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第五章 私が託せるもの

怒り

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「無様な姿ね…………」

 私は背後で、血まみれになりながら倒れ伏すミリヤを嘲笑うかの如く辛辣な言葉を紡ぐ。

「……………………」

 そんな私に対して、何故か、涙を浮かべたミリヤが驚いたように大きく目を見開いていた。

 うまく話せないのか、口を何度もパクパクと弱々しく動かすだけだ。

 私が着いた頃には、もう虫の息だった訳だから、仕方がないか。

 全く、情けない子ね。

 一応、手持ちのポーションをミリヤにぶっ掛けて、刀を持っていない反対側の手で、腰にぶら下げたホルスターから銃剣を引き抜いた。

 とりあえず、あの子は問題はないでしょう。

 後はこいつらをどうするか、なのよねぇ~…………。

 よくは分からないが、何故か、目の前の蜘蛛のような物体を見ると、私の心がサッと冷え切って行く気がする。

 まぁ、きっと、それは気のせいじゃないでしょうけど…………。

 さっきから斬り刻んでも、何か、心が晴れないというか、もっと、斬り刻んでやりたい感じだし…………。

「キシャアアアアアア!!!!!!」

「うるさい…………」

 私は刀を地面に突き刺しつつ、銃剣の引き金を引いた。

 何度も、何度も弾いて、地面に突き刺した刀を居合い抜きのように抜き放ち、数体の敵という敵を斬り裂く。

 そして、建物の外へ出て、撃って、斬って、蹴って、跳んで、交わして、受け流して-------------舞を踊るかのように、蜘蛛共との戦いを繰り広げる。

 途中、蜘蛛共の背にあるライフル銃のようなものから光が一斉に放たれたが、問題はない。

《自動防御機構を起動します》

 《忍び装束》と《和風のコート》に施された魔法が緊急発動-------------

 私の周りに結界やら、盾やらが何も無い所から現れて、私の身を守る。

 この蜘蛛共の放つ光は、何だか、私の銃剣の放つ光と一緒に見えるわね。

 まさか、ビームって奴なのかしら?

 なら、こっちにもあるわよ。

 私は相手の光を防ぎながら、銃剣で奴らの背中のライフル銃を狙撃する。

 装束やコートなどの魔法付与で、防御し、銃剣の光の弾丸で武器を無力化。

 その上で、刀の錆にして行く。

 ん?

 良く見れば、何か、刀の刀身が光っているわね。

 これもビームって奴なのかしら?

 まぁ、そんな事は後でも良いか…………。

 今、こいつらをやるべきでしょうし、ね!!!

「キシャアアアアアア!!!!!!」

 ふぅ~ん…………どうやら、この気味の悪い蜘蛛共は、あのゴーレムっぽいのから出て来てあるみたい。

 なら、あいつをやれば、片付くかな…………?

「うっわぁ~…………何これ…………?」

 近付いて、尚分かるこのゴーレムっぽい奴の巨体。

 動く城塞って、この事を言うのかな…………?

 そんな呑気な事を考えていると、私に気付いたゴーレムもどきが足を大きく上げて、踏み下ろして来た。
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