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第264話これじゃ誰の師匠かわかったもんじゃねーな

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 しかし、クロの発言には一言言い返さなければ気が済まない。

「たかが学生の試合では無くわたくしにとってはこの試合は命を賭けてっも良いと思えるひと試合なのですわ。先程の言葉撤回してください」

クルムが真っ直ぐな目をクロに向けそう言った瞬間クルムの頬から乾いた音が闘技場に短く鳴り響く。

「っ!?な、なんで貴方に叩かれなくては……っ」

 いきなりクロに叩かれ一瞬クルムは何をされたのか理解できていなかったのだが理解して行くとともにクロに怒声を上げようとするのだが悲しみと後悔と未練と諦めがなどが入り混じった表情で泣くのを我慢し、しかしそれでも溢れる涙を零すまいとするクロの姿を見てしまい、言葉に詰まってしまう。

 他人に説教垂れる死に方してないんだがな……。

 そう思うもクロはクルムの目を見て話し出す。

「こんな大会で負けても最悪死にはしないだろ?そのスキルはそんな時に使う為にお前の師匠が託した訳では無いはずだ。こんな世界だからこそ自分の為ではなく誰かの為に使う為に君達に託されたスキルなんじゃ無いのか?まぁ、……クルムの気持ちも分からないでは無いがな」

 そう言うとクロは優しく微笑むとクルムの頭をガシガシと撫でてやるとクルムはクロの胸に顔を埋め声を押し殺して泣きだしてしまい、今度は優しくクルムの頭を撫でてやる。

「全く…これじゃ誰の師匠かわかったもんじゃねーな、大魔王さんよ」
「はは……まぁ、貴方がどの様な方かって事はクルム達の戦い方を見ればある程度分かりますし、道を外す若者がいたらちゃんと叱るのは誰の師匠とか関係なく大人の仕事だと思いますから」

 クロの言葉を聞きお前もまだガキじゃねぇかとクルムの師匠ビンセント・モルツは思ってしまうのだがクロの考えと自分と自分の考えが同じである事と、クロの表情をみてあえてそこは言わないでおく。

 その表情を見てクロもまた少なからず自分と同じ境遇にあったのだと分かってしまう。

 自分の命を失ってでも守りたかった者がいたであろクロの表情を。

 この世界は力が全て……それは結局向こうも同じで法律という一種の力で社会の秩序を保っていた。

 ここではそれが上手く機能しないから腕力に限った話ではなくあらゆる面でそれに見合った強いものが正しい……勝てば官軍負ければ賊軍がまかり通る世界。
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