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第265話近いうちにこの街から出るだろうな

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 だからこそビンセントは自分の生徒に仕切りに強さこそが正しさと教えて来たのだろう。ある意味その差がレニア達の敗因である事は間違いない。

 生き残る強さを教える武術とスポーツとして教える武術の差とでも言えばしっくり来る。

 すなわちレニア達の敗因の一番の原因はクロだろう。

 ビンセント・モルツは本気で生徒達、そしてこの世界の理不尽さと向き合いその理不尽な出来事を跳ね返し生き残れる強さを教え、かたやクロは試合に勝つ方法、あくまでも生死とは一線引いたところでレニア達を指導していたのだ。

 結局未だ向こうの世界の常識を引きずっている自分に心底嫌になる。

 頭では分かっていても分かっているだけだったのだろう。

「まぁ、お前の弟子達を見れば俺もお前がどういう奴なのかある程度は理解出来るからな……ただ俺は個人で生きてく強さを教えお前は仲間と生きてく強さを教えて今回はたまたま俺の生徒が勝っただけだ」

 だから今回の事は気にするなと言ってくれたビンセント・モルツだからこそクロの生徒は負けたのだろう。



◇◆◆◇



「「「お師匠様すみませんでしたぁっ!!」」」

 本日何度目かの謝罪を涙と鼻水でくしゃくしゃになりながらクロに詫びるとその顔をクロの胸になすりつけるレニア達の姿がここ居酒屋七剣伝にあった。

 これでもまだマシな方で試合が終わった後数時間は声にならない声でただただ泣いていたのだからクロに詫び鼻水まみれに出来るようになっただけマシになったといえよう。

 いや、これはこれでクロにとっては逆に良くないのだが。

「別に謝るようなことではないだろう。むしろたった半年という期間で良く決勝まで駒を進めてくれたお前達を俺は誇らしく思うよ」
「「「お師匠様ぁっ!!」」」

 そしてクロが何か言う度に涙と鼻水をなすりつけて来るのだからもはやクロの服と彼女達の顔はR15指定のラインを一直線で駆け抜けるポテンシャルを秘めている事だけは確かである。

「それでクロはこれからどうするつもりなのです?正式な講師として学園に残るのですか?」
「そうだな……多分近いうちにこの街から出るだろうな……」

 そんな中サラがクロにこれからの活動を聞いて来たのでこの街から出る事を告げるとレニア達以外、サラを含めクロの彼女達はさして驚く様子も見せないのでクロからすれば違和感を感じ得ない。

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