上 下
54 / 103

疑惑の証明??

しおりを挟む
オレ達は、八咫が酔い潰れてできた1日を各々で過ごした。オレと撫子、桜は、恵実留の店に装備案を渡しに行った。装備案を見た恵実留は、宝具が大きいため、撫子達用にリメイクしても、使われている神石がだいぶ余ると言ってきた。オレは、悩んだ末に残りは、武器にリメイクするように頼んだ。その後、恵実留に勧められ、店内に飾られているコート等を買った。その時に撫子達は、恵実留から何かを渡されていたみたいだが、隠す様に荷物にしまっていたので、見なかった事にした。大和は、八咫の介抱と称して、今日も酒を飲んでいた。どうやら、巨人の里の地酒が気に入ったらしく、自宅用に一升瓶を何本も買っていた。咲は、買い物に出かけた。咲は、オレ達がいない間、八咫と一緒に恵実留の元に向かい、宝具を保管庫に輸送したり、馬達の世話をしたりと頑張ってくれていたので、幾らかのお金を渡して暇を与えた。咲は、そのお金を持って、里の家族や友人達のお土産を買いに行ったらしい。本当に健気だ。そして、日が暮れた始めた頃、愛里須がオレ達を迎えに来た。愛里須は、オレ達との別れにと行きつけのお店を予約してくれていた。巨人族の知識は、料理にも精通しているようで、オレの知っている様々な多国籍料理がズラリと並んでいた。撫子と桜は、見た事のない料理に目を輝かせている。オレ達は、席に着くと愛里須にお礼を言って、食事を始めた。九尾の里では、味わえなかった懐かしい味に手が止まらない。撫子達も初めての味に目を細めて食べている。食事の終盤、オレは、愛里須に呼ばれて席を外した。
「頼まれていた物ができたわよ。」
愛里須は、そう言ってオレに小箱を2つ渡した。オレは、小箱の中身を確認すると
「ありがとうございます。イメージ通りの素敵なやつです。」
と言った。その言葉に愛里須は、満面の笑みを見せると
「でしょ。良いよね。我ながら会心のできなのよ。まぁ、その分、値が張っちゃったんだけどね。」
と返してきた。オレは、愛里須から請求書を預かると中を確認した。
『300万。相場が分からないけど、収入の何ヶ月とかって聞いたことあるし…』
オレは、請求書を閉じると
「分かりました。それで、どうやってお支払いしたらいいですか?」
と返した。愛里須は、
「流石ぁ。稼いでいる男は、違うわね。そしたら、虎徹に言って、私の口座に振り込んでもらっていいかしら。それと今回の事をチラッと虎徹に言ってくれたら嬉しいな。」
と言って頬を少し赤らめた。愛里須の言葉に支払い以外の意図があるのを感じながら、オレは
「分かりました。出発前にギルドに寄って、頼んでおきますね。」
と答えて、小箱と請求書をポケットにしまった。愛里須は、頬を赤らめたまま
「よろしくね。」
と返すと横に置いていた飲み物を一口飲んだ。
『んっ?この香り』
「もしかして、それってお酒ですか?」
オレの質問に愛里須は、グラスを見せて
「そうよ、果実酒。特別に年代物を出してもらったのよ。」
と答えた。急に不安が過ぎる。
「とぉわぁさまぁ」
その言葉と一緒に撫子が後ろから抱きついてくる。胸元をはだけさせて、口から果実酒の甘い香りを吐いている。
「私、言ぃましたよね。浮気は…ダメ…ってぇ。もぅ…なんで、守れないんですかぁ。」
撫子が目をとろ~んとさせながら、オレを叱る。
『完全に酔っている。…まてよ、桜は?』
オレが桜のいたテーブルを見ると桜は、既に眠りについており、一緒に来た咲が介抱していた。オレが一安心していると撫子は、手でオレの顔を包んで
「永遠さまぁ、どこ見てるんですかぁ?わたしぃ、怒ってるんですよぉ。」
と言って、オレを潤んだ瞳でじっと見つめた。その瞳にドキドキしながら、オレが
「ごめん、撫子。でも、浮気なんてしてないから」
と返すと、撫子は、頬を膨らませて
「ほんとですかぁ?わたしが目を離すといっつも愛里須ちゃんと一緒にコソコソとぉ…」
と言って、愛里須を見た。そして、
「いいんですよぉ、愛里須ちゃんも娶るって言うならイチャイチャしても…」
と続けた。急な飛び火に愛里須も慌てて
「撫子ちゃん、本当に私達、何にもないから」
とオレを庇った。その言葉に撫子は、愛里須とオレの顔を見て
「わかりました。じゃあ、とわさま、わたしにチューしてください。チュー。」
と言って、オレに唇を近づけてきた。周りの視線が気にはなったが、それで誤解が解けるならとオレが唇を重ねると撫子は、同時に舌を絡ませてきた。撫子は、そのままオレを押し倒して、尻尾を激しく振りながら唇を重ね続けた。撫子の柔らかな唇、交わり続ける舌、甘美な香りがオレの抵抗を許さない。オレが撫子の口づけに身を委ねる姿を愛里須は、真っ赤になった顔を手で覆いながら凝視し続けた。ようやく撫子の気持ちが落ち着いたのか、撫子は唇を離すと
「はぁ…はぁ…。とわさまぁ、あいしてますわ。」
と言って眠りについた。突然の狂瀾に愛里須は、まだ言葉を失っている。オレが眠りについた撫子の頭を撫でると、撫子の尻尾がゆっくりと揺れ始めた。その光景を見て、ようやく愛里須が言葉を出す。
「貴方も大概大変なのね。」
同情にも似た言葉にオレは
「まあ…。」
と返すしかなかった。
翌朝、オレ達は、八咫からの多大な謝罪を受けながら荷造りを済ませ、ギルドに寄った。オレが阿天坊に事情と振込をお願いすると、阿天坊は、何かを察したのか、振込の手続きをしながらソワソワしていた。そして、何かを思い出したかの様にオレに1通の手紙を渡した。オレが尋ねると阿天坊は、
「宗睦様からだ。詳細は、聞いとらんが、永遠殿んとこの支部長さんは、とんでもない物を依頼したみたいだな。歐雷君が、その辺の鉄鉱石を使い切るんじゃないかって言ってたぞ。」
と返した。宗睦さんが一体どんな金庫を造る気なのか想像ができない。オレは、恐る恐る手紙を受け取った。オレがギルドを出ると愛里須達が見送りに来ていた。オレ達は、挨拶を終えると馬車に乗り込み、九尾の里へと馬車を走らせた。
しおりを挟む

処理中です...