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第62話 だからこそ勇者や聖女と言った者達が現れるのだ

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 そもそもこのメンバーはマオの強さを肌で感じた事のあるメンバーである為にただの人間ではどうしようも無いという事を理解させられていた。

 それこそ勇者や聖女、または魔王では無いと倒せない事を思い知らされたし、だからこそ勇者や聖女と言った者達が現れるのだと理解させられたのである。

 そして今現在聖女と謳われている者は二人とも何故か勇者ではなく魔王と共に行動をしているという事の恐ろしさも。

 この前代未聞の異常とも言える事態に今更勇者が現れるのを待つなどという悠長な事を言える訳もなく、最早ここにいる者達にはランゲージの言う様に魔王に頼るという選択肢しか残されていないのだと意を唱える者は現れなかった。





「で、俺が呼ばれたと」

 辺りを見渡すと恐怖からか脂汗をかく者震える者青ざめる者祈る者それら全てをする者が見える。

 皇帝として長らくこの帝国を数多の魑魅魍魎から守ってきたと自負している我ですら恐ろしいという感覚を感じているのである。

 他のものがその恐怖心を表に出してしまうのは致し方ない事であると分かってはいるのだが、やはり今目の前の魔王に対して恐怖心を露わにするのは悪手であると言わざるを得ない。

「お父様も、同じ考えなのですか? お父様もマオに、わたくしの恩人に同族殺しの罪を犯せと、その様に思っているのですの?」

 そして怒りを隠す事もせず同族殺しの件を問い詰める言葉が聞こえて来るのだが、それは意外にも魔王では無く聖女である人間の娘であった。

「ああ、そうだ」

 そして問い詰められたランゲージ家の、聖女の実父であるという男性は他のもの達と違い臆する事なくはっきりと、そうであると娘である聖女に言い返す。

「お父様はっ───」
「分かりました、良いでしょう。魔王討伐の任、受けさせて頂きます」

 恐らくこの娘は魔王に対してこれほどまで反発してしまう程の恩を感じているのであろう。

 その事が娘の態度と恩人であるという言動から窺える。

 だからこそ娘は恩人である魔王に対して仇で返す様な発言をしている集団の中に実父がいる事が信じられないと問い詰めようとするのだがそれを魔王本人が遮ると同族殺しである魔王討伐を受けると申してくれるではないか。

 この事にここにいるもの達、そして何よりも聖女である娘は驚きを隠さないでいた。

「な、何でですのっ!? 今回の件はマオが抱える問題では無くて帝国に住む者達の問題ですのよっ!? 被害が出そうな周辺諸国ならまだしも全く関係ないどころか同族殺しとなってしまうマオはやる必要など無いですのよっ!?」
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