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#4:宿泊研修~準備編
#4-余談5①.出会いは必然
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<ゲネル視点>
────────────────────
私の家は、代々由緒ある公爵家にお仕えしております。
父は今代の執事長として、祖父は先代の執事長として、その前も、その前も。
当然私も次代のご当主様にお仕えすべく、日々鍛錬を積む日々でございます。
「あ、ゲネル」
長い黒髪を揺らしながら近付いてこられたマリネッテ様、次代のご当主様です。
マリネッテ様にはお兄様もおられるのですが、公爵家を継がれるのはマリネって様なのだと父より聞いております。
まあ、あの阿呆兄(決して馬鹿ではない)よりマリネッテ様の方が数万倍、いや数億倍、お美しく聡明でお仕えし甲斐があるというもの。
なので、私のご主人さまはマリネッテ様にございます。
「ごきげんよう、マリネッテ様」
左胸に軽く右手を当て頭を垂れご挨拶致します。
最近ようやくお屋敷に入ることを父に許され、こうして時折マリネッテ様のお顔を近くで見ることが出来るようになって、辛い鍛錬を頑張ってきて良かったと思えるようになりました。
手本は勿論父です。
「硬い。硬いわ、ゲネル」
「何がでございましょう?」
3つ年下で尚且同世代の子供より背が高い自身より頭一つ分ほど小さなマリネッテ様が、ピッと立てた人差し指を口元に当てて小首を傾げ、何やら私に苦言を呈していらっしゃる。
そんなお姿も一段とお可愛らしいですね。
「まだあなたもわたしも子供なんだから、わたしに『様』を付けて呼ばなくてもいいじゃない」
確かに、私もまだ子供なんですけれども。
父をそっくり真似する私にマリネッテ様はご不満なようです。
公爵家という家柄上、ここで働く使用人はメイドや料理人、庭師に至るまで全て一流の使用人。こちらにお仕え出来ることを何よりの誇りとしております。
自分の立場を弁えてお仕えしておりますが、どうもマリネッテ様にはそれが他人行儀に思えるらしく。
家業のお立場上、年頃の子息子女とのお付き合いもなく、私を除けばお兄様と弟君ぐらいしか同世代の子供が周りにいないのも関係あるのかもしれません。
「そうは参りません。あなたは私が主人としてお仕えする方ですから」
「でも今は違うでしょ」
「それは……」
「いいから!ゲネルはわたしの事『様』呼び禁止ね!」
私にとってマリネッテ様は、公爵家のお嬢様で、主人で、傅いてお仕えする方で、足元に平伏して……。
「わかった?」
「はい」
ご主人さまの意に沿うことも大事な事でございます。
吸い込まれそうな煌めく紫水晶の瞳に間近で見つめられ、私は無意識に「はい」と返事していました。
その時、私の中の大事な部分が柔らかく甘くとろりと蕩けたような気がいたしました。
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私の家は、代々由緒ある公爵家にお仕えしております。
父は今代の執事長として、祖父は先代の執事長として、その前も、その前も。
当然私も次代のご当主様にお仕えすべく、日々鍛錬を積む日々でございます。
「あ、ゲネル」
長い黒髪を揺らしながら近付いてこられたマリネッテ様、次代のご当主様です。
マリネッテ様にはお兄様もおられるのですが、公爵家を継がれるのはマリネって様なのだと父より聞いております。
まあ、あの阿呆兄(決して馬鹿ではない)よりマリネッテ様の方が数万倍、いや数億倍、お美しく聡明でお仕えし甲斐があるというもの。
なので、私のご主人さまはマリネッテ様にございます。
「ごきげんよう、マリネッテ様」
左胸に軽く右手を当て頭を垂れご挨拶致します。
最近ようやくお屋敷に入ることを父に許され、こうして時折マリネッテ様のお顔を近くで見ることが出来るようになって、辛い鍛錬を頑張ってきて良かったと思えるようになりました。
手本は勿論父です。
「硬い。硬いわ、ゲネル」
「何がでございましょう?」
3つ年下で尚且同世代の子供より背が高い自身より頭一つ分ほど小さなマリネッテ様が、ピッと立てた人差し指を口元に当てて小首を傾げ、何やら私に苦言を呈していらっしゃる。
そんなお姿も一段とお可愛らしいですね。
「まだあなたもわたしも子供なんだから、わたしに『様』を付けて呼ばなくてもいいじゃない」
確かに、私もまだ子供なんですけれども。
父をそっくり真似する私にマリネッテ様はご不満なようです。
公爵家という家柄上、ここで働く使用人はメイドや料理人、庭師に至るまで全て一流の使用人。こちらにお仕え出来ることを何よりの誇りとしております。
自分の立場を弁えてお仕えしておりますが、どうもマリネッテ様にはそれが他人行儀に思えるらしく。
家業のお立場上、年頃の子息子女とのお付き合いもなく、私を除けばお兄様と弟君ぐらいしか同世代の子供が周りにいないのも関係あるのかもしれません。
「そうは参りません。あなたは私が主人としてお仕えする方ですから」
「でも今は違うでしょ」
「それは……」
「いいから!ゲネルはわたしの事『様』呼び禁止ね!」
私にとってマリネッテ様は、公爵家のお嬢様で、主人で、傅いてお仕えする方で、足元に平伏して……。
「わかった?」
「はい」
ご主人さまの意に沿うことも大事な事でございます。
吸い込まれそうな煌めく紫水晶の瞳に間近で見つめられ、私は無意識に「はい」と返事していました。
その時、私の中の大事な部分が柔らかく甘くとろりと蕩けたような気がいたしました。
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