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従属契約と隷属契約
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その後、不知火は、馬人族達と従属契約を結んだ。契約内容は、[契約者(馬人族)の命を理由なく奪わない事]を条件に[里の門番として外敵から里を守る事]になった。里の中には、反対する者もいたが、不知火の寿命を考えれば、馬人族達は、ほぼ永続従者になった訳で反対者も渋々納得していった。そして、オレは、不知火に頼まれ、5箇所ある里の入り口の前に"ソルア"で馬人族達の仮住居を造った。馬人族達は、5組に別れ、生活する事になったが、持って来た家財や食糧だけでは、冬を越せる状況ではなかった為、一度帰郷する事が許された。
馬人族の件もあり、オレは、不知火に従属契約や隷属契約について確認した。不知火も詳細の部分は分からないとの事だったが、知っている範囲で教えてくれた。
まず、従属契約と隷属契約は、唯一神が最初に定めた法が起源になっているらしいという事。そして、その後、世界中に広まるに当たって、その管理・権限は、創世神であり、世界の調停者でもある王が行っているという事だった。
そのため従属契約の書は、王が自ら発行している。使用は、誰でもできるが、直接購入する事ができるのは、国王等の各国の統治者か王の眷族と言われている白法衣(ホワイトポウプ)という存在だけで、それ以外の者は、国や白法衣から1セット5万円位で購入しているとの事だった。従属契約の書は、本来、他国や他族間の外交で違反が起こらない様に使われていたが、現在では、公営の奴隷商や国営ギルド等の一部のギルドで主人と奴隷・契約者間の雇用契約としても使われている。そのため、時間やお金が有れば、容易に入手できるようになり、巷には、かなりの数が流通しているとの事だった。また、その結果が国や王の大きな収入源にもなっているらしい。因みに、馬人族が再来するまでに間があったのは、王都まで従属契約の書を購入しに行っていたからのようだ。
従属契約の書は、主人の血により、契約内容が記載される。そして、従者の血により、サインされる事で成立する。成立の証として、主人には、主紋、従者には、従紋が身体に刻まれる。主紋・従紋は、契約が達成されると消失する。ただし、契約者の一方が契約達成前に死んだ場合は、契約が破棄される。つまり、今回の様に期限のない契約では、主人か従者が死なない限り紋は消失しない。また、一方に期限が決まっている場合は、条件達成者の紋は、消えるが、一方の紋は、刻まれたままになる。例えば、黒マントと不知火の契約では、[撫子と桜を里に返し、2度と手を出さない事]を条件に[白竜に九尾の秘術をかけ、白竜を殺す助力をする事]という契約だったため、白竜が死んだ時点で、不知火の従紋は消え、黒マントの主紋は、残ったままになる。更に主紋又は従紋が刻まれている状態で契約違反を犯した場合は、契約は破棄され、違反者の紋が隷紋に変わり、隷属化、強制奴隷になる。つまり、もし不知火が死んだとしても契約成立後であれば、黒マントの主紋は残る為、その後に撫子や桜に手を出した場合は、主紋が隷紋に変わり、黒マントは、不知火の隷属になるという事だ。
次に隷属契約だが、隷属契約に必要な呪具も王により造られている。そして、その呪具は、呪術を扱える白法衣にしか持つ事が許されていないとされている。本来、隷属契約は、一方的かつ惨虐非道な行為をした国や者に対し、強制的に罪を償わせる為の契約で、王の指示、若しくは、対象者のいる国の統治者又は対象国の周辺諸国の依頼により、白法衣10人以上の賛同を得る事で行われる。更に契約を成立させるには、対象者に呪具を数時間身につけさせ、呪術を唱える必要がある。実際、撫子や桜は、首輪をつけられた上で拘束されていた。そして、黒竜王達は、呪具を体内に入れられる事で契約を成立させられた様だ。だが、契約成立前の呪具は、対象者でも取り外しや破壊が可能で、今回の様に拘束や取り除く事が不可能な場合でない限り逃れる事ができる。また、費用も高く、一回の隷属契約で数百万円はする。そのため、隷属契約による隷属化のケースは少なく、隷属者の多くは、従属契約の違反者との事だった。
それを踏まえた上で、今回の撫子と桜の隷属契約に疑問が残る。どうやって、黒マントの男が撫子と桜を隷属化できたかだ。撫子も桜も拘束されていた上に目隠しもされていた為、隷属化させられた経過は分からなかった。可能性でいうなら1つは、黒マントの男自体が白法衣だったという可能性だ。不知火も撫子と桜の隷紋を見た瞬間にその可能性が高いと思い、従属契約を持ちかけたとの事だった。もう1つは、黒マントの男のバックに白法衣がついている可能性だ。そして、最後に黒マントの男が白法衣から呪具と能力を何らかの方法で奪ったという可能性だ。
……………ごくっ。
オレは、生唾を飲んだ。それは、1つのシナリオに気づいてしまったからだ。
『最初の2つは、隷属契約の原則で言うなら、10人以上の白法衣がいなければ、王自らが指示した事になる。つまり、黒竜王達の隷属化、その討伐依頼、撫子と桜の隷属化、不知火の秘術による白竜の弱体化。そして、もしかしたら白竜達討伐後に黒竜達の自滅命令。あの大戦は、王が黒マントの男を利用した自作自演だったのではないか。でも、何のために?それも黒マントが求めていた白竜の角輪に関係しているのか?』
オレは、そのシナリオを胸に秘めたまま、不知火との話を続けた。
最後に契約移行についてだ。隷属契約も相手が死んだ場合、解除される。ただし、隷属者は、主人を守る義務が生じている為、主人が殺害された場合、義務違反で隷紋により、死を与えられる。また仮に死者の隷属になった場合、その死が自然死でなかった時は隷属になったと同時に死を迎える事になる。ただ例外として、一時の内に主人を殺した者の血を得る事で再契約を結ぶ事ができる。これは、オレが撫子と桜を隷属化した経緯になる。更に隷属者は、従属契約も隷属契約ができない為、隷属者をもつ主人が従属契約の違反等で隷属化した場合は、隷属者も一緒に新たな隷属契約を結ぶ事になる。つまり、もしオレが誰かの隷属になる事があれば、撫子と桜もその者の隷属になるという事だ。
不知火との話が終わると誾が夕食の用意ができたオレ達を迎えに来た。誾に促され、部屋を出ると外は、夕闇に暮れ、雪がしんしんと降っていた。
(さむっ)
自然と震える腕を撫子と桜の胸が包む。
「寒いです、永遠様。」
「永遠ちゃん、早く食べに行こう。」
2人の誘惑に誘われながら、食事に向かう。初めは、隷属契約で結ばれた繋がりだった。でも、今は契約だけではない繋がりを心から感じる。この幸せを守る為にもこの契約は、誰にも渡さないと改めて誓うのだった。
馬人族の件もあり、オレは、不知火に従属契約や隷属契約について確認した。不知火も詳細の部分は分からないとの事だったが、知っている範囲で教えてくれた。
まず、従属契約と隷属契約は、唯一神が最初に定めた法が起源になっているらしいという事。そして、その後、世界中に広まるに当たって、その管理・権限は、創世神であり、世界の調停者でもある王が行っているという事だった。
そのため従属契約の書は、王が自ら発行している。使用は、誰でもできるが、直接購入する事ができるのは、国王等の各国の統治者か王の眷族と言われている白法衣(ホワイトポウプ)という存在だけで、それ以外の者は、国や白法衣から1セット5万円位で購入しているとの事だった。従属契約の書は、本来、他国や他族間の外交で違反が起こらない様に使われていたが、現在では、公営の奴隷商や国営ギルド等の一部のギルドで主人と奴隷・契約者間の雇用契約としても使われている。そのため、時間やお金が有れば、容易に入手できるようになり、巷には、かなりの数が流通しているとの事だった。また、その結果が国や王の大きな収入源にもなっているらしい。因みに、馬人族が再来するまでに間があったのは、王都まで従属契約の書を購入しに行っていたからのようだ。
従属契約の書は、主人の血により、契約内容が記載される。そして、従者の血により、サインされる事で成立する。成立の証として、主人には、主紋、従者には、従紋が身体に刻まれる。主紋・従紋は、契約が達成されると消失する。ただし、契約者の一方が契約達成前に死んだ場合は、契約が破棄される。つまり、今回の様に期限のない契約では、主人か従者が死なない限り紋は消失しない。また、一方に期限が決まっている場合は、条件達成者の紋は、消えるが、一方の紋は、刻まれたままになる。例えば、黒マントと不知火の契約では、[撫子と桜を里に返し、2度と手を出さない事]を条件に[白竜に九尾の秘術をかけ、白竜を殺す助力をする事]という契約だったため、白竜が死んだ時点で、不知火の従紋は消え、黒マントの主紋は、残ったままになる。更に主紋又は従紋が刻まれている状態で契約違反を犯した場合は、契約は破棄され、違反者の紋が隷紋に変わり、隷属化、強制奴隷になる。つまり、もし不知火が死んだとしても契約成立後であれば、黒マントの主紋は残る為、その後に撫子や桜に手を出した場合は、主紋が隷紋に変わり、黒マントは、不知火の隷属になるという事だ。
次に隷属契約だが、隷属契約に必要な呪具も王により造られている。そして、その呪具は、呪術を扱える白法衣にしか持つ事が許されていないとされている。本来、隷属契約は、一方的かつ惨虐非道な行為をした国や者に対し、強制的に罪を償わせる為の契約で、王の指示、若しくは、対象者のいる国の統治者又は対象国の周辺諸国の依頼により、白法衣10人以上の賛同を得る事で行われる。更に契約を成立させるには、対象者に呪具を数時間身につけさせ、呪術を唱える必要がある。実際、撫子や桜は、首輪をつけられた上で拘束されていた。そして、黒竜王達は、呪具を体内に入れられる事で契約を成立させられた様だ。だが、契約成立前の呪具は、対象者でも取り外しや破壊が可能で、今回の様に拘束や取り除く事が不可能な場合でない限り逃れる事ができる。また、費用も高く、一回の隷属契約で数百万円はする。そのため、隷属契約による隷属化のケースは少なく、隷属者の多くは、従属契約の違反者との事だった。
それを踏まえた上で、今回の撫子と桜の隷属契約に疑問が残る。どうやって、黒マントの男が撫子と桜を隷属化できたかだ。撫子も桜も拘束されていた上に目隠しもされていた為、隷属化させられた経過は分からなかった。可能性でいうなら1つは、黒マントの男自体が白法衣だったという可能性だ。不知火も撫子と桜の隷紋を見た瞬間にその可能性が高いと思い、従属契約を持ちかけたとの事だった。もう1つは、黒マントの男のバックに白法衣がついている可能性だ。そして、最後に黒マントの男が白法衣から呪具と能力を何らかの方法で奪ったという可能性だ。
……………ごくっ。
オレは、生唾を飲んだ。それは、1つのシナリオに気づいてしまったからだ。
『最初の2つは、隷属契約の原則で言うなら、10人以上の白法衣がいなければ、王自らが指示した事になる。つまり、黒竜王達の隷属化、その討伐依頼、撫子と桜の隷属化、不知火の秘術による白竜の弱体化。そして、もしかしたら白竜達討伐後に黒竜達の自滅命令。あの大戦は、王が黒マントの男を利用した自作自演だったのではないか。でも、何のために?それも黒マントが求めていた白竜の角輪に関係しているのか?』
オレは、そのシナリオを胸に秘めたまま、不知火との話を続けた。
最後に契約移行についてだ。隷属契約も相手が死んだ場合、解除される。ただし、隷属者は、主人を守る義務が生じている為、主人が殺害された場合、義務違反で隷紋により、死を与えられる。また仮に死者の隷属になった場合、その死が自然死でなかった時は隷属になったと同時に死を迎える事になる。ただ例外として、一時の内に主人を殺した者の血を得る事で再契約を結ぶ事ができる。これは、オレが撫子と桜を隷属化した経緯になる。更に隷属者は、従属契約も隷属契約ができない為、隷属者をもつ主人が従属契約の違反等で隷属化した場合は、隷属者も一緒に新たな隷属契約を結ぶ事になる。つまり、もしオレが誰かの隷属になる事があれば、撫子と桜もその者の隷属になるという事だ。
不知火との話が終わると誾が夕食の用意ができたオレ達を迎えに来た。誾に促され、部屋を出ると外は、夕闇に暮れ、雪がしんしんと降っていた。
(さむっ)
自然と震える腕を撫子と桜の胸が包む。
「寒いです、永遠様。」
「永遠ちゃん、早く食べに行こう。」
2人の誘惑に誘われながら、食事に向かう。初めは、隷属契約で結ばれた繋がりだった。でも、今は契約だけではない繋がりを心から感じる。この幸せを守る為にもこの契約は、誰にも渡さないと改めて誓うのだった。
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