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第85話汚れた水には変わりない

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 別に、ここで犯されても良いのではないか?

 死ぬよりはマシだ。

 それに私なんかが犯された所で所詮は既に汚れ腐った身体なのだ。

 今更であろう。

 こんな所で離婚した元夫に操を立てて何になると言うのだ。

 汚れた水に、同じ種類の汚れた水を注いだ所で汚れた水には変わりないではないか。

 そう、私の中の弱い部分の私が囁いてくる。

 その言葉に従って逃げるのを止めて楽になりたい。

 ほんの一時間耐え忍ぶだけではないか。

 そう思うのだが、もうそんな誘惑に負ける方がよっぽど苦痛であるしあの激高具合ではどの道殺されると、諦める考えを振り払い、殴られ蹴られたせいで体中痛みが走るのも構わずに這い逃げようとする。

 動くたびに口から口笛が吹けない人の吹く口笛の様な変な呼吸音が聞こえてくる。

「捕まえた。そんな状態で逃げれるとでも思っているのは滑稽だね。さぁて、腕を噛み千切りやがってどうしてくれようかな?」
「ぐふっ!?」

 しかし、満身創痍な状態で床を這って逃げれる訳もなく直ぐに追いつかれ、ドスンと背中から馬乗りされ、その衝撃が胸に激痛を走らせる。

「ねぇ? 俺はどうすれば良い?」
「痛っ!?」

 普通であれば腕を噛み千切られたら警察と救急車を呼ぶのが普通であると思うのだが激高してそこまで頭が回らないのか、それ以上に私へその怒りをぶつけたいのか、自分の悪事がバレる可能性があると冷静に判断して呼ばないのか、どちらにせよ地雷社員は警察も救急車も呼ぶつもりは無いらしく、私の髪の毛を掴み強引に持ち上げて身体をエビ反り状態にさせられる。

「君自身はどう思うのかね?」

 そんな時、私の前に人影が現れ、その人影は地雷社員へそう問い返す。

「は?」
「君自身はどう思うかと聞いているっ!!」
「ぐふへぇっ!?」

 その声の主はスーパーの店長であったらしく、某サングラスをかけたアニメキャラクターも驚きそうな程の怒声を地雷社員へ浴びせながらタックルの要領で私の背中に馬乗りしている地雷社員を吹き飛ばした後流れる様な動きとスピードで関節を固めて動きを封じる。

「警察っ!! 誰でも良いから警察を呼べっ!!」
「は、はいっ!!」

 そして店長の警察を呼べと言う叫び声に真面目社員君が震える指でスマホを操作して警察へ電話をかける。

「おかしいと思ったんだよ。こんな変な時間にお前が休憩を取るだなんてな」
「誤解ですっ! 見てくださいこの腕の怪我をっ!! むしろ襲われたのは僕の方ですよっ!!」
「お前の前の職場での悪行の数々を知られてないと思っていたのか?それにいくら嘘を並べても良いがこの休憩室には監視カメラもある。後でそれを確認させてもらえばお前の言い分が正しいかどうか分かるさ」

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