上 下
74 / 82
聖戦の始動編

答えよう

しおりを挟む
 俺は嫌な予感を抱きつつも、管制室のコンソールを操作して、データの閲覧作業と接続した端末への情報の転送作業を同時進行で続けていた。

 そんで、側にいる聖女には、一応、周辺の警戒をさせて貰っている。

「「……………………」」

 女神に関する情報を聞き終えた後、無言になる俺達。

 辺りに聞こえるのは、コンソールを操作する機械音のみ。

 そんな静寂を破ったのは、ビームソード片手に周辺の警戒をしていた聖女からのこんな質問だった。

「あの…………こちらからも、一つお聞きしたい事があります」

「…………何だ?」

 背後を振り向く事なく、コンソールを操作しながら、ぶっきらぼうに返事をする俺。

 そんな俺に、聖女はいたく真面目な口調で、こう質問して来た。

「あなたは何故、あの時、助けてくれたのですか?」

「どういう意味だ?」

 質問の意図が読めず、思わず、手を止めて、背後にいる聖女の方へと振り返る。

 振り返った先にいた聖女と目が合う。

 その目には、力強く、確固たる意志のようなものを感じる真剣な瞳だ。

 下手な答えは返せない。

 そう思える程の強い想いを感じる。

 流石は、勇者パーティーの聖女…………とでも言えば良いのか。

 聖女様の話によれば、以前、俺が救った最初の街で、勇者パーティーの面々も、あのレギオンタイプと戦っていたそうだ。

 そして、苦戦する勇者パーティーの面々を救ったのは、夜の空を駆ける巨大なゴーレムだったそうだ。

 まず、間違いなく、俺の愛機《フォートナー》の事だ。

 正直、勇者パーティーの面々が、あの街にいたなんて知らないし、助けた覚えもない。

 それは聖女の見当違いだ。

 ただ、一つ言える事は-------------

「俺はただ、恥じない生き方をしたいだけだ」

「恥じない生き方…………ですか?」

「そうだ」

 俺はそう答えた後、再び、コンソールを操作し出した。

「はっきり言って、俺はこの世界の連中の事が嫌いだし、勝手にくたばってくれれば良いと思ってる。滅びるんだったら、さっさと滅べってくらいにな…………」

「……………………」

「けどな…………。それでも、どうしても、譲れない。そんなものが、俺の中にもある。例え、世界を敵に回そうとな…………」

 聖女は何も答えない。

 けれど、真摯に俺の答えに耳を傾けているのは伝わって来る。

 だから、俺は答えよう。

 俺が俺らしい答えで、嘘偽りなく、真っ直ぐな答えを-------------

「俺はただ、逃げたくないだけだ。不条理に苛まれる弱い奴を…………理不尽に虐げられる奴を…………。そんな弱者を痛ぶり、我が物顔で、踏み付ける糞みたいな悲劇を-------------俺は許せないから、戦うんだ」

 そう…………許せないんだ。

 だって、もそうだった。

 いつだって、理不尽で、不条理で、助けを求める人達の元へどんな状況だろうと、立ち向かい、救って来たあの人なら、きっと、俺と同じ事をした。

 そう確信出来る。

 何故なら、だから-------------

 だから、俺は立ち向かいたいんだ。

 こんな馬鹿げた悲劇をさっさと終わらせる為に-------------

 その為なら、何だって利用してやる。

 例え、いけ好かないお前ら、勇者パーティーの奴らであってもな…………。

「だから、まぁ、あんたが気にする必要もないし、気にして欲しいとも思わない。俺は俺で好きなようにする。だから、あんたもあんたで、この状況を利用して、あんたがすべき最善の選択をしろ。それがきっと、あんたが目指すものにも繋がる筈だ」

 確証は出来んが、とそう締めくくり、コンソールの作業を終え、端末を無造作に引き抜いた。

 欲しい情報は手に入れたからだ。

 そして、剣聖様の居場所を見つけた事を背後の聖女に伝え、「行くぞ」と軽く彼女の肩を叩いて、管制室を退室する。

「ふふっ…………」

 ふと、退室する際に、背後で聖女が笑う声を耳にした。

 立ち止まり、肩越しに振り返る俺の瞳に、柔らかな優しい笑みを浮かべる聖女の姿が映った。

 その上で、聖女はこう言ったのだ。

「あなたは、本当はとても、優しい人…………なのですね」

「……………………」

 うるせぇよ…………!!!

 俺は不機嫌そうに、鼻を鳴らしながら、矢鱈と暑くなる顔を背けて、再び、歩き出した。

 そんな俺の後を、優しく見つめる聖女が続くように追って来るのが分かる。

 とりあえず、剣聖様の元に向かうとしますか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三
ファンタジー
前世の知識を保持したまま転生した主人公。彼はアルフォンス=テイルフィラーと名付けられ、辺境伯の孫として生まれる。彼の父フィリップは辺境伯家の長男ではあるものの、魔法の才に恵まれず、弟ガリウスに家督を奪われようとしていた。そんな時、アルフォンスに多彩なスキルが宿っていることが発覚し、事態が大きく揺れ動く。己の利権保守の為にガリウスを推す貴族達。逆境の中、果たして主人公は父を当主に押し上げることは出来るのか。 主人公、アルフォンス=テイルフィラー。この世界で唯一の契約魔法師として、後に世界に名を馳せる一人の男の物語である。

最下級冒険者は英雄である事をひた隠す 〜生産スキルで、メカチート生産?〜

水先 冬菜
ファンタジー
 二年前、魔王を倒した功績を持ちながら、それをひた隠しにし、最下級のEランク冒険者として成り済ます転生者の少年ライハ。  唯一無二の生産スキル《創造》を隠しながら、田舎と蔑まれる辺境の地で、薬草採取などの依頼の報酬で生計を立て、細々と暮らしていたのだが------------  魔王が復活して、事態は一変する。  世界中に魔物が溢れ、当然、その影響はライハが住む辺境の地へと襲い始めた。  ライハは面倒がりながらも、ありえない方法で、魔物の侵攻を食い止められた。  だが、運悪く、その姿を"あの時の勇者"に目撃され--------

天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を

榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。 16歳。 ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。 しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。 まったくふざけた話である。 まあだが別にいいさ。 何故なら―― 俺は超学習能力が高い天才だから。 異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。 そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。 これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。

スキル【自動回収】で人助け〜素直な少年は無自覚に人をたらし込む〜

ree
ファンタジー
主人公ー陽野 朝日は(ようの あさひ)は  かなり変わった境遇の持ち主だ。  自身の家族も故郷も何もかもを知らずに育ち、本だけが友達だった。  成人を目前にして初めて外に出た彼は今まで未知だった本の中の世界を夢見て冒険に出る。  沢山の人に頼り、頼られ、懐き、懐かれ…至る所で人をタラシ込み、自身の夢の為、人の為ひた走る。    【自動回収】という唯一無二のスキルで気づかず無双!?小さな世界から飛び出した無垢な少年は自分の為に我儘に異世界で人をタラシ込む?お話…  冒険?スローライフ?恋愛?  何が何だか分からないが取り敢えず懸命に生きてみます! *ゲームで偶に目にする機能。  某有名ゲームタイトル(ゼ○ダの伝説、テイ○ズなどなど)をプレイ中、敵を倒したらそのドロップアイテムに近づくと勝手に回収されることがありませんか?  その機能を此処では【自動回収】と呼び、更に機能的になって主人公が扱います。 *設定上【自動回収】の出来る事の枠ゲームよりもとても広いですが、そこはご理解頂ければ幸いです。 ※誤字脱字、設定ゆるめですが温かい目で見守って頂ければ幸いです。 ※プロット完成済み。 ※R15設定は念の為です。 ゆっくり目の更新だと思いますが、最後まで頑張ります!  

処理中です...