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第37話クロの腕を咄嗟につかむ

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 泥酔したミイアとミイアの妹たちを寝かした部屋で一人ため息をつく。

 今ミイアが泥酔の末眠っているとい事は今日はチャンスなんじゃないのだろうか?
 そう思うと自然と心臓が高鳴りだし緊張のためかため息が出てしまう。

 ミイアの今までの苦労を知っている為たとえ夜這いする勇気があったとしても彼女に遠慮してしまい私は譲ってしまうのだろう。

 だというのにこの身体は今がチャンスだというのに緊張ですくんでしまいまっすぐ歩く事もできないだろう。立っているだけでも辛い。

「すー…はー…」

 それでも、なけなしの勇気を振り絞ってクロの部屋へと歩き出す。

 夜這いは恥ずかしすぎるのだが、クロがいないうちにクロの布団へ潜り込むぐらいはなんとかできそうだ。

 緊張と恥ずかしさでいうことを聞かない身体をなんとか動かしクロにあてがわれた部屋へ入り、その部屋の布団へと潜り込み息を潜める。

 心臓が壊れたみたいに鼓動する。

 部屋の外まで私の心臓の音が聞こえているかもしれない。

そう思うとさらに緊張感と恥ずかしさでさらに心臓の鼓動が激しくなる。

 そもそも今私がやっている事は男性であるクロのやるべき事なのではないのか?とも思うがクロの生まれ育った国では両思いでなければそういう事をしてはいけないのだという。

 そのため私とミイアは婚約止まりなのだが、彼曰くもし間違いがあった場合男性はその責任を取らないといけないらしい。

 ならこちらからその間違いを犯す為に今こうしているのだ。

 クロの気持ちは結婚してから徐々に私に惚れさせればいいだろう。

 むしろこれが私が生まれ育った男女の関係であり常識なのだ。

 しかし、もしここまでして断られたら、クロに軽蔑されたらと思うと今この場所から逃げ出したくなる。

 そうだ。こんなことはやめよう。わざわざクロに嫌われるような事をしてなんになるのだ。

 クロに嫌われるかもしれないと思い、それが怖くてたまらなくなったメアは今すぐこの場から退散しようとしたら誰かが布団の中に入って来ようとし、しかし途中で布団に入るのをやめると中を確認するために布団を剥ぎ取る。

「何をしてるんだ…? いやいい。言わずとも解る」

 布団を剥ぎ取った人物はやはりクロであった。

 彼が私を見る目は冷たく思え、口からでる言葉は諦めや落胆という感情を感じる。

 嫌われた。

 そう思った。

 そして私からゆっくりと遠ざかろうとするクロの腕を咄嗟につかむ。行かないで、嫌いにならないで、と想いを込めて。
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