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番外編など
冬の朝の幸せと。子供たちはすでに全力で遊んでいました。
しおりを挟むしんとした空気に目が覚めました。
身を起こしてカーテンに手を伸ばします。
窓から庭を覗くとやっぱり外には雪が積もっていました。
昨晩の降り様からもしかしてと思いましたが、一晩で結構積もりましたね。
子供たちが目を覚ましたら大喜びで雪遊びを始めそうです。
私も幼い頃は兄と一緒に雪で動物を作ったり雪玉を投げ合ったりしたものでした。
リオンやルイスと一緒に作ってみるのも楽しそうです。
イクスさんは雪遊びしたことあるのかしら。
隣に眠る恋人の顔を見降ろします。珍しく私の方が早起きだわ。
私が身を起こしたことでできた隙間から冷気が入るのが辛いのかわずかに眉を顰めて布団を引っ張っています。
――かわいい。
いつもは落ち着いていて頼りがいがあるところしか見ないので貴重な顔です。
寝ているときの無防備な表情を胸の中に描き留めているとイクスさんの腕が私の腰に回ってきました。
温かいです。
布団を被ったまま一番暖かい場所を探すようにもぞもぞしています。こうした姿を見る限り、イクスさんは寒いのが苦手なのでしょうね。
昨夜訪ねて来てくれたときはそのようには思わなかったのですが、装備品を付けているときとは違うものでしょうか。
起きたらそれも聞いてみましょう。
でも今は……。
寒がりな恋人にくっついて二度寝する幸せを堪能しようと思います。
布団の中に戻ると冷気を纏った肌を抱き寄せて熱を分け与えてくれました。
外に出ていたのは短い間だからかすぐに温まります。
いつもは大きな腕で包むように抱きしめてくれますが、今日は私の胸に額を押し当て肩を丸めています。
肩を包むように両腕を回すとほんの少し肩から力が抜けた気がしました。
寒いの、本当に嫌なんですね。
かわいい!という思いのままにきゅっと腕に力を籠めると背中に回った腕にぎゅっと抱き寄せられました。
少し熱いくらいの温度の中、沈んだり浮んだりする意識が段々と深いところへ沈んでいきます。
完全に意識が沈み切る前、腕の中の大きな身体が身じろいだような……。そんな気がしました。
二度目の目覚めを迎えるとイクスさんの顔が目の前にありました。
茶色い瞳がこちらを見ていて、私と視線が合うとやわらかく細められます。
「おはようございます、レイン」
「イクスさんおはようございます」
触れ合うだけのキスをしてどちらともなく身を起こします。
そういえばイクスさんはいつも私が目覚めるまで待っていてくれますね。
髪を整えながらひとつ気がついたことに口元をほころばせます。
私の様子に気づいたイクスさんにどうしたのと聞かれます。気分が良さそうだねと。
幸せな目覚めだったからかしら、と告げるとどこか面映ゆそうな顔を見せます。
身支度を整え朝食を取るために部屋から出ると、窓の向こうに立派な雪像が見えました。
あれはこの前図鑑で見たクラーケンを模したものでしょうか。
離れたところから見てもそうとわかる程度によくできています。
子供たちはすでに全力で遊んでいたようですね。
はしゃぐ声と雪の上を駆け回る音が聞こえてきます。
私を見つけたリオンとルイスが一緒に遊ぼうと駆け寄ってきました。
朝食を食べたらねと約束をして食堂へ向かいます。
イクスさんもじっとしていると寒いので外で身体を動かしたいと言っていました。
参加決定ですね。二人が喜びます。
雪投げでしたらイクスさんにはきっと敵いません。
みんなで入れる雪の家でも作りましょうか。
料理長に後で暖かい物を出してもらえるよう伝えておきます。
そうだ、兄も引っ張ってきましょう。たまには身体を動かした方がいいと思います。
みんなで一緒に遊んで。疲れて休んで。
たまにはそんな日があってもいいですよね。
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