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第三章 際限なき悪意

女神の降臨

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「おいっ!! しっかりしろ!!?」

 悶え苦しむライハを見て、駆け寄る剣聖。

 すぐに治癒魔導師を呼ぶように、近くの者に指示を飛ばす。


 それに続いて、勇者達が室内へと入って来て、ライハの様子を目の当たりにした。

「退いてください!」

 聖女は剣聖を押し除けて、治癒魔法をかけ始める。

「手伝いますわ!!」

 大賢者も加勢して、治癒魔法をかける。

 だが、彼の表情は一向に良くならない。

 それどころか、より一層悪くなっていく。

「くそっ!! 一体、どうすりゃあ----------------」

『そんな時は困った時の神頼み♡』

 何処からともなく、女神デリヘラが他の女神達を引き連れて、勇者達の前に現れる。

『という訳で♡

 後はよろしくね♡』

『分かったわ♪』

『は、はいぃ~…………!!』

 デリヘラの背後にいた二柱の女神達が聖女に変わって、治療を始める。


 すると、嘘のように、ライハの呼吸は安定し、肌の色も戻って行く。


『やっぱり、デリヘラちゃんの言う通り、これはね♪

 人が人ならざるものの力をその身に浴びたがために起きる神の毒♪

 もしデリヘラちゃんが気付かなかったら、彼、間違いなく死んでたわよ♪』


 調和と愛の女神アフロディアが治療の手を止めずに、デリヘラの方へと顔を向ける。


『まあ、彼の場合、自業自得よね♡

 神の力を人の身でありながら、行使し続けた結果だし…………。

 全く、私の可愛い妹の力をあげたっていうのに、何をしているのかしらね♡』


 そう言いつつも、笑顔が怖いデリヘラに、目には見えないプレッシャーに押し潰されそうになる面々。

 慌てて駆け付けて来た治癒魔導師達の何名かが、既にデリヘラの圧に当てられ、白目を向いている。

『あ、あの、お姉様~…………そ、それ以上、プレッシャーがかかりますと…………。


 そ、その~…………』


 オドオドしながらも、妹である女神シリウスが姉に忠言する。

『おっと、いけない♡』

 徐々に、面々を押さえ付けていた圧が弱まり、思わず、息を止めていた面々は肩で息をし始める。

『ふふっ♪

 何か、デリヘラにしては妙に感情的よね♪

 もしかしなくても、が関係しているせいかしら♪』

 悪戯顔のアフロディアの発言に、半眼になって睨み付けるデリヘラ。

『ひ、ひぃ~っ!!!』

 怯えながらも、懸命にライハの治療を続けるシリウス。


 何か、場が段々と混迷に入り込んだ矢先------------

『それで、ライハ様を救うために我々は何をすればよろしいんですか?』

 この場の空気を完全に無視して、発言する声が…………。

 それは聖女のパートナーにして、パワードスーツの人工知能である《サキネ》からだった。


『そうね♡

 とりあえず…………』

 しばし、アフロディアを睨み付けながらも、サキネの発言に答えるデリヘラ。

 顎に手を当てて、徐にアフロディアから視線を外し、指を鳴らした。


 すると、聖女の前に、一枚の紙が現れ…………。

 そこには、薬の調合方法とそのために必要な材料が事細かに書かれていた。

『それを使えば、毒の進行を多少なりとも抑えられるわ♡

 さっさと作って来なさい♡』


「は、はい!」


 紙を手にして、聖女が慌てて駆け出す。


 その光景を、アフロディアは彼の治療を終えるまで、終始、面白そうに眺めていた。
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