72 / 95
第72話私も罪な女である4
しおりを挟む
親の車に揺られて数十分。
少し小高い山上にある、私たち家族が毎年言っている神社についた。
というより、ここら地位域に住んでいる人達はまずこの神社へ初詣に行くと言っても過言ではない神社だ。
その為神社は既に人でごった返しており、初詣の為の賽銭箱に向かう道には長蛇の列が出来ていた。
「寒いだろ?」
「うん、あっ……もうっ」
そして、私たちも賽銭箱へと並ぶ有象無象達と同じように列へと並び、ゆっくりと歩を進めていると、急に水樹が私の手を握ったかと思うと、彼のコートのポケットへ入れてくれる。
どこの小洒落た恋愛ソングの歌詞だよっと思うものの、コレはコレで良いものだ。
きっと、今この光景を昔の私がみたら「バカ言ってんじゃやないよっ!! 爆発しろっ!!」と言われそうだ。
人間、たった一年と少しでここまで変わるんだぞと過去の自分に自慢してやりたい。
だから、頑張れ、過去の自分。
そんな事を思っていると、周囲が少しずつ騒ぎ出す。
どうやら新年のカウントダウンが始まったようである。
スマホを取り出して時刻を確認すると『23:58』と、私を後ろから抱きついてくる水樹とのツーショット写真の待受画面に映っていた。
あと一分と少し。
あと一分。
あと三十秒、十秒、五秒──
ああ、今年が終わる。
そして周囲は歓声に呑まれ、私は視界いっぱいにある水樹の顔と、唇に感じる柔らかい感触で新年を祝福するどころではなかった。
「去年はキスで終わって、今年はキスで始まったな」
「うっ……っ」
「う?」
「うっさいわっ!! このスケコマシっ!! 女たらしっ!! ジゴロっ!!」
「うっわ、酷い言われようだな。 でも美奈子以外の女性にはこんな事はしないしした事ないし、未来もしないんだが?」
「当たり前だっ!!」
ほんっっっっとうにコイツはっ!!
「でも、ぶっちゃけ良かった。 私の乙女心ポイント的には満場一致で満点が出るくらいにはっむぐぅっ!?」
「ごめん、照れている美奈子がめっちゃ可愛かったからもう一回したくなった」
コイツ、本当に私だけなのかと疑いたくなるような行動力なのだが、むしろ私の大人な色気が水樹をそうさせているのであろう。
まったく、私も罪な女である。
そして、女として求められるのは、なんだかんだで嬉しいもので、口では「やめなさい」だとか何だと言う割には口元がどうしてもニヨニヨしてしまう。
「ああああぁぁぁぁあぁぁぁぁああっ!!!! お姉ちゃんだけずるいっ! 卑怯っ! 私だけ除け者っ! 私、可愛そうっ! だから私にもキスを求むっ!!」
そして、今年一年も騒々しい一年になりそうだと、そう思うのであった。
少し小高い山上にある、私たち家族が毎年言っている神社についた。
というより、ここら地位域に住んでいる人達はまずこの神社へ初詣に行くと言っても過言ではない神社だ。
その為神社は既に人でごった返しており、初詣の為の賽銭箱に向かう道には長蛇の列が出来ていた。
「寒いだろ?」
「うん、あっ……もうっ」
そして、私たちも賽銭箱へと並ぶ有象無象達と同じように列へと並び、ゆっくりと歩を進めていると、急に水樹が私の手を握ったかと思うと、彼のコートのポケットへ入れてくれる。
どこの小洒落た恋愛ソングの歌詞だよっと思うものの、コレはコレで良いものだ。
きっと、今この光景を昔の私がみたら「バカ言ってんじゃやないよっ!! 爆発しろっ!!」と言われそうだ。
人間、たった一年と少しでここまで変わるんだぞと過去の自分に自慢してやりたい。
だから、頑張れ、過去の自分。
そんな事を思っていると、周囲が少しずつ騒ぎ出す。
どうやら新年のカウントダウンが始まったようである。
スマホを取り出して時刻を確認すると『23:58』と、私を後ろから抱きついてくる水樹とのツーショット写真の待受画面に映っていた。
あと一分と少し。
あと一分。
あと三十秒、十秒、五秒──
ああ、今年が終わる。
そして周囲は歓声に呑まれ、私は視界いっぱいにある水樹の顔と、唇に感じる柔らかい感触で新年を祝福するどころではなかった。
「去年はキスで終わって、今年はキスで始まったな」
「うっ……っ」
「う?」
「うっさいわっ!! このスケコマシっ!! 女たらしっ!! ジゴロっ!!」
「うっわ、酷い言われようだな。 でも美奈子以外の女性にはこんな事はしないしした事ないし、未来もしないんだが?」
「当たり前だっ!!」
ほんっっっっとうにコイツはっ!!
「でも、ぶっちゃけ良かった。 私の乙女心ポイント的には満場一致で満点が出るくらいにはっむぐぅっ!?」
「ごめん、照れている美奈子がめっちゃ可愛かったからもう一回したくなった」
コイツ、本当に私だけなのかと疑いたくなるような行動力なのだが、むしろ私の大人な色気が水樹をそうさせているのであろう。
まったく、私も罪な女である。
そして、女として求められるのは、なんだかんだで嬉しいもので、口では「やめなさい」だとか何だと言う割には口元がどうしてもニヨニヨしてしまう。
「ああああぁぁぁぁあぁぁぁぁああっ!!!! お姉ちゃんだけずるいっ! 卑怯っ! 私だけ除け者っ! 私、可愛そうっ! だから私にもキスを求むっ!!」
そして、今年一年も騒々しい一年になりそうだと、そう思うのであった。
19
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる