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再燃
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胸を抑えた後、意識を失ってしまったセシリアを診察する医者に問いかける。
「どうなんだ?」
医者は答えに窮したように目を逸らす。
つまり医学的見地から言えることはないらしい。
視線は自然にもう一人に向く。
「何が原因か、わかるのか?」
呪い師は深い溜息をついて話し出した。
「呪いが原因だろうね」
「それは解けかかっていると…」
そもそもセシリアにかかっているのは光を奪う呪いだったはずだ。
「それは間違いじゃない。 これは、新しい呪いをかけられたんだろう」
「!」
「兄さんはこの子の生まれのことを聞いていたね?」
「ああ」
疎まれる理由も疎む人物についても聞いた。
父親の正妻が夫の不貞の結果であるセシリアを好く思わないのは当然かもしれないが、悪いのは不貞を働いた夫であってその子供ではない。
本来ならセシリアがこんな風に呪いを受ける理由なんてないはずだ。
「多分、この子生きていることに気づいたんだ。 だから怨みが再燃した」
「そんな…!」
それだけのことでこんなに人を苦しめることが出来るものなのか。
眠っている彼女の頭を撫でる。
穏やかな寝顔の中にある悲しみはどれほどだろうか。
「解くことは出来ないのか?」
前の呪いと違ってこれは命に関わる呪いのように思えた。
胸を押さえ苦しんでいたセシリア。あの苦しみようは、尋常じゃなかった。放っておけば必ず彼女に災いを及ぼす類のものだ。
頷く呪い師も深刻そうな顔をしている。
「気休め程度だが、呪いをかけておいた」
そう言って呪い師はペンダントを取り出した。
「これは?」
「守りの力が働いている、これを付けていれば今回のような危険は起きないはずだ」
呪い師から渡されたのは透明な石の付いたペンダントだった。
常に身に着けて災いを防ぐ物だという。
「兄さんの考えているとおり、放っておいたら危険な願いがこの子を苦しめている。 今回は大丈夫だったが、これから先はどうなることか…」
溜息を吐く表情には微かに苦渋を覗かせていた。彼女なりに思うところがあるようだ。
「彼女が生きている、それが怨みになるということか…?」
貰ったペンダントを握りしめて呟く。
「…そうだ」
馬鹿な、と叫びたいのを押さえてセシリアを見つめる。
あんなに認めてもらえなかったことで苦しんでいたのに、追い打ちをかけるような行為に怒りが湧き上がる。
正妻の気持ちがわからないわけではないが何の罪もない娘に呪いをかけてなんになるというのだろう。
考えてもやりきれない憤りが湧いてくるばかりだった。
「どうなんだ?」
医者は答えに窮したように目を逸らす。
つまり医学的見地から言えることはないらしい。
視線は自然にもう一人に向く。
「何が原因か、わかるのか?」
呪い師は深い溜息をついて話し出した。
「呪いが原因だろうね」
「それは解けかかっていると…」
そもそもセシリアにかかっているのは光を奪う呪いだったはずだ。
「それは間違いじゃない。 これは、新しい呪いをかけられたんだろう」
「!」
「兄さんはこの子の生まれのことを聞いていたね?」
「ああ」
疎まれる理由も疎む人物についても聞いた。
父親の正妻が夫の不貞の結果であるセシリアを好く思わないのは当然かもしれないが、悪いのは不貞を働いた夫であってその子供ではない。
本来ならセシリアがこんな風に呪いを受ける理由なんてないはずだ。
「多分、この子生きていることに気づいたんだ。 だから怨みが再燃した」
「そんな…!」
それだけのことでこんなに人を苦しめることが出来るものなのか。
眠っている彼女の頭を撫でる。
穏やかな寝顔の中にある悲しみはどれほどだろうか。
「解くことは出来ないのか?」
前の呪いと違ってこれは命に関わる呪いのように思えた。
胸を押さえ苦しんでいたセシリア。あの苦しみようは、尋常じゃなかった。放っておけば必ず彼女に災いを及ぼす類のものだ。
頷く呪い師も深刻そうな顔をしている。
「気休め程度だが、呪いをかけておいた」
そう言って呪い師はペンダントを取り出した。
「これは?」
「守りの力が働いている、これを付けていれば今回のような危険は起きないはずだ」
呪い師から渡されたのは透明な石の付いたペンダントだった。
常に身に着けて災いを防ぐ物だという。
「兄さんの考えているとおり、放っておいたら危険な願いがこの子を苦しめている。 今回は大丈夫だったが、これから先はどうなることか…」
溜息を吐く表情には微かに苦渋を覗かせていた。彼女なりに思うところがあるようだ。
「彼女が生きている、それが怨みになるということか…?」
貰ったペンダントを握りしめて呟く。
「…そうだ」
馬鹿な、と叫びたいのを押さえてセシリアを見つめる。
あんなに認めてもらえなかったことで苦しんでいたのに、追い打ちをかけるような行為に怒りが湧き上がる。
正妻の気持ちがわからないわけではないが何の罪もない娘に呪いをかけてなんになるというのだろう。
考えてもやりきれない憤りが湧いてくるばかりだった。
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