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13 - 肌がちりちりと痛んで
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肌がちりちりと痛んであわだっている。
不快な気配が全身におしつけられているようだ。
この耐えがたい濃厚な瘴気はなんなのか。
そう思ってアイディーンが重いまぶたをあげると、光が目に飛びこんできてとっさに顔をそむけた。
手をあげて光を遮ろうとして、できないのに気づく。
両手は後ろにまわされ、手首がかたく縛られているらしかった。
それもそうとうのきつさで、手先の感覚がほとんどない。
「う……」
低く声が漏れたのは、この無理な体勢で長時間いたのか、肩の関節がきしんで痛みを訴えたからだ。
アイディーンは両手を後ろで縛られたまま床に座らされている。
そのままうなだれたかっこうで意識を失っていたのだった。
目が慣れてくると、鋭い光だと思ったのは燭台の灯火で、周囲はむしろぼんやりと薄暗い。
身体をおこそうとしたとき、背後でじゃらりと金属音がした。
立ちあがることはできたが、五歩も行かないうちに進めなくなる。
縛られた両手には鎖がついていて、それが壁に埋めこまれた留め具につながっていたからだ。
「目覚めてすぐにとんずらしようとは、タフな奴だな」
ふいに投げられた声のするほうを見ると、鉄格子の檻のなかに男がいる。
いや、檻のなかにいるのはアイディーンで、男は外側からこちらを見ていたのだった。
「罪人のあつかいを受けるようなことをした覚えはないんだが」
アイディーンは軽い口調で返す。
まだ頭の芯が痺れたようになっていて意識が明瞭ではなかったが、そのまま眠っていられる状況でもないようだ。
気を失った前後の記憶を素早く整合させながら、彼は四十ほどにみえる得体の知れない男を観察した。
男は薄笑いをうかべて肩をすくめる。
「肝がすわってんだか莫迦なんだかわからねえ奴だ。まァ、うっかりこんなところに来ちまうんだから、おつむは空っぽみてえだがな」
「樹の下に罠用の法術を仕掛けたのはあんたか」
「おまえみたいにふらふら迷いこんじまうのが、たまにいるからなァ」
「いったいなんのために」
そのとき、青年の言葉を遮って、いくぶん乱暴に扉をあけて男が入ってきた。
「声がすると思ったらもう目覚めていたのか。なぜすぐに知らせないんだ」
こちらは三十代なかばくらいにみえる。
問われた男は薄笑いをうかべたまま、ちらりと囚われの青年を見やった。
「だってよォ、見てみろよこの兄ちゃん。富家の世間知らずの若旦那ってなりだが、これは……オレぁ野郎には興味なかったが、ちょっと試してもいいって気になるような色男じゃねえか? これほどの素材にゃ滅多にお目にかかれねえよ」
ばかばかしい、と吐き捨てて檻のなかを見た若いほうの男は、しかしその瞬間に言葉をとぎらせた。
茶金の瞳をまともに見て、逸らせなくなる。
たしかにひどく秀麗な青年だ。
しかしその目に潰されそうな重圧を感じ、ただの世間知らずなどとはとうてい思えなかった。
頭布を巻いた湖緑の髪の青年は、理由もわからず拘束されているというのに怯えもせず平然とそこに立っており、下世話な言葉を気にかける様子もなく、ただ見ることで威圧感を与えているのだった。
「おまえは何者だ。街でベラベルのことを聞いてまわっていた目的はなんだ」
男は意識的に大きな声で言った。
青年は少し思案するふうで、それから「ああ」とつぶやいた。
「やっぱりあの測量屋の店員はおまえたちの仲間か」
気を失うとき、最後に耳に届いた声に聞き覚えがあったのだ。
「俺の目的がなにか、おまえたちのほうがよくわかっているんじゃないか」
あれだけ警戒もあらわな罠法術を仕掛けているとなれば、よほど都合の悪い事情があるのは間違いない。
「自分の立場がよくわかっていないようだな。おまえに質問をする権利などない。素直に答えろ」
「ハユル、オレがこいつの身体に聞いてやろうか」
年輩の男が横から余計な口をはさむのを若い男がたしなめるまえに、アイディーンが先に声をあげた。
「ハユル? ハユル・イスケンディルか」
「なんでおれの名を知っている」
男はぎょっとして、隣の男をにらんだ。
「おまえが教えたのか」
「そんなことしゃべるわけねェだろう。兄ちゃん、ハユルと知り合いか」
「そうだな、縁がないといえなくもない。俺の目的のひとつはおまえというわけだ」
青年の含みのある答えに若い男は動揺をみせ、年輩の男に部屋の外へでているよう強く言った。
「ちっなんだよ、二人でよろしくやる気じゃねェだろうな……」
ぶつぶつと文句を言いながらも逆らえないらしい男は、なんとも未練たっぷりの視線を檻のほうへやって出ていった。
色狂いが、と忌々しげに悪態をついた男——ハユルはあらためて青年に向きなおり、今度は警戒と懐疑もあらわに再び詰問した。
「おまえはなんだ、なぜおれの名を知っているのか答えろ。さもなければ、指の一本でも折ってやろうか」
ハユルは小剣を懐からとりだしてみせたが、青年は苦笑して言った。
「せっかくみつけた師匠がこんな人物とは、ウーラも気の毒なことだな」
「ウーラだと? おまえ、彼女を知っているのか」
思いがけない名前に、ハユルは一度は静めた動揺をさらに強くした。
「いったい彼女からなにを」
「もとはといえばおまえが、ビジャールより北で魔獣が大量発生しているという虚言をウーラに聞かせたせいだ。いくら調べても、そんな事実はなかった。いまの時期には危険な内容だと思わないか」
「……そういえば、おまえの手荷物のなかに携帯用の術具が入っていたな。国から雇われた魔種狩りの法術士か」
「似たようなものだ。そらごとだとしても、噂が耳に入った以上放置するわけにはいかないからな」
「嘘ではない」
ハユルは動揺をぬぐい去り、わずかに笑みさえみせた。
「これから事実となるのだから」
「それが、この尋常じゃない瘴気によってもたらされるものだと?」
「ほう、これが感じられるのか。なかなか腕のいい法術士らしいな。そうとも、あれがあれば、いくらでも魔獣を呼べるようになるのだ」
「じゃあここが、バズルリングの巣窟なのか」
男は感心したようにアイディーンをながめた。
「そこまでつきとめていたのか。さっきの男などよりよほど優秀だな、おまえは。バズルリングの理念に賛同してもらえるなら、ぜひ仲間になってほしいところだよ」
「残念だが、魔属の帝国をつくろうなんて考えは一生理解できそうもない」
「では、おとなしくあれの餌になるんだな。あれが目を覚ますまでの数刻を恐怖におびえながら過ごすといい」
ハユルは言って部屋を出ていこうとしたが、それを青年がひきとめた。
「俺が気を失ってから、どのくらいたっているんだ」
命の危機に瀕しているとは思えない間のぬけた質問に、男は奇異な目を向ける。
しかし彼は生真面目な面があるらしく「一日と少しだ」と答えて扉を閉じた。
「ということは、二日目の晩というところか」
残されたアイディーンは、ビジャールを発ってからの時間の経過を数えてため息をついた。
デニズリへ戻って転移法術陣でビジャールへ帰るには、どんなに早くても半日はかかる。
窓のないこの部屋では、夜だとしても何時なのかわからないが、カシュカイと約束した三日のうちに戻るためには、のんびりできる状況ではなかった。
「この場のわずかなものたちよ、小さき刃となって縛めを断て。風の神ファルクの名において命じる〈サー・エル〉」
青年の詠唱に風の精霊は忠実に応え、後ろ手に縛られた縄を鋭く裂いた。
いや、落下したものが板床にあたって重い音をたてたので、縄ではなく鎖と同じ金属の嵌め輪と気づいた。
アイディーンが法術士とわかっていながら口にさるぐつわをかませていなかったのは、この大層な縛めと印を結べないようにしたことで油断したためだろうか。
しかし、強い法力をもつ者であれば詠唱だけで術を発動させるのは難しくない。
青年は檻の格子も同様にとりのぞくと、がれきとなったそれらをまたいでさっさと脱獄した。
ハユル・イスケンディルの言っていたあれとはいったいなんなのか。
ここまで来た以上、確かめずに出ていくわけにはいかなかった。
「嫌な予感しかしないが……」
濃厚な気配に、悪い酒を飲まされたような酔いを味わいつつ、扉に身体を寄せて外の様子をさぐる。
先に追いだされた男が部屋の前で見張りをしているかと用心したが、廊下は無人らしく、アイディーンは音をたてないよう忍びでた。
廊下は幅広く、右も左もずいぶん向こうまで長く続いている。
ドア数は少ない。
それは一部屋が広いことを示しており、この建物自体が大きいのだと思われた。
造りからいえば、城といった雰囲気でさえある。
城は貴族の所有物だ。
そしてここにはバズルリングのメンバーがいる。
自分の予想が穏やかでない方向へ傾いていくのに、アイディーンは顔をしかめつつ、頼りない灯火だけが道しるべの薄暗い廊下を進んでいく。
目指すのはもちろん瘴気のより濃いほうだ。
つきあたりまで来ると、上へ行く階段と下へ行くものとがある。
瘴気の導きに従って下へ向かっていくと、途中から綺麗に貼られた壁紙と床の絨毯がなくなり、壁も床も天井も一様に石造りに変貌した。
とするとここは地下で、囚われていたのが一階だったのだろうか。
しかし建物内はどこにも窓がなく確信はもてない。
小さな足音も妨がない石床に苦慮しつつ進んだ先、鉄格子の扉の前に二人の男が椅子に座っているのが見え、アイディーンは壁の陰に身を隠した。
さきほど話をしたのとは別の者たちで、ごく若いようだ。
彼らは侵入者に気づく様子もなく雑談に興じている。
むせかえりそうな瘴気にあてられている青年には、男たちの鈍感さが驚異的ですらあった。
これだけなにも感じずのんきに笑っていられるなら、どちらも法術士という可能性はないだろう。
眠らせたほうが都合がいいかとアイディーンが手印を組みはじめたとき、彼らの話題がどうやら囚人のことへ移って、青年は手を解いた。
「——ところで、ハユルさんが言っていたが、今度の生贄は法術士らしい」
「へえ、アーシャー様にとっちゃご馳走だろうな」
「これでまた魔獣をたくさん呼んでいただけるってもんだ」
「……でもよう、おれらにはいまだにお姿も拝見させてもらえないのはなんでだろうな。ここへいらっしゃってからもう一月以上たつのに」
「さあな、上の人らの考えることはわからん。だが、俺たちがアーシャー様の忠実な徒だという事実に違いはないんだ。近々、魔獣の群れを率いて東方の都市バレーに攻め入るなんて話も仲間内ででているくらいだから、拝謁できる日もそう遠くないかもな……」
〈アーシャー〉という名を脳裏に刻んで、アイディーンは今度こそ印を組んだ。
「——安らかなる眠りの神ラハトゥの名において……」
ほとんど音を発せず文を唱えると、間もなく男たちはかくんと首を前のめりに傾け緩慢に倒れこんだ。
「物騒な話をしていたな」
青年は呆れを含んだつぶやきを漏らして鉄格子の前に立った。
話しぶりから察するに、彼らは一兵卒のような立場らしい。
自分たちがどれほど危険なことに関わっているか理解しているとは思えなかった。
忠実な徒などと称していたが、なにを信仰しているか知れたものではない。
格子戸に鍵がかかっているのに気づいて、アイディーンは男たちの懐や周りを調べたものの、鍵はみあたらない。
しかたがないので再び法術で通れるだけの隙間を作りなかへ踏みこむ。
するとずっと先に同様の格子戸があった。
そこを抜け、結局三つ目の格子戸と二つの鉄扉を過ぎて、ようやく最後らしい扉が現れる。
どんな極悪人でも、これほど厳重な牢獄に捕らえはしないだろう。
過度な備えは外からの進入を阻むためか、それともなかの者が逃亡するのを防ぐためなのか。
ここにたどりつくまでにいくつもの法術陣も目にした。
長居できないため詳しく確認しなかったが、厳重に過ぎる部屋と瘴気という組み合わせは、歩みを鈍らせるのにじゅうぶんだった。
アイディーンは法術防御を高める術を身の周りに施し、愛剣の存在を確かめようとしてハユルたちに奪われたのに気づき顔をしかめたが、すぐに気をひきしめると扉をゆっくりひらいていく。
むわ、と瘴気が流れでてきた。
肌が痺れる感じがする。
なかは思ったよりも広い空間で天井や床、壁を埋めつくす石板が発光成分を含んでいるらしくほのかに明るい。
室内へ入ったアイディーンは、直後に全身をこわばらせた。
一瞬、正面の壁に布がぶらさがっていると思ったものが、人だと気づいたからだ。
「これは」
見開いた目に映るのは恐ろしく美しい青年、いや魔族だった。
かろうじて服と呼べる程度のぼろ布に包まれた身体が、壁にぶらさがっている。
肩や腕、太腿などを法術具で昆虫標本のように打ちつけられていた。
ほっそりとして少女にもみえる白い面はうなだれ、まぶたは閉じられていて彫刻ともみまごう姿だ。
周囲へ目をやれば、部屋いっぱいに術陣が描かれているのがわかる。
魔族はその中心にいるのだった。
とめどなくあふれる瘴気はその魔族が生きていることを示していたが、青年が近づいてもその瞳はひらかない。
よく表情がわかる距離まで来て、彼は磔はりつけの身体に左腕がないのに気づいた。
二の腕のなかばから鋭利な刃物で切りとられている。
疑問は増えるばかりだった。
この魔族がアーシャーだとして、なぜこんな場所に魔族が囚われているのか。
なぜ片腕を失っているのか。
見張りの男たちは崇拝しているような口ぶりだったにも関わらず、この粗雑なあつかいはどういうわけなのか。
どうやらハユル・イスケンディルと再び話をする必要がありそうだ。
この場だけではアイディーンの疑問は解けそうになかった。
ひきかえそうかと思いながら横目に魔族の顔を見たとき。
なんの前触れもなく、まぶたがひらいた。
瞬時に灰色の目が青年の姿を射て、口をあける。
「う、わッ!」
アイディーンはとっさに両手で耳をふさいだ。
魔族の口から音が、男の声でもなく人のものでさえない高音があふれだしたのだった。
甲高い不快な音はどんどん大きく高くなり、人間の耳には認識できなくなっていく。
見れば、魔族の顔はついさきほどと同一人物とは思えない憤怒の表情を刻んでいた。
美貌とかけ離れた修羅のようなその面に理性は感じられず、見開かれた瞳は虚空の一点をにらんだまま動かない。
異様な声だけが石壁の室内を乱反射し、逃げ場を失っているようだった。
いや、部屋じゅうに張りめぐらされた法術は、実際に逃げるのを防いでいる。
アイディーンがそれに気づいたのは、描かれた術陣がいっせいに青白い光を発しはじめたからだ。
つまりこの魔族の発する声はただの騒音ではなく、なんらかの意味を持った音だということだろう。
床の陣形に目をやったが、なんのための術なのかすぐに解読はできそうになかった。
いくつもの術を組みあわせた複雑なもののようだ。
なによりこの不快さには長く耐えられそうにない。
アイディーンは一度退くため、ゆっくり後ろにさがった。
すでにひどい頭痛をともなっていたが、よけいな刺激を与えるのは魔族にも術陣にも悪影響である。
じりじりと後ずさって術陣の外側にでた、と思ったとき、薄氷にひびが入ったようなかすかな金属音が聞こえて彼は息をのんだ。
空間を埋めつくす声の洪水のなかでも不思議によく通るその音は、術陣が崩壊する前兆だった。
「まずい……っ」
印を組み両手のひらを床につくと、術のほころびをくいとめる術文をたて続けに唱えた。
新たな陣を描く暇はなく、どんな種の法術かもわからないのでは汎用術的な応急処置しか施せないが、この術陣が魔族を拘束する役割も担っていたとしたら、崩壊させるわけにはいかない。
この声の正体も定かでない以上、安易に外に漏らせばなにがおこるかわからないのだ。
魔族が目覚めたためかアイディーンが踏みこんだためなのか、この時機に術がほころんだ原因はわからないが、彼にできるのは崩れはじめた陣形をとどめることだけだった。
「もう一人法術士がいないと……」
止められないかもしれない、と言葉がこぼれる。
床についた手のひらから急激に力が放出されるのがわかった。
それだけ大規模な法術だということだ。
崩壊を完全に止めるには、この術陣の全容を熟知している者が必要だった。
知らず流れでていた汗が頬を伝ってあご先から落ちる。
床に点々と濃い染みができるのにも気づかないまま、アイディーンはいっそう手のひらに意識を集中して目を閉じた。
不快な気配が全身におしつけられているようだ。
この耐えがたい濃厚な瘴気はなんなのか。
そう思ってアイディーンが重いまぶたをあげると、光が目に飛びこんできてとっさに顔をそむけた。
手をあげて光を遮ろうとして、できないのに気づく。
両手は後ろにまわされ、手首がかたく縛られているらしかった。
それもそうとうのきつさで、手先の感覚がほとんどない。
「う……」
低く声が漏れたのは、この無理な体勢で長時間いたのか、肩の関節がきしんで痛みを訴えたからだ。
アイディーンは両手を後ろで縛られたまま床に座らされている。
そのままうなだれたかっこうで意識を失っていたのだった。
目が慣れてくると、鋭い光だと思ったのは燭台の灯火で、周囲はむしろぼんやりと薄暗い。
身体をおこそうとしたとき、背後でじゃらりと金属音がした。
立ちあがることはできたが、五歩も行かないうちに進めなくなる。
縛られた両手には鎖がついていて、それが壁に埋めこまれた留め具につながっていたからだ。
「目覚めてすぐにとんずらしようとは、タフな奴だな」
ふいに投げられた声のするほうを見ると、鉄格子の檻のなかに男がいる。
いや、檻のなかにいるのはアイディーンで、男は外側からこちらを見ていたのだった。
「罪人のあつかいを受けるようなことをした覚えはないんだが」
アイディーンは軽い口調で返す。
まだ頭の芯が痺れたようになっていて意識が明瞭ではなかったが、そのまま眠っていられる状況でもないようだ。
気を失った前後の記憶を素早く整合させながら、彼は四十ほどにみえる得体の知れない男を観察した。
男は薄笑いをうかべて肩をすくめる。
「肝がすわってんだか莫迦なんだかわからねえ奴だ。まァ、うっかりこんなところに来ちまうんだから、おつむは空っぽみてえだがな」
「樹の下に罠用の法術を仕掛けたのはあんたか」
「おまえみたいにふらふら迷いこんじまうのが、たまにいるからなァ」
「いったいなんのために」
そのとき、青年の言葉を遮って、いくぶん乱暴に扉をあけて男が入ってきた。
「声がすると思ったらもう目覚めていたのか。なぜすぐに知らせないんだ」
こちらは三十代なかばくらいにみえる。
問われた男は薄笑いをうかべたまま、ちらりと囚われの青年を見やった。
「だってよォ、見てみろよこの兄ちゃん。富家の世間知らずの若旦那ってなりだが、これは……オレぁ野郎には興味なかったが、ちょっと試してもいいって気になるような色男じゃねえか? これほどの素材にゃ滅多にお目にかかれねえよ」
ばかばかしい、と吐き捨てて檻のなかを見た若いほうの男は、しかしその瞬間に言葉をとぎらせた。
茶金の瞳をまともに見て、逸らせなくなる。
たしかにひどく秀麗な青年だ。
しかしその目に潰されそうな重圧を感じ、ただの世間知らずなどとはとうてい思えなかった。
頭布を巻いた湖緑の髪の青年は、理由もわからず拘束されているというのに怯えもせず平然とそこに立っており、下世話な言葉を気にかける様子もなく、ただ見ることで威圧感を与えているのだった。
「おまえは何者だ。街でベラベルのことを聞いてまわっていた目的はなんだ」
男は意識的に大きな声で言った。
青年は少し思案するふうで、それから「ああ」とつぶやいた。
「やっぱりあの測量屋の店員はおまえたちの仲間か」
気を失うとき、最後に耳に届いた声に聞き覚えがあったのだ。
「俺の目的がなにか、おまえたちのほうがよくわかっているんじゃないか」
あれだけ警戒もあらわな罠法術を仕掛けているとなれば、よほど都合の悪い事情があるのは間違いない。
「自分の立場がよくわかっていないようだな。おまえに質問をする権利などない。素直に答えろ」
「ハユル、オレがこいつの身体に聞いてやろうか」
年輩の男が横から余計な口をはさむのを若い男がたしなめるまえに、アイディーンが先に声をあげた。
「ハユル? ハユル・イスケンディルか」
「なんでおれの名を知っている」
男はぎょっとして、隣の男をにらんだ。
「おまえが教えたのか」
「そんなことしゃべるわけねェだろう。兄ちゃん、ハユルと知り合いか」
「そうだな、縁がないといえなくもない。俺の目的のひとつはおまえというわけだ」
青年の含みのある答えに若い男は動揺をみせ、年輩の男に部屋の外へでているよう強く言った。
「ちっなんだよ、二人でよろしくやる気じゃねェだろうな……」
ぶつぶつと文句を言いながらも逆らえないらしい男は、なんとも未練たっぷりの視線を檻のほうへやって出ていった。
色狂いが、と忌々しげに悪態をついた男——ハユルはあらためて青年に向きなおり、今度は警戒と懐疑もあらわに再び詰問した。
「おまえはなんだ、なぜおれの名を知っているのか答えろ。さもなければ、指の一本でも折ってやろうか」
ハユルは小剣を懐からとりだしてみせたが、青年は苦笑して言った。
「せっかくみつけた師匠がこんな人物とは、ウーラも気の毒なことだな」
「ウーラだと? おまえ、彼女を知っているのか」
思いがけない名前に、ハユルは一度は静めた動揺をさらに強くした。
「いったい彼女からなにを」
「もとはといえばおまえが、ビジャールより北で魔獣が大量発生しているという虚言をウーラに聞かせたせいだ。いくら調べても、そんな事実はなかった。いまの時期には危険な内容だと思わないか」
「……そういえば、おまえの手荷物のなかに携帯用の術具が入っていたな。国から雇われた魔種狩りの法術士か」
「似たようなものだ。そらごとだとしても、噂が耳に入った以上放置するわけにはいかないからな」
「嘘ではない」
ハユルは動揺をぬぐい去り、わずかに笑みさえみせた。
「これから事実となるのだから」
「それが、この尋常じゃない瘴気によってもたらされるものだと?」
「ほう、これが感じられるのか。なかなか腕のいい法術士らしいな。そうとも、あれがあれば、いくらでも魔獣を呼べるようになるのだ」
「じゃあここが、バズルリングの巣窟なのか」
男は感心したようにアイディーンをながめた。
「そこまでつきとめていたのか。さっきの男などよりよほど優秀だな、おまえは。バズルリングの理念に賛同してもらえるなら、ぜひ仲間になってほしいところだよ」
「残念だが、魔属の帝国をつくろうなんて考えは一生理解できそうもない」
「では、おとなしくあれの餌になるんだな。あれが目を覚ますまでの数刻を恐怖におびえながら過ごすといい」
ハユルは言って部屋を出ていこうとしたが、それを青年がひきとめた。
「俺が気を失ってから、どのくらいたっているんだ」
命の危機に瀕しているとは思えない間のぬけた質問に、男は奇異な目を向ける。
しかし彼は生真面目な面があるらしく「一日と少しだ」と答えて扉を閉じた。
「ということは、二日目の晩というところか」
残されたアイディーンは、ビジャールを発ってからの時間の経過を数えてため息をついた。
デニズリへ戻って転移法術陣でビジャールへ帰るには、どんなに早くても半日はかかる。
窓のないこの部屋では、夜だとしても何時なのかわからないが、カシュカイと約束した三日のうちに戻るためには、のんびりできる状況ではなかった。
「この場のわずかなものたちよ、小さき刃となって縛めを断て。風の神ファルクの名において命じる〈サー・エル〉」
青年の詠唱に風の精霊は忠実に応え、後ろ手に縛られた縄を鋭く裂いた。
いや、落下したものが板床にあたって重い音をたてたので、縄ではなく鎖と同じ金属の嵌め輪と気づいた。
アイディーンが法術士とわかっていながら口にさるぐつわをかませていなかったのは、この大層な縛めと印を結べないようにしたことで油断したためだろうか。
しかし、強い法力をもつ者であれば詠唱だけで術を発動させるのは難しくない。
青年は檻の格子も同様にとりのぞくと、がれきとなったそれらをまたいでさっさと脱獄した。
ハユル・イスケンディルの言っていたあれとはいったいなんなのか。
ここまで来た以上、確かめずに出ていくわけにはいかなかった。
「嫌な予感しかしないが……」
濃厚な気配に、悪い酒を飲まされたような酔いを味わいつつ、扉に身体を寄せて外の様子をさぐる。
先に追いだされた男が部屋の前で見張りをしているかと用心したが、廊下は無人らしく、アイディーンは音をたてないよう忍びでた。
廊下は幅広く、右も左もずいぶん向こうまで長く続いている。
ドア数は少ない。
それは一部屋が広いことを示しており、この建物自体が大きいのだと思われた。
造りからいえば、城といった雰囲気でさえある。
城は貴族の所有物だ。
そしてここにはバズルリングのメンバーがいる。
自分の予想が穏やかでない方向へ傾いていくのに、アイディーンは顔をしかめつつ、頼りない灯火だけが道しるべの薄暗い廊下を進んでいく。
目指すのはもちろん瘴気のより濃いほうだ。
つきあたりまで来ると、上へ行く階段と下へ行くものとがある。
瘴気の導きに従って下へ向かっていくと、途中から綺麗に貼られた壁紙と床の絨毯がなくなり、壁も床も天井も一様に石造りに変貌した。
とするとここは地下で、囚われていたのが一階だったのだろうか。
しかし建物内はどこにも窓がなく確信はもてない。
小さな足音も妨がない石床に苦慮しつつ進んだ先、鉄格子の扉の前に二人の男が椅子に座っているのが見え、アイディーンは壁の陰に身を隠した。
さきほど話をしたのとは別の者たちで、ごく若いようだ。
彼らは侵入者に気づく様子もなく雑談に興じている。
むせかえりそうな瘴気にあてられている青年には、男たちの鈍感さが驚異的ですらあった。
これだけなにも感じずのんきに笑っていられるなら、どちらも法術士という可能性はないだろう。
眠らせたほうが都合がいいかとアイディーンが手印を組みはじめたとき、彼らの話題がどうやら囚人のことへ移って、青年は手を解いた。
「——ところで、ハユルさんが言っていたが、今度の生贄は法術士らしい」
「へえ、アーシャー様にとっちゃご馳走だろうな」
「これでまた魔獣をたくさん呼んでいただけるってもんだ」
「……でもよう、おれらにはいまだにお姿も拝見させてもらえないのはなんでだろうな。ここへいらっしゃってからもう一月以上たつのに」
「さあな、上の人らの考えることはわからん。だが、俺たちがアーシャー様の忠実な徒だという事実に違いはないんだ。近々、魔獣の群れを率いて東方の都市バレーに攻め入るなんて話も仲間内ででているくらいだから、拝謁できる日もそう遠くないかもな……」
〈アーシャー〉という名を脳裏に刻んで、アイディーンは今度こそ印を組んだ。
「——安らかなる眠りの神ラハトゥの名において……」
ほとんど音を発せず文を唱えると、間もなく男たちはかくんと首を前のめりに傾け緩慢に倒れこんだ。
「物騒な話をしていたな」
青年は呆れを含んだつぶやきを漏らして鉄格子の前に立った。
話しぶりから察するに、彼らは一兵卒のような立場らしい。
自分たちがどれほど危険なことに関わっているか理解しているとは思えなかった。
忠実な徒などと称していたが、なにを信仰しているか知れたものではない。
格子戸に鍵がかかっているのに気づいて、アイディーンは男たちの懐や周りを調べたものの、鍵はみあたらない。
しかたがないので再び法術で通れるだけの隙間を作りなかへ踏みこむ。
するとずっと先に同様の格子戸があった。
そこを抜け、結局三つ目の格子戸と二つの鉄扉を過ぎて、ようやく最後らしい扉が現れる。
どんな極悪人でも、これほど厳重な牢獄に捕らえはしないだろう。
過度な備えは外からの進入を阻むためか、それともなかの者が逃亡するのを防ぐためなのか。
ここにたどりつくまでにいくつもの法術陣も目にした。
長居できないため詳しく確認しなかったが、厳重に過ぎる部屋と瘴気という組み合わせは、歩みを鈍らせるのにじゅうぶんだった。
アイディーンは法術防御を高める術を身の周りに施し、愛剣の存在を確かめようとしてハユルたちに奪われたのに気づき顔をしかめたが、すぐに気をひきしめると扉をゆっくりひらいていく。
むわ、と瘴気が流れでてきた。
肌が痺れる感じがする。
なかは思ったよりも広い空間で天井や床、壁を埋めつくす石板が発光成分を含んでいるらしくほのかに明るい。
室内へ入ったアイディーンは、直後に全身をこわばらせた。
一瞬、正面の壁に布がぶらさがっていると思ったものが、人だと気づいたからだ。
「これは」
見開いた目に映るのは恐ろしく美しい青年、いや魔族だった。
かろうじて服と呼べる程度のぼろ布に包まれた身体が、壁にぶらさがっている。
肩や腕、太腿などを法術具で昆虫標本のように打ちつけられていた。
ほっそりとして少女にもみえる白い面はうなだれ、まぶたは閉じられていて彫刻ともみまごう姿だ。
周囲へ目をやれば、部屋いっぱいに術陣が描かれているのがわかる。
魔族はその中心にいるのだった。
とめどなくあふれる瘴気はその魔族が生きていることを示していたが、青年が近づいてもその瞳はひらかない。
よく表情がわかる距離まで来て、彼は磔はりつけの身体に左腕がないのに気づいた。
二の腕のなかばから鋭利な刃物で切りとられている。
疑問は増えるばかりだった。
この魔族がアーシャーだとして、なぜこんな場所に魔族が囚われているのか。
なぜ片腕を失っているのか。
見張りの男たちは崇拝しているような口ぶりだったにも関わらず、この粗雑なあつかいはどういうわけなのか。
どうやらハユル・イスケンディルと再び話をする必要がありそうだ。
この場だけではアイディーンの疑問は解けそうになかった。
ひきかえそうかと思いながら横目に魔族の顔を見たとき。
なんの前触れもなく、まぶたがひらいた。
瞬時に灰色の目が青年の姿を射て、口をあける。
「う、わッ!」
アイディーンはとっさに両手で耳をふさいだ。
魔族の口から音が、男の声でもなく人のものでさえない高音があふれだしたのだった。
甲高い不快な音はどんどん大きく高くなり、人間の耳には認識できなくなっていく。
見れば、魔族の顔はついさきほどと同一人物とは思えない憤怒の表情を刻んでいた。
美貌とかけ離れた修羅のようなその面に理性は感じられず、見開かれた瞳は虚空の一点をにらんだまま動かない。
異様な声だけが石壁の室内を乱反射し、逃げ場を失っているようだった。
いや、部屋じゅうに張りめぐらされた法術は、実際に逃げるのを防いでいる。
アイディーンがそれに気づいたのは、描かれた術陣がいっせいに青白い光を発しはじめたからだ。
つまりこの魔族の発する声はただの騒音ではなく、なんらかの意味を持った音だということだろう。
床の陣形に目をやったが、なんのための術なのかすぐに解読はできそうになかった。
いくつもの術を組みあわせた複雑なもののようだ。
なによりこの不快さには長く耐えられそうにない。
アイディーンは一度退くため、ゆっくり後ろにさがった。
すでにひどい頭痛をともなっていたが、よけいな刺激を与えるのは魔族にも術陣にも悪影響である。
じりじりと後ずさって術陣の外側にでた、と思ったとき、薄氷にひびが入ったようなかすかな金属音が聞こえて彼は息をのんだ。
空間を埋めつくす声の洪水のなかでも不思議によく通るその音は、術陣が崩壊する前兆だった。
「まずい……っ」
印を組み両手のひらを床につくと、術のほころびをくいとめる術文をたて続けに唱えた。
新たな陣を描く暇はなく、どんな種の法術かもわからないのでは汎用術的な応急処置しか施せないが、この術陣が魔族を拘束する役割も担っていたとしたら、崩壊させるわけにはいかない。
この声の正体も定かでない以上、安易に外に漏らせばなにがおこるかわからないのだ。
魔族が目覚めたためかアイディーンが踏みこんだためなのか、この時機に術がほころんだ原因はわからないが、彼にできるのは崩れはじめた陣形をとどめることだけだった。
「もう一人法術士がいないと……」
止められないかもしれない、と言葉がこぼれる。
床についた手のひらから急激に力が放出されるのがわかった。
それだけ大規模な法術だということだ。
崩壊を完全に止めるには、この術陣の全容を熟知している者が必要だった。
知らず流れでていた汗が頬を伝ってあご先から落ちる。
床に点々と濃い染みができるのにも気づかないまま、アイディーンはいっそう手のひらに意識を集中して目を閉じた。
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