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17 経緯の説明
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全てを話し終えたアルフレッドを見てお父様が複雑そうな表情を浮かべる。
アルフレッドは緊張した面持ちで申し訳ありませんでした、と言ってまた頭を下げた。
ソフィアが謝らなくていいと言ってもアルフレッドはずっと気にしていたんだと思う。
でもそんなに緊張しなくてもお父様は弟の咎を兄に負わせるような人じゃない。
お父様がソフィアを見たのでにっこり笑って見せる。
良い人でしょう?そんな内心が伝わったのかはわからないけれど、お父様も幾分か表情を和らげた。
「顔を上げてくれ、アルフレッド君。
話はよくわかった。 君の弟さんがソフィアが手に入れた青光石を持ち去ってしまった。
そして目撃情報から王都に向かったと予想して王都までやって来たということだね?」
「はい、その通りです」
「ふむ……。
では私から言うことはひとつだな、弟さんを探すために私たちも助力することを約束しよう」
お父様からはソフィアの予想通りの言葉が出てきた。
でもアルフレッドはまだ言われたことを上手く捉えられていないみたい。
「え?」
「君が強く責任を感じていることは私にも伝わっている。
しかし君が責任を負うべきではないとも思う」
ソフィアも同意見だった。
家族だからといって全ての責任を負う必要はない。
「もちろん工房の方向性で意見が分かれたというのも行動の理由の一つだろうがね。
しかしそれなら自分で販路を探すことや別の工房に弟子入りすることも選択肢として存在したはずだ。
犯罪行為に走らずともいくらでも彼は道を選べた、そうだね?」
「はい……」
アルフレッドが唇を噛む。
そんな選択肢があったことを示してやることも出来なかったと悔やんでいるように見える。
「本来それは親方の仕事だ、君の工房で言うなら父親がその役割を担っていたのだろう」
お父様の言う通り、弟子の能力を見極め自分の工房よりも相応しい場所があると思ったのなら、他所に紹介するのも大切な仕事だ。
「だから、君が責任を感じる必要はないんだ。
止めたいと思うのは当然だし、私たちも力になる、だから自分を責めるのは止めなさい」
諭すような声で言われてアルフレッドが目を見開く。
言われた言葉が胸に届いたのか瞳が揺れる。
「ありがとうございます……」
発した言葉は震えていてまだ複雑な胸中が見て取れた。
でもアルフレッドが悪いんじゃないって少しは思ってくれたのなら良かった。
ソフィアはほっと息を吐く。
お母様もシンシアもほっとした様子でアルフレッドとお父様を見つめている。
アルフレッドが落ち着いたのを見てお父様がグレンに目配せをする。
「さて、滞在中はここに泊まりなさい。
ここは情報が集まってくる場所だ。宿に泊まるよりいいだろう。
なにより旅に出てから娘が友人を連れてくるのは初めてだ、是非とも旅をしている最中のソフィアの話を聞きたい」
アルフレッドは恐縮しているけれどこれは決定事項だ。
すでにグレンは部屋を用意しに行った。
お父様に言われるまで気が付かなかったけれど、確かに誰かを連れて来たことはない。
昔の友人とは行商を初めて少し疎遠になったし、行商で出会う新しい友人はその土地で懸命に生きている人ばかりで機会がなかった。
アルフレッドだって、こんなことがなかったら一緒に王都に来ることもなかっただろうし。
そう考えると悪いことばかりでもないのかもしれない。
弟さんが見つかって一段落したら、お父様にもアルフレッドの作品を見てもらおう。
きっと気に入る。他にも何人か紹介したい人がいる。
真面目で愛情深いアルフレッドは弟さんのことで頭が一杯だと思う。
弟さんが見つかるまでは商談なんてする気になれないだろうし、ソフィアは勝手にその後の算段を立て始めていた。
アルフレッドは緊張した面持ちで申し訳ありませんでした、と言ってまた頭を下げた。
ソフィアが謝らなくていいと言ってもアルフレッドはずっと気にしていたんだと思う。
でもそんなに緊張しなくてもお父様は弟の咎を兄に負わせるような人じゃない。
お父様がソフィアを見たのでにっこり笑って見せる。
良い人でしょう?そんな内心が伝わったのかはわからないけれど、お父様も幾分か表情を和らげた。
「顔を上げてくれ、アルフレッド君。
話はよくわかった。 君の弟さんがソフィアが手に入れた青光石を持ち去ってしまった。
そして目撃情報から王都に向かったと予想して王都までやって来たということだね?」
「はい、その通りです」
「ふむ……。
では私から言うことはひとつだな、弟さんを探すために私たちも助力することを約束しよう」
お父様からはソフィアの予想通りの言葉が出てきた。
でもアルフレッドはまだ言われたことを上手く捉えられていないみたい。
「え?」
「君が強く責任を感じていることは私にも伝わっている。
しかし君が責任を負うべきではないとも思う」
ソフィアも同意見だった。
家族だからといって全ての責任を負う必要はない。
「もちろん工房の方向性で意見が分かれたというのも行動の理由の一つだろうがね。
しかしそれなら自分で販路を探すことや別の工房に弟子入りすることも選択肢として存在したはずだ。
犯罪行為に走らずともいくらでも彼は道を選べた、そうだね?」
「はい……」
アルフレッドが唇を噛む。
そんな選択肢があったことを示してやることも出来なかったと悔やんでいるように見える。
「本来それは親方の仕事だ、君の工房で言うなら父親がその役割を担っていたのだろう」
お父様の言う通り、弟子の能力を見極め自分の工房よりも相応しい場所があると思ったのなら、他所に紹介するのも大切な仕事だ。
「だから、君が責任を感じる必要はないんだ。
止めたいと思うのは当然だし、私たちも力になる、だから自分を責めるのは止めなさい」
諭すような声で言われてアルフレッドが目を見開く。
言われた言葉が胸に届いたのか瞳が揺れる。
「ありがとうございます……」
発した言葉は震えていてまだ複雑な胸中が見て取れた。
でもアルフレッドが悪いんじゃないって少しは思ってくれたのなら良かった。
ソフィアはほっと息を吐く。
お母様もシンシアもほっとした様子でアルフレッドとお父様を見つめている。
アルフレッドが落ち着いたのを見てお父様がグレンに目配せをする。
「さて、滞在中はここに泊まりなさい。
ここは情報が集まってくる場所だ。宿に泊まるよりいいだろう。
なにより旅に出てから娘が友人を連れてくるのは初めてだ、是非とも旅をしている最中のソフィアの話を聞きたい」
アルフレッドは恐縮しているけれどこれは決定事項だ。
すでにグレンは部屋を用意しに行った。
お父様に言われるまで気が付かなかったけれど、確かに誰かを連れて来たことはない。
昔の友人とは行商を初めて少し疎遠になったし、行商で出会う新しい友人はその土地で懸命に生きている人ばかりで機会がなかった。
アルフレッドだって、こんなことがなかったら一緒に王都に来ることもなかっただろうし。
そう考えると悪いことばかりでもないのかもしれない。
弟さんが見つかって一段落したら、お父様にもアルフレッドの作品を見てもらおう。
きっと気に入る。他にも何人か紹介したい人がいる。
真面目で愛情深いアルフレッドは弟さんのことで頭が一杯だと思う。
弟さんが見つかるまでは商談なんてする気になれないだろうし、ソフィアは勝手にその後の算段を立て始めていた。
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