上 下
39 / 56

第39話 『ありがとう』と言ってやりますわ

しおりを挟む

 そんなわたくしを見たソウイチロウ様はパーティーへ出席したときのメリットを教えてくれる。

 恐らくソウイチロウ様はわたくしが、元婚約者と、その元婚約者がわたくしに行った行為にトラウマを抱いていると思っているのであろう事が窺えてくる。

 確かに、婚約破棄された当初であれば、トラウマまではいかないまでも会いたくない、顔も見たくないと思っていた事だろう。

 しかしながらわたくしはあのころとは違うのである。

 今のわたくしはソウイチロウ様の妻であり、それはシノミヤ家当主の妻でもあるのだ。

 であるのならば、わたくしの『苦手な人がいるから行きたくない』という子供のようなわがままでパーティーを欠席するというのはあり得ない。

 それが、苦手な人が開くパーティーであればそういう理由で欠席するのもありだとは思うのだが、国王陛下自らが開くパーティーであるのであれば猶更そういう理由での欠席はあり得ないだろう。

 おそらく今回のパーティーは国王陛下が開くという事からも息子であり王位継承権を持つシュバルツ殿下の新しい婚約者のお披露目である可能性が高いとは思うのだけれども、それがなんだと言うのだ。

 むしろわたくしの夫であるソウイチロウ様を見せつけるくらいの気概で行くべきであろう。

 それに、その他貴族にもこの着物の美しさを見せつけてやりたいという気持ちもある。

 そしていかに今のわたくしが恵まれている環境であるかを見せつけて、ソウイチロウ様の元に嫁いだ事が罰にすらなってなく、むしろそのお陰でわたくしは幸せになっているのだと知った時のあの人たちの表情を見てみたとも思ってしまう。

「大丈夫ですわ。 わたくしはそのような理由で国王陛下が催すパーティーに行きたくない等という女性にはなりたくありませんわ。それにわたくしは見せつけてやりたいという気持ちも少なからずございます。今わたくしはあなた方のお陰でソウイチロウ様という最高の旦那様の元に嫁ぐ事ができたんだぞっ!! と。ソウイチロウ様の元に嫁がなければ体験できなかった様々な出来事や、出会う事が無かった様々な食事、そ、そ、そして、その、も、ものすごく美しくてカッコいいソウイチロウ様の妻になれたんですもの。確かにあの時わたくしにした行為自体は腹は立つものの、あの日一方的に婚約破棄をされなければわたくしはソウイチロウ様の妻になるどころか出会う事も無かったでしょうし、これでも感謝はしておりますわ。なので、あの者たちと出会ったその時は『婚約破棄していただきありがとう』と言ってやりますわっ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

【完結】婚約者と幼馴染があまりにも仲良しなので喜んで身を引きます。

天歌
恋愛
「あーーん!ダンテェ!ちょっと聞いてよっ!」 甘えた声でそう言いながら来たかと思えば、私の婚約者ダンテに寄り添うこの女性は、ダンテの幼馴染アリエラ様。 「ちょ、ちょっとアリエラ…。シャティアが見ているぞ」 ダンテはアリエラ様を軽く手で制止しつつも、私の方をチラチラと見ながら満更でも無いようだ。 「あ、シャティア様もいたんですね〜。そんな事よりもダンテッ…あのね…」 この距離で私が見えなければ医者を全力でお勧めしたい。 そして完全に2人の世界に入っていく婚約者とその幼馴染…。 いつもこうなのだ。 いつも私がダンテと過ごしていると必ずと言って良いほどアリエラ様が現れ2人の世界へ旅立たれる。 私も想い合う2人を引き離すような悪女ではありませんよ? 喜んで、身を引かせていただきます! 短編予定です。 設定緩いかもしれません。お許しください。 感想欄、返す自信が無く閉じています

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

継母と元婚約者が共謀して伯爵家を乗っ取ろうとしたようですが、正式に爵位を継げるのは私だけですよ?

田太 優
恋愛
父を亡くし、継母に虐げられ、婚約者からも捨てられた。 そんな私の唯一の希望は爵位を継げる年齢になること。 爵位を継いだら正当な権利として適切に対処する。 その結果がどういうものであれ、してきたことの責任を取らせなくてはならない。 ところが、事態は予想以上に大きな問題へと発展してしまう。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

処理中です...