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第35話 目の付け所が良いな
しおりを挟む「うん? あぁ、もちろん。むしろいつでも教えてくれた方がありがたいから遠慮せずに教えて欲しい」
そしてソウイチロウ様はそう言うとわたくしの頭を撫でてくれるではないか。
「あ、ありがとうございます……っ」
何とか感謝の言葉を絞り出すのだが、内面はガッツポーズをして喜んでいるわたくしがいる。
これでいつでもわたくしの想いをソウイチロウ様へと伝える事ができるという言質を取ったという事である為嬉しくない訳が無い。
しかしながらいざわたくしの今抱いているソウイチロウ様への恋心を伝えようするところを想像するだけで、わたくしの喉は張り付き、声が出なくなる為実際に伝える時は想像以上の勇気を振り絞る必要があるだろう。
それでも、女性から男性へ想いを伝えたり気持ちを伝える事をはしたないと叱るのではなく、ちゃんと汲み取って受け止めてくれるソウイチロウ様の器はやはり、わたくしが想像している以上に大きいのだなと思う。
一方的なやり取りではなく、互いに思いやり意思疎通をするというのがこれ程まで心地良いものだと知ってしまっては、もうシュバルツ殿下の婚約者には戻れないだろう。
不敬ながらもわたくしはそんな事を思いながらソウイチロウ様と手を繋ぎショッピングモールを周る。
衣服が売られているお店や本が売られているお店、ペットが売られているお店に雑貨が売られているお店、お金を払って遊具を遊ぶ事ができるお店に玩具が売られているお店。
そのどれもが新鮮で、世界は輝いているように思えたのだけれども、わたくし一人で来たとしても恐らくここまで楽しめる事は無かっただろう。
やはりソウイチロウ様と一緒だからこそ輝いて見えたのだろうし、これからもこういう毎日が続けば良いなと思う。
そんなこんなで結構な距離を歩いた為今現在はソウイチロウ様と共に喫茶店で小休止をする為に二人で入店する。
「いらっしゃいませっ」
そんなわたくし達に店員さんが笑顔で挨拶をしてくれながら空いている席へと案内してくれる。
「どれにするって、初見では分からないか」
そしてソウイチロウ様はそう言うとメニューをわたくしの方へ向けて開き、デザートとドリンクの種類ごとに説明してくれる。
その中でわたくしは温かいパイの上に『そふとくりーむ』という牛の乳で出来た氷菓子と、『かかお』という豆(正確にはタネらしい)からできた『ちょこれーと』なるソースがかかったデザートと、『めろんそーだ』という緑色をした飲み物を注文する事にする。
「ふむ、それを選ぶとはなかなか目の付け所が良いな。ただこのデザートは量がかなり多いから俺と分けて食べる形でも良いか?」
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