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第55話 逃がしてはならぬ超優良物件
しおりを挟むそしてマチルダ、ナターシャ、ペトラは『ごでぃ〇のちょこれーと』『こんびにスイーツ類』『ふ〇ーちぇ』を順に食べていくのだが、各々のその表情から食べたものが想像を超える美味しさであったであろう事が容易に想像できてしまうのが何だかおかしく思えてくる。
きっとわたくしも初めて日本の料理を食べた時、おそらく周りにいた使用人やソウイチロウ様は、今わたくしが感じているような、嬉しくもありもっと他の料理を食べさせて自慢したくもある、何とも言えない感情を抱いていたのであろう。
それでもやはり、嬉しさの方が勝るからこそ他の料理も食べて欲しいわけで……。
「挨拶が遅れて申し訳ない。わが領地まで長旅であっただろう」
「い、いえっ!! そんな事は……無いとは言えないのですけれどシャーリーに会えるのでしたらこのくらいの距離、短いくらいですわっ」
「そ、そうね……。他国へ嫁いだわけではないですもの。それと比べれば距離しか離れていないのであれば短いとも言えますね」
「それこそ私たちの誰かが他国へ嫁ぐ可能性もありますから、そうなる前にこういう機会を作っていただき感謝していますっ!!」
そして、三人はもっきゅもっきゅとお菓子を食べ始めたところでわたくしの自慢の旦那様であるソウイチロウ様がわざわざ顔を出してくれる。
ただの女子会であり、まだ三名とも婚姻していない為家との繋がりも弱く(別の家へ嫁いでしまう為)家主であるソウイチロウ様がわざわざ顔を出して挨拶する必要はないのだけれども、わたくしの顔を立ててくれる為にわざわざ挨拶をしに来てくれたようである。
こういう些細な気配りができるところも大好きな一つである。
他の方の話では自己中心的で自分が何事においても一番出ないと気が済まないという殿方もいると聞くので、わたくしの旦那様であるソウイチロウ様は絶対に誰にも渡してやるものか、と常にアンテナを張っているからこそ気づいてしまう。
わたくしの友人三名がソウイチロウ様に見惚れている事に。きっと『第二夫人として立候補しようかしら』とでも考えているのだろう。
なんせ顔は良し、男爵と言えども国王陛下の仲は良好、美味しいスイーツに幸せそうなわたくしときたら、逃がしてはならぬ超優良物件であるとわたくしだってそう思う。
最初は『危ない』だの『逃げた方がいい』だの『きっと後悔する』だのと言っていたのに……とは思うもののわたくしも嫁ぎに来る前、ソウイチロウ様に出会う前までは同じような事を考えて不安な日々を送っていたので他人の事は言えないのだけれども、何と言っても今はソウイチロウ様の妻なのでそこは見なかった事にしてわたくしは友人三人に牽制を撃つ事にする。
不意打ちになってしまう為ソウイチロウ様には悪いのだが、わたくしは友達に見せつけるようにソウイチロウ様の頬へとキスをする。
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