上 下
9 / 36

第9話 未成熟故に許されるこの甘さ

しおりを挟む


 その事を理解しているのかレヴィア・ド・ランゲージも先ほどから悔し気な目線を俺に突き刺して来る。

 前世と合わせて五十と少し。

 世間をまだ知らない親の扶養から抜け出していない小娘一人を悪知恵であしらう事なぞ造作もない。

 そんな小娘を騙すような事をして恥ずかしくないのかと思わなくもないが、それ以上に天才とやらに八つ当たりをしたいという気もちの方が強かったから仕方がない。

「ぐぬぬぬ………」
「じゃ、俺は家で待ってる人がいるだろうから帰るわ。お前も気を付けて帰るんだぞ」

 確かに、少しは大人げないとは思うもののだからと言って正体、自分を白鳥だと疑わなかったアヒルの子だと教えるつもりは無いし、何より家では美人奴隷がご飯を作って待ってくれているだろう。

 途中でお預け状態だったから早く帰って続きをしたいという欲もある。

「待ちなさいっ! さっ、再戦を希望しますっ!」

 そして何ごとも無かったかの如くそそくさと帰ろうとする俺をレヴィアが呼び止め、あろうことか再戦を申し出る。

 どこまでも青臭く、空気の読めない、しかしまだ未成熟故に許されるこの甘さ。

 それを苛立ちのままに頭からねじ伏せる。

「お前、大人を馬鹿にするのも大概にしろ。お前だって言いたくない過去の一つや二つあるだろうが」
「ひぅっ……」

 いきなり放たれた殺気と攻撃的な言葉と声音にレヴィアは一瞬小さく悲鳴を上げ萎縮するのが見える。

 これでレヴィアには教育という名の躾が出来たと踏んだ俺は一転、柔らかな雰囲気にシフトチェンジするとレヴィアに近づき頭を乱暴に撫でてやる。

「分ったんなら大人をあんまりからかうもんじゃないぞ」

 そしてこの件については終わりというニュアンスを含ませた言葉をやさしく投げかけてやる。
 
 そして俺は悔し気な、しかしどことなく顔を赤らめている彼女を闘技場に残し今度こそ家路につく事にする。

 学園を出て徒歩三十分。

 自転車があれば十分、車であれば五分もかからない距離なのだが歩くと意外と遠い距離を寄り道をすることもなく真っすぐと家路につく。

 この一年少しづつではあるが貯めてきた貯金を使い夏が来る前に馬でも買おうか、買うとすればどんな馬を買おうか、今年の夏は我慢するとして飼いならす為に仔馬を買うか、調教の必要のないすぐ乗れる若い馬を買うか、扱いやすい歳をある程度とった馬を買うか悩みながら歩を進めいると、気付けば大枚はたいて買った築40年の木造で創られた二階建ての我が家が視界に見えて来る。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...