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第73話関わりたく無い目
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因みに先輩おばさんの仕込みから揚げまで手がけた唐揚げが一番柔らかくて美味しいと思うのだが、作り方のどこがどう違うのか未だに分からないでいる。
先輩おばさん曰く愛情が隠し味とわりと本気で言っていた。
そしてみんなで天丼を、小太りマダムは私達が天丼を作っている間に唐揚げも作って休憩室へと向かう。
時刻は昼のピークを少し過ぎた十三時半前後である。
ここからは夜のピークが来るまで回転率が悪くなる為どうしても皆同じタイミングで入る人が多い。
その関係で休憩室には長テーブルが三つ置かれており先客が、鮮魚コーナー担当や精肉コーナー担当達がそれぞれのグループで纏まっていたり、古株同士で纏まってパイプ椅子に座り各々テレビ見たり談笑したりしている。
そして私達はいつもの場所へ行くとパイプ椅子へと座り賄いをテーブルに置いて一息つく。
因みに決まってはいないのだが入り口から近い順に精肉コーナー、鮮魚コーナー、惣菜コーナーの人達が決まって座っており、テレビに近い席は古株が陣取っている。
しかしながら別段どの席もメリットデメリットはあるので皆不平不満は無いらしい。
一番前は直ぐに座れ直ぐに退室出来る代わりに扉開けた時の外気温をモロに喰らうので夏は暑く冬は寒い。
真ん中は二つのテーブルに挟まれて少し窮屈なのだが自販機とテレビが近い。
一番奥はそこまでたどり着くのに少し面倒なのだが夏は涼しく冬は暖かい。
といった感じだそうだ。
因みにレジや品出し係などの人達の休憩スペースはまた別の場所に作られていたりする。
そもそも私の休憩室の床まで油汚が染み込んでテカッているのを見るとなんと無く分けられている理由を察してしまう。
「ささ、食べましょ食べましょ。頂きます」
「お腹空きましたねー。頂きまーす」
「唐揚げが覚める前に早く食べてあげませんといけませんわね、頂きますわ」
「ハイッ、皆さん注目っ!」
そんな事を考えながらさぁ空きっ腹に天丼を入れていくぞと口を開けた瞬間、店長がそんな事を言いながら入って来るので休憩室の空気はピタッと止まり静寂が訪れる。
「今日は都心から転勤して来た社員さんがいるので先に紹介だけしておきます」
「皆様初めまして。本日初めてこの県へ配属されました───」
そして、店長の横にはスーツを着た男性が一人立っており、店長の合図でハキハキと元気良く爽やかな感じで自己紹介をしていく。
初めは好青年だなと好印象であったのだが彼はいつの間にか視線を私に向けて喋り始めていたのに勘付き、私の知っている、そして今一番嫌悪感を抱いている関わりたく無い目をしており、その左手薬指は銀色に光っていたのだった。
先輩おばさん曰く愛情が隠し味とわりと本気で言っていた。
そしてみんなで天丼を、小太りマダムは私達が天丼を作っている間に唐揚げも作って休憩室へと向かう。
時刻は昼のピークを少し過ぎた十三時半前後である。
ここからは夜のピークが来るまで回転率が悪くなる為どうしても皆同じタイミングで入る人が多い。
その関係で休憩室には長テーブルが三つ置かれており先客が、鮮魚コーナー担当や精肉コーナー担当達がそれぞれのグループで纏まっていたり、古株同士で纏まってパイプ椅子に座り各々テレビ見たり談笑したりしている。
そして私達はいつもの場所へ行くとパイプ椅子へと座り賄いをテーブルに置いて一息つく。
因みに決まってはいないのだが入り口から近い順に精肉コーナー、鮮魚コーナー、惣菜コーナーの人達が決まって座っており、テレビに近い席は古株が陣取っている。
しかしながら別段どの席もメリットデメリットはあるので皆不平不満は無いらしい。
一番前は直ぐに座れ直ぐに退室出来る代わりに扉開けた時の外気温をモロに喰らうので夏は暑く冬は寒い。
真ん中は二つのテーブルに挟まれて少し窮屈なのだが自販機とテレビが近い。
一番奥はそこまでたどり着くのに少し面倒なのだが夏は涼しく冬は暖かい。
といった感じだそうだ。
因みにレジや品出し係などの人達の休憩スペースはまた別の場所に作られていたりする。
そもそも私の休憩室の床まで油汚が染み込んでテカッているのを見るとなんと無く分けられている理由を察してしまう。
「ささ、食べましょ食べましょ。頂きます」
「お腹空きましたねー。頂きまーす」
「唐揚げが覚める前に早く食べてあげませんといけませんわね、頂きますわ」
「ハイッ、皆さん注目っ!」
そんな事を考えながらさぁ空きっ腹に天丼を入れていくぞと口を開けた瞬間、店長がそんな事を言いながら入って来るので休憩室の空気はピタッと止まり静寂が訪れる。
「今日は都心から転勤して来た社員さんがいるので先に紹介だけしておきます」
「皆様初めまして。本日初めてこの県へ配属されました───」
そして、店長の横にはスーツを着た男性が一人立っており、店長の合図でハキハキと元気良く爽やかな感じで自己紹介をしていく。
初めは好青年だなと好印象であったのだが彼はいつの間にか視線を私に向けて喋り始めていたのに勘付き、私の知っている、そして今一番嫌悪感を抱いている関わりたく無い目をしており、その左手薬指は銀色に光っていたのだった。
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