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言葉

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「ところで、気になっていたのですが、カークさんの発音は前からですか?」

「いえ、先日の、怪我、からです」
 カークは頭に怪我をした時から話し方はゆっくりだな。
 神父とは確かに違うな。

「考え、ながら、な、感じ、です」

「スラスラと言葉が出ないなら、頭の中にも怪我をしている可能性がありますね。
 他に気になる事はありますか?」

「崖、落ちる、前、覚えて、ない」

「ああ、体が起こったショックを緩和するために記憶を消す話は聞いたことがあります」
 そんな事があるのか。
 中の血液自体で頭の中の怪我とか確認できるか?
「どう、だろう」
 カークが額に指を当て考えるポーズ。
 頭の中を調べてくれているのだろうか?

「表の傷は治療で塞げますが、見えない位置に怪我を負った際に血管が破れて、その血液の流れが内臓を圧迫していることも有り得ます。
 これによって体に言葉などの不自由が残ったり、記憶障害が起こったりするそうです」
 カークも起きたばっかりの時はボーっとしてたな。
 人間としての記憶はどこまでか聞いていないな。
 まあ、普通に生活ができる程度の記憶はあるとは言ってたな。

「頭、てっぺん、気になる、痛くは、ない」
 じゃあ、その辺りで血管が切れているところがあっても横道にそれないように注意するんだぞ。

「血管を修復する方法ならあるのですが、溢れた血液を取り除くことは難しいんです」
 その辺は今カークに指示したから、血管の修復とやらが頭に触っただけで出来るのならお願いしよう。

「血管、治れば、改善、する、かも?」

「そうですね」

「外から、治せる?」

「それは可能です。ご希望になりますか?」

「はい」
 ……カークが神父に向かって頭を差し出す。
 今すぐとは思わなかったのか神父が目を見開いている。
 なんでカークの胸に下がっている自分に見えたかと言えば、カークの顔は下向いてもぶら下がっている自分の重心が動いていないからだな。

「この方法は私の精神力を使うので、室内でお願いしてもいいでしょうか? 
 野外ではふらついた場合に不安がありますから」

「それは、わかりました」

 ケイとセンに鍋を任せてカークと神父が移動の為に歩き出す。
 神父が足運びがぎこちないカークに歩調を合わせてくれている。

「ちょっと、聞いて、いい?」

「何でしょうか?」

「修復、外傷に、ダメ?」

「ああ、その事ですか。修復は狭い範囲に集中的に行う施術で、緊急性の高い場合に使います。
 広範囲に行おうとすると精神力が続かず施術者が倒れますので」

「それ、俺に、いい?」
 カークの顔が申し訳なさげだ。

「頭の中の損傷は十分緊急性の高い症状です。思ってもいない部分に症状が出たりしますしね」

「俺は、助かる」

「お役に立てて幸いです」
 神父様が優しげに微笑んだ。
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