼ばれるクリューデルには昔から「ドラゴンを従える巫女」が継承されていた。
それは先代の祖母の死を境に途絶えてしまっていたのだが、エミリアがクー様ことホワードと心を通わせるようになってから「竜宮の巫女候補者」になったのだという。
国内に確認されている「人と暮らすドラゴン」は数体。
しかし、絶滅を危惧されているだけであってその個体数は少なくはないのだという。
「ドラゴンはすべての生物の上位的存在。神の遣いとも信仰される種族です。知性も高く、誇り高い……。そんな彼らだからこそ、『竜宮の巫女』の存在は耐え難いものなのでしょう」
そう語るエシリヤさんの表情は硬かった。
そこまでして、……妹の命をかけてまで継承しなければいけないものかと思ったけどそれはどうやら国の事情が絡んでいるらしく「巫女の存在はこの国の存在理由でもあるのです」だそうだ。
その辺の事情は詳しく教えてもらえなかった。
帰ってから追々、落ち着いて説明するとは言われたけど自国の脆い部分を部外者に話すのは気がひけるんだろう。
お姫様となれば国は我が家も当然だから。
……と街中での人々に愛されていた姿が浮かんだ。
きっと彼女は彼女で妹と国民、どちらも守りたいのだろう。
なら尚更、力になれるのならなりたいとは思う。……極力、面倒ごとにはなって欲しくはないけど……。平和主義者だから、一応……。
「どう? 少しは落ち着いた?」
「まーね……」
頭の中を整理すればなんてことない、困っている人がいるから力を貸す。単純な話だ。
そこに命が関わってくるかどうかだけーー、……そこが重いんだけどなぁ……。
「……ねぇ、ユーリ。僕が余計なお節介したこと根に持ってない?」
「ゆ・う・り。……なによいきなり」
「このまま部外者の僕がでしゃばっていいのかなーって……」
結梨の時も完全にそうだった。
あのときの僕は自分の弁えも考えず、踏み込み、そして力任せに解決した。
そしてそれは遺恨を残すことになった。
「……この国ことはこの国の人に任せた方がいいんじゃないかって思って」
「そ、「そんなことありません!!」……?」
結梨が何かいいかけたのをエミリアが遮った。
頬を赤くし、肩を引き上げてエミリアは憤る。
「アカリ様は部外者などではありません!! この国に伝わる伝承の黒の魔導士様に他ならないのですから!」
「え、ええっと……?」
確かに「この体は」その伝承の黒の魔導士なのかもしれないけど、中身は魔導士でなければ女でもない。ただの男子高校生だ。
「私はっ……アカリ様に巡り会えたこと……!! こうして、共に儀式に向かうことができることをっ……運命だと思っております!」
「…………」
エミリアにとって「黒の魔導士」とは一体なんなんだろう。
いや、エシリヤさんの反応も同じだった。
僕が結梨ーー、……黒猫を連れていることに驚き、そして「黒の魔導士」だと祭り立てた。
国の成り立ちに関わっているのは「竜宮の巫女」と「黒の魔導士」……だったっけ……。
そんなに大きな存在なのか……?
「……出来る限りの事はする……でも僕には記憶がなくてーー、」
「関係ありません!」
「っ……?」
普段の、とは言ってもここ数日で知り合ったばかりだけど。それでも僕の中にある印象とは随分違った様子で噛み付いてくるエミリアに若干押される。
大きな瞳が僕を捉えて逃(のが)さなかった。
「アカリ様は……記憶がなくとも……私の黒の魔導士様です……。……それは変わりません……」
顔に影が差した。
そして今になって気付かされる。
エミリアもきっと不安だったんだ。自分の置かれている状況に。
エシリヤさんが国のことを思うように、エミリアもこの国のことを大切に思っている。
だから彼女自身「竜宮の巫女」になることを拒みはしないし、逃げもしない。
でも……いくら異世界の、王国の姫さまであっても年は僕と変わらない。もしかするともっと幼いかもしれない。
そんな子供が命を狙われ続ける生活に不安を覚えないわけがないんだーー。
「……お互い様か……」
どうあったって人は自分以上の存在にはなれない。
無理したって自分は自分だ、背伸びしようがそう背丈は変わらない。できることは変わらない。
……なら、できることを増やすしかない。成長するか、誰かの手を借りるかーー。
「わかったよ。肝が座った。ーー僕は君の魔導士サマだ」
「……!!! はいっ!」
隣でクー様が嬉しそうに鳴いた。
結梨はなんだか不服そうに口を尖らせつつも蹴飛ばしてはこなかった。
たぶんこれでいい、これでーー、
「 ……!? 」
と青空を仰いだ瞬間、空中で何かが弾かれ、小さく「バチンッ」と音を立てて四散した。
「クーちゃん!!」
エミリアがクー様を肩に呼び戻し、結梨が「その何かが飛んできた方角」に体を跳ねさせる。
ビリビリと全身の神経が逆立つのを感じた。
第六感って奴の存在をありありと感じる。
「……結界の中は安全じゃなかったのかよ……」
いつのまにか周囲には幾多の影が蠢いている。
それらは岩肌に隠れ、じりじりと距離を測っているらしい。
「これか……エシリヤさんの言ってたのは……」
異様になのはその影に纏わりついている「ひとまわり大きな何か」だ。
どうやら普通の動物たちのようにも見えるがその体に何か「得体の知れないもの」が取り憑いている。
それを「おばけ」とか「オーラ」とか言えばいいのか分からないけど、ゆらゆらと、蜃気楼か霧のように周囲を漂い全身を覆っているように見える。
「おかげで何処に居るかは分かりやすいけど……こえぇぇ……」
ジリジリと距離を詰めてくるそれらに自然と足が後ろに下がった。
恐らくは動物的な本能だろう。全身が緊張し、感覚が尖る。
アルベルトさんと対峙した時とはまた違った「自然界に人が生きていた原始の記憶」とでもいうべきか。
周囲を囲まれ、完全に「獲物」として捉えられている状況に鼓動は早くなった。
「……アカリ様、ユーリ様。いざとなったら私とクーちゃんは置いてお逃げください」
儀式用の礼装とはいえ護身用に身につけていたナイフを抜きながらエミリアが言う。
「私たちは大丈夫ですから」
「……バカ言うなよ」
確かに怖い、その好意に甘えるなら今すぐ逃げ出してしまいたい。
……でも、そんなことはできない。だって、そのエミリアも声も震えていたから。強がっていたから。ーーだから、
「君は僕が守るって言っただろ」
ーー精一杯、僕も強がる。
声が若干震えてたかもしれないけど、それでもグッと足を踏み立たせてそれ以上、後退(さがらない)ように睨みつけた。
大丈夫、どうにかできるーー。
そう思えるのはアルベルトさんとの一戦があったからだ。元王国騎士団長とだってこの体でなら張りあえる……。なら、野獣ぐらいなんてことーー、
「燈(あかり)!」
「っ!!」
意識の外側から牙が飛び込んできた。
有利の叫び声で屈んだ所でマントがひっかかり、ボタンが弾けてそのまま持って行かれてしまう。下手したらそのままひきづられてたわけで、嫌な汗が額を伝った。
「んだよ……全然つえーじゃん……」
狼みたいなそいつは戦利品(僕のマント)を放り捨てると牙をむき出しに唸る。
野生の生き物特有の隙のなさに僕も唸る。
今ならわかるーー、アルベルトさん、全然殺す気は無かったんだ。
いま、ハッキリと向けられて全身で感じる。こんなの、向こうの世界(現実世界)では味わったことない――。
これが……“殺気”か……。
必要以上に手に力が入る、どちらか先に動いた方が殺(や)られるーー。そんな妄想さえ浮かんで、「クーちゃん!!」「クゥツ」「……!?」周りへの意識が薄まっていた。
振り返れば物陰に隠れて距離を詰めてきていた奴らが一斉に飛びかかってきていて、エミリアとクー様が応戦しようとしている。
とはいえ、ハナから狙いがエミリアだったのは明白で周囲360度、あちこちから飛びかかってくるそいつらをドラゴン一匹が守りきれるとも思えない。
大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)は既に消失してしまっているしーー、「くっそ……」間に合うかどうかはわからなかった。けれど、やるしかなかった。
頭の中で描かれる一つの魔法陣、鮮明に且つ確実に、図形を、文字を、正確にハッキリと想い、描きッ……、
「乱舞する竜の牙(ダンシング・スネークバイト)!!!」
腕を払った。
そして頭の中のイメージがそのまま反映され、魔法陣が空中に出現する。
貫くは雷竜の牙、雷鳴と共に打ち出されたそれらは空中で獣たちを補足し「嚙み砕く」。
一度実際に打っていたからこそイメージするのは簡単だった。頭の中の魔道書を捲ることなく、そのまま魔法陣を思い描けたーー、……イケる。なんとかなるーー。そう確信した時、魔法陣を打ち出すために払った腕を重い衝撃が襲い、
「ッぁ……?!」
走るような痛みが右手首から肩にかけて走り抜けた。
思わず奥歯を噛み締め、「そいつ」を睨みしめた。
当然だ、隙を見せれば襲われるーー。首筋に噛みつかれなかっただけ運が良かったと思うしかないっ……、
「んにゃろッ……!!」
噛み付いて離れない狼をそのままに地面に振り下ろし、骨まで牙が届いていたのか衝撃が改めて頭の芯にまで響く。
悲鳴をあげそうにもなるがそのまま左手を突き出し、
「雷竜(スネーク)の爪(クロウ)!!」
雷槍(らいそう)でもって焼き飛ばした。
目の前で弾ける電流に頭がクラつくがそれ以上に「また感電した」。
「ーーぁッ、だッ……?」
二日続けての感電。人生において雷に打たれる人がどれだけいるだろう。
極めて稀な体験をしているとは思うけど嬉しくもなんともない。
雷槍(らいそう)の反動で後ろに倒れそうになり、足を下げて踏ん張ろうとしたけど無駄だった。
そのまま地面に引っ張られるようにして倒れーー、傾いていく景色の中、エミリアと目が合った。
「っ……大天使(エンジェリング)の結界領域(バリアフィールド)」
まだ言うことを聞かない右手の代わりに左での指先を向け、発動させる。
エミリアの足元で大きく展開した魔法陣は一度収縮し、彼女の周りを囲うように大きな「光の輪」を生み出す。
それは大天使の加護とも言える絶対不可侵の領域ーー。
大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)とは違い、反撃こそできないが守りに徹するならこっちのほうがいい。
「アカリ様!」
「ぐへぁっ」
欠点として、味方だろうがなんだろうが、その範囲に近づいたものを「弾き飛ばす」のだけど。
「う……あ……」
「…………」
こてん、と地面に転がり背中で結梨の冷たい視線を感じた。
「……起こして……」
「……どうやってよ……」
幸いにも雷竜の乱舞(スネーク・バイト)の補足範囲に潜んでいたもので全てだったらしく、追撃はない。
周囲から立ち込める匂いは感電死した動物たちのものだろう。
今になって可哀想だなんて気持ちもこみ上げてくるけど仕方ない……やらなきゃやられてた。
ドクドクと血が流れ出る右腕はジクジク痛んだ。
本来なら絶叫ものだけどなんとか我慢できる痛みだ。女の子を傷物にしてしまっているのは……もう開き直って許してほしい。元の体の持ち主がいたとしても僕に入れ替わった時点でこうなることは仕方ないだろ……! ていうか入れ替わるなよ!! 黒の魔導士なんだろ!? なに他人の呪文の影響受けてんだ!!
「なに考えてるの?」
「……現実逃避……」
ビリビリと体が痙攣して動けない。
余計なことを考えるのは脳神経を若干やられてるのかもしれない。こまった。借り物なのに(2度目。
「あの……アカリ様……? ごめんなさい……」
「いや……いいよ……」
顔を見るのも恥ずかしいので伏せたままだ。
まさか自分で発動させた結界に弾き飛ばされるとは思ってもみなかった。
いや、なんとなく嫌な予感はしたけど……でもほら……安全第一って言うか……エミリアが大事っていうか……。
「とにかく……君が無事でよかったよ……」
「……!」
ずりずりと頬っぺたを地面に擦り付けながら見上げたら結梨の顔があった。
正しくは有利の顎があった。
超ど迫力、地面に転がって黒猫を見上げるとさながら怪獣の様だ。
「えっと……?」
ヒゲがピクピク動いて見下ろす瞳はなんだか冷たい。
ーー……もしかして怒っていらっしゃる……?
え……、なにに……? 腕に噛みつかれたこと……?! だったら狼もどきに言えよ!!
「あだッ……、……あだ……?」
ぺちん、とおでこを肉球で叩かれた。っていうか今のは叩かれたっていうか抑えられたっていうか……?
「……ユーリ……?」
ぷいっとそっぽを向いてしまい、視界から消えたかと思えば右腕の傷をざらざらとした感触が撫でた。
驚いて振り向くと(頬っぺたじょりじょり)結梨が猫の舌で舐めていた。
さながら、怪我をした主人を心配する飼い猫の様に。
「……」
回復魔法を打とうとしてくれていたエミリアを左手でせいしてとりあえず感謝を告げる。
ありがとう、と。結梨も結梨なりに心配してくれてたんだろう。その気持ちは凄く嬉しい。
背中を押された身としてはちょっと複雑な気もするけど、背中を押した側も心配ぐらいはしていたんだろう。
だから、ありがとう。ぺろぺろと、傷口を舐めてくれてありがとう。……なんだか生身の(っていうと変だけど)結梨に舐められてるのだと思うと変な気持ちも湧いてくるけど、とにかく今は、
「ごめん……猫の舌って痛いからやめてくんない……?」
ベシッと尻尾が両目を打った。
体のしびれが取れていることに気付いたのは、その痛みでひとしきりのたうち回ってからだった。
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