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第二章 魔王は再び蘇る?

最低最悪な宝探し

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「全く、何だってんだ……?」

 デリヘラの言う通りに、俺が拠点していた辺境の町に到着した。

 情報通り、あの悪魔の分身体によって、滅ぼされてからまだ間もないというのに、完全に廃墟と化している。

 一応、勇者達も調査を行ったようだが、運良く町を離れた者を除いて、生存者はいなかったそうだ。

 あったとしても、それはかつてものの一部が転がっているくらいだ。


 そうだというのに…………。

「……………………」


 恐らく、まだここに駐留していた調査隊の面々なのだろう。

 その面々が、地面に出来た半径二十メートル程のクレーター……………………その中心で、座った状態で眠りこけているであろう人物の周りで、身体がのあちこちをバラバラにされ転がっている。


 嫌な汗が流れる。


 もしかしなくても、デリヘラが依頼して来た"最悪な宝探し”は始まった瞬間に、もう見つかってしまった……?

「……………………」

 意を決して、近付こうとした時…………。

 突然、そいつが顔を上げ、俺と目が合った。

 
 そいつとは二百メートル以上も距離が離れている。

 念のため、音も気配も魔道具で遮断しているし、魔力を感知するにしても、距離が離れ過ぎている。

 普通なら見つけられない筈なのだが…………。

 偶然か……?


「ん……? 君は何……?」

「っ…………!?」

 考え耽っていると、瞬きをした瞬間、そいつは視界から忽然と消え------------気が付くと、俺の顔を下から覗き込むように見上げる赤い瞳があった。

 眠たそうで、とろそうな独特の声音。

 それを表すこのような、やる気無さげなで、眠気まなこな瞳。

 歳と慎重は俺と同じくらいか……?

 だが、そいつは普通の人間ではありえない、宝石で例えるなら、サファイアのように透き通った青い肌をしていた。

 思わず、息を飲む俺は、いまいち、状況が理解出来ず、困惑する。

 そいつはしばらく、ジッと俺を見つめていたが--------

「まあいいや…………」

 何を思ったのか、背筋を伸ばして、大きな口を開けて、欠伸をする。


 そんな時だった。

「なっ…………!?」

 防衛用に張っていた結界魔法が、身体を吹き飛ばされると同時に消し飛んだ。

「《リリース!》」

 吹き飛ばされた俺は何とか、受け身を取って、《ヴァルキリー》を展開。

 両肩のキャノン砲を放つ。

 それを軽々と交わしたそいつは、まるで人間のように驚いたように目を見開いて…………。


「へぇ~…………男から女に変われるんだ…………」


 その頬が獰猛に歪んだ。

「っ!!」

 咄嗟に危険を察知して、両腕のバリアフィールドを周りに展開。

 見えない衝撃が俺を襲う。

 だが、その衝撃は一秒間隔で、小刻みに複数与えられ、バリアフィールドの耐久性が削られて行く。

 頭部のバイザーのセンサーには、熱源どころか、魔力反応すらない。

「このぉ~!!!」

 ヤケクソ気味に両腕のミサイルポッドを上に向けて発射。

 俺の周囲に、ミサイルを拡散させて、爆撃した。

 その一瞬、攻撃の手が止まるのを見計らって、背部のブースターを点火。

 急速上昇して、上空に退避する。

「あいつはぁ~!?」

 急いで、センサーをフル稼働して、あいつの居場所を探す。

 そして、爆炎に紛れて、周囲を動き回っている熱源を捉えると、そこへ向けて、一斉射撃を加えた。

 辺境の跡地に、町全体を包む程の爆発が起きる。

 いくら何でも、この攻撃を受けて、無事な筈は--------

「おおっ! すごいねぇっ!?」

「なっ!?」

 爆発が止むと、そいつは町すら消し飛ばす砲撃を受けたにも関わらず、ピンピンとしていた。

 それどころか、まるで無邪気な子供のように、嬉しそうにこちらに手を振る余裕さえある。

 おいおいっ!?

 マジなのかっ!!?

 思わず、顔を引きつらせた俺は、ダメ元で砲撃を放つ。

 だが…………。

「面白い…………! 本当に面白いよっ!!」

 ピョンピョンと嬉しそうに跳びはねる姿は正に子供そのもの。

 だが、先程までと大きく変容した、その腕は、大分小さくはなったが、あの悪魔と類似していた。

「まさかぁ~…………この子が《魔族》なのぉ~……?」

 どうやら、着いて早々、デリヘラが依頼した『最低最悪な宝物』は見つかってしまったようだ。



 これが、俺とこいつの出会いであり、長きに渡る戦いの幕開けでもあった。
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