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第72話私も罪な女である4

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 親の車に揺られて数十分。

 少し小高い山上にある、私たち家族が毎年言っている神社についた。

 というより、ここら地位域に住んでいる人達はまずこの神社へ初詣に行くと言っても過言ではない神社だ。

 その為神社は既に人でごった返しており、初詣の為の賽銭箱に向かう道には長蛇の列が出来ていた。

「寒いだろ?」
「うん、あっ……もうっ」

 そして、私たちも賽銭箱へと並ぶ有象無象達と同じように列へと並び、ゆっくりと歩を進めていると、急に水樹が私の手を握ったかと思うと、彼のコートのポケットへ入れてくれる。

 どこの小洒落た恋愛ソングの歌詞だよっと思うものの、コレはコレで良いものだ。

 きっと、今この光景を昔の私がみたら「バカ言ってんじゃやないよっ!! 爆発しろっ!!」と言われそうだ。

 人間、たった一年と少しでここまで変わるんだぞと過去の自分に自慢してやりたい。

 だから、頑張れ、過去の自分。

 そんな事を思っていると、周囲が少しずつ騒ぎ出す。

 どうやら新年のカウントダウンが始まったようである。

 スマホを取り出して時刻を確認すると『23:58』と、私を後ろから抱きついてくる水樹とのツーショット写真の待受画面に映っていた。

 あと一分と少し。

 あと一分。

 あと三十秒、十秒、五秒──

 ああ、今年が終わる。

 そして周囲は歓声に呑まれ、私は視界いっぱいにある水樹の顔と、唇に感じる柔らかい感触で新年を祝福するどころではなかった。

「去年はキスで終わって、今年はキスで始まったな」
「うっ……っ」
「う?」
「うっさいわっ!! このスケコマシっ!! 女たらしっ!! ジゴロっ!!」
「うっわ、酷い言われようだな。 でも美奈子以外の女性にはこんな事はしないしした事ないし、未来もしないんだが?」
「当たり前だっ!!」

 ほんっっっっとうにコイツはっ!!

「でも、ぶっちゃけ良かった。 私の乙女心ポイント的には満場一致で満点が出るくらいにはっむぐぅっ!?」
「ごめん、照れている美奈子がめっちゃ可愛かったからもう一回したくなった」

 コイツ、本当に私だけなのかと疑いたくなるような行動力なのだが、むしろ私の大人な色気が水樹をそうさせているのであろう。

 まったく、私も罪な女である。

 そして、女として求められるのは、なんだかんだで嬉しいもので、口では「やめなさい」だとか何だと言う割には口元がどうしてもニヨニヨしてしまう。

「ああああぁぁぁぁあぁぁぁぁああっ!!!! お姉ちゃんだけずるいっ! 卑怯っ! 私だけ除け者っ! 私、可愛そうっ! だから私にもキスを求むっ!!」

 そして、今年一年も騒々しい一年になりそうだと、そう思うのであった。
 
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