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第256話クロの貞操を奪うための恐喝

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「えー……ちょっとくらい大人のスポーツをするぐらい良いじゃない、お兄ちゃん。大丈夫、私未経験だから!」

 そしてそのアーシェはクロを先ほどよりも少し強く後ろから抱き締めるとほぼ隠しきれていないド直球を放り投げて来る。

 未経験だからなんだと言うのだ。問題なのは、それがアーシェかアーシェじゃないかなのだから。

「お兄ちゃん、彼女と婚約者と奴隷と家臣と保護してる合法ロリ……一体何人の女性を囲えば気が済むのかな?私は何人囲おうと一向に構わないんだけどお兄ちゃん的にどうなのかな?」

 クロの耳元でアーシェがクロにだけ聞こえる声で話しかけてくる。

 その行為を見て他の女性陣は羨ましそうに、もしくは怒りの籠った目で二人を眺めているのだがクロからしてみれば見るだけではなく素直にこの状況から助けてほしい限りである。

 アーシェが放った言葉はもはや脅しでありクロの貞操を奪うための恐喝である。

 なのでこの危機的状況を作り出したのはクロではなくアーシェ・ヘルミオネであり決して四人の女性と交際し、二人の女性と婚約し、女性奴隷を一人栫、合法ロリの保護者であるからでは断じてないと先に言っておこう。

 そう、悪いのは俺じゃない。

「奥さんと娘……特に奥さんに今のクロの現状を明確に分りやすく伝える魔術ってないのかな?お兄ちゃん」

 そしてなおもアーシェはクロの耳元で、脊髄に響き脳の奥が震えるような妖艶さで話しかけてくる。

 中身がアーシェでなければ一瞬でクロの理性はなくなっていただろう。

「……」
「この武術大会が終わったら待ってるからね。これ以上は私待てないから何しでかすか分らないから」
「……分った」

 その瞬間のアーシェの表情は一生忘れることができないくらい美しかった。


◇◆◆◇


 エシリアは考えていた。

 大会で一勝できたとはいえ所詮たかが一勝である。

 私たちからすれば大きい事なのだか周りからすれば小さなことであることは分っているし理解もしていた。

 しかし師匠であるクロ・フリートからもう少し何かあってもよかたのではないか?


 私たちの今までの苦労を口頭によるものではあるが知っているのである。

 であるならばもっと大々的に祝ってくれてもよかったのではないのかと、思ってしまう。
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