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無感情な少年のお化け。

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 お化けになると、執念さえなければ大抵、それぞれがはっちゃける。
 けれどアリーナは気付いた。

 一人のお化けの存在。
 縮こまって体育座り。

「どうしたのー」
 アリーナは聞いてみた。
「僕が色々言うと、お母さんが怒って殴るんだ」
「えっ、そうなんだ。でも、お母さんいないから平気じゃない?」
「ううん。いい子にして、じっとしていなきゃいけないから」
「それって、いい子なの?」

 よくみたらアザだらけだ。

 虐待されたってやつだろう。
 お化けになっても、執念となって消えないでいるのだ。

 悲しいよね、お化けって。

 と、アリーナは思った。

「その無感情なのをブロックから外してやろうか?!」

「え? そんな事出来るって......、君の格好はどうあっても魔法使いだね」

「そうよ! 正真正銘の魔法使い!」
「そして、君は透明だね。回りの人は気付いていない」
「うん。異世界から来たから!!」
 少年はキョトンとするが、
「僕って、お化け?」
「そう」
 アリーナの言葉で、少年は縮まって、ほぼ無感情。
 そうして、また体育座り。

 アリーナも可哀想になってきた。

 アリーナは魔法を掛けると、少年はパッと明るくなった。

「あれ?! 僕ッてなんか元気になったよ!!」
「きっとこれがあなた本来の姿よ」

「うそだ!! 僕の性格を返して!」

「え?! そっち?!」
 アリーナはギョッとする。
「おかあさんが育ててくれた、僕の唯一の宝物を返して!!」

 虐待で殺されても、母親は絶対存在なのだ。

「え、え?!」

「僕を元に戻して!!」
 少年は懇願して、アリーナは仕方なく戻した。

「あー、これが僕なんだ」
 少年はほっとし、また体育座りになって、縮こまってしまった。 


  
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