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第58話
しおりを挟む「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
今朝は広いリビングで当主であるサージェスさんが1人、穏やかな笑顔で迎えてくれた。
サリウスさんの家では、もうすっかり家族の一員のような雰囲気で受け入れられている。
珍しく双子の兄妹は早く家を出たようで、こんなに静かな朝は久し振りのように思う。
ヴィルド家の双子マシュエルとミライザの目には、オレは”いくらでも遊んでくれるお兄さん”と映っているようだ。
時間さえあれば一緒に本を読もうとか学校の課題をやろうと誘われているが、案外こちらの勉強にもなっている。
子ども向けの本や教材の中にはこの世界での知識はもちろんの事、一般常識や道徳観念なんかもさり気なく散りばめられていて面白い。
そんな事をぼんやり考えながら朝食を食べていると、向かいでゆっくりとお茶を飲んでいるサージェスさんと目が合った。
「そういえば、朝早くサリウスを訪ねて騎士団の若者が来ていたようだよ」
「それって…」
ヴィルヘルムが来ていたのだろうか?サージェスさんも会ってはいないそうで詳しくは分からないようだ。
「我が家は君さえ良ければ、いつまでも滞在してくれて構わないが」
微笑むサージェスさんにお礼を言うが、本心から言ってくれているのも分かるが流石にいつまでも厚意に甘えるのも申し訳なくなってくる。
今ヴィルヘルムが王都で借りられる家を探してくれているが、騎士団の許可が出る物件でないと難しいらしく難航しているそうだ。
当然のように一緒の家を借りる事になっているが、せめて部屋はそれぞれ持てるようにしようとお願いしたがどうなるかは分からない。
ただでさえ忙しいヴィルヘルムは朝から騎士団での仕事と守護騎士の訓練、それに加えて仕事を終えてからは連日物件の下見に行っている。
つまり城内で偶然顔を合わす以外は、ほとんど話せてもいないわけだ。
「正式な守護騎士になった途端、会えなくなるなんて矛盾してる…」
無意識に小さく声に出ていたようで、サージェスさんが口の端だけ上げて笑った。
「おはようございます!」
門前に立ったローレンツさんが、額に浮いた汗を拭きながら爽やかに手を振っている。
どうやら騎士団での朝の訓練が終わってから迎えに来てくれたようだ。
「おはようございます、朝からすごいですね」
「聞いてくださいよイツキさん!」
思ったよりも大きな声に驚いたが、ひとまずローレンツさんに促がされて城に向かって歩き出した。
「朝の鍛錬に参加してからイツキさんを迎えに行っても間に合うんじゃないかって、急にうちの団長が言い出したんですよ…」
「そりゃ確かにイツキさんの付き添いをしている間は別ですが…それでも詰め所に戻ったら常に鍛錬しているんですよ!?」
別になにも言っていないのだが…、どんどん言い訳のように言葉を重ねるローレンツさんが面白い。
城に着いて早速精霊の観察をするために植物園に向かう。
朝は城で働く色々な人々が、廊下や回廊を足早に行き交っている。
役職によって制服がそれぞれ違うので、今日も城内はなかなか色とりどりだ。
「ローレンツ!備品係からあなたに書類を預かってるわ」
「あぁすみません、イツキさんちょっと…」
「大丈夫ですよ、待ってます」
背の高い騎士団の女性に声を掛けられたローレンツさんを横目に、邪魔にならないように壁際へ寄った。
話を立ち聞きするのも悪いかともう一歩離れようとした瞬間、足元を何かが動く気配がする。
「わっ…」
突然回廊の植木の陰から現れたのは、白黒のドット模様の羽根が鮮やかな鳥だった。
一瞬オレの声に驚いて振り返ったローレンツさんが視線をやらなかった所を見ると、この鳥も精霊のようだ。
城内では特に回廊に面した中庭などで突然精霊が飛び出して来ることがあるが、他の人には見えていないので、大きなリアクションをするのも憚られる。
足元にじゃれつく精霊を気にしながら立っていると、少し先の柱の陰にいつか見たあの少年が佇んでいる事に気が付いた。
今日も先日見掛けた時と同じ、黒っぽい学校の制服のような服を着て帽子を被っている。
柱が白くなかったら小柄な彼に気が付かなかったかもしれない。
少し不貞腐れたような表情でこちらを手招きする彼に、思わず首を横に振った。
この世界では少しでも保護者から離れるととんでもない事態になる事がある、という事を少しはオレも学習したのだ。
少年は動かないオレに痺れを切らしたようで、その場で大きく息を吸って声を掛けてきた。
「そこのお前、名は?」
少年の態度と言葉に、思わず言葉に詰まる。
応えて良いものかすぐ傍にいたローレンツさんを見ると、ちょうど同僚との話が終わったようで目が合った。
「どうかしました?」
「それが、あそこにいる…」
ローレンツさんにあの少年について聞こうとしたが、柱の陰に既に少年の姿はなかった。
「…?精霊ですか?」
「いえ、これ位の背丈の子どもが…」
音も無く消えた少年を捜すべくあたりを見回すが、どこにも見当たらない。
「そんな気配ありませんでしたけど…、もしかして」
少し考えるように顎に手をやったローレンツさんに、心当たりでもあるのかと期待する。
「…イツキさんって幽霊も見えたりしますか…?」
小声で”私そういうのだけはダメなんですよ”と言われて、思わず肩の力が抜けた。
「イツキ!」
広いホールでオレの名前を呼ぶ声がして、彼の声だとすぐ分かった。
「ヴィルヘルム!お疲れさま」
すこし疲れた様子の彼を励ますために、いつもより明るい調子で声を掛けた。
精霊の観察を終えて向かった食堂を出た所で、偶然ヴィルヘルムに会えたのだ。
「イツキこそ、毎日大変だろう」
そんな言葉と共にゆっくりと微笑まれると、無性に気恥ずかしくなってくる。
「いや…そんな、ヴィルヘルムこそちゃんと休めてる?かなり忙しそうだけど…」
そう言って彼の顔をよく見るとやはり少し疲れているように見える。
「慣れない場所でも頑張っているイツキ程ではないさ」
「ヴィルヘルム、オレは…」
長く会えなかった訳でもないのに、話したい事が沢山浮かんだ。
オレが話し出すのを待っているヴィルヘルムと目が合って、少し気恥ずかしい。
なにから話そうかと再び口を開くと、隣に立つローレンツさんのわざとらしい咳払いが聞こえた。
「私も、ここにいますよ…」
「それは分かってますけど…」
そこまで蚊帳の外にもしていなかった筈だ。
そのまま3人で目的地である図書室の方へ向かう事になった。
長い廊下をヴィルヘルムとローレンツさんに挟まれて歩くと、二人との体格の差を特に感じる。
連絡事項が多いようで、オレには分からない話をする2人の話を聞くでもなく聞きながら廊下を進む。
いよいよ図書館の前まで来たが、ヴィルヘルムはこれから詰め所でまた別の仕事がある。
ローレンツさんに後を頼んで離れようとしているヴィルヘルムの横顔を見上げた。
そんな自分は今さぞ情けない顔をしているだろうなと思う。
もうこの城での仕事にも王都での生活にも少しは慣れてきたと思ったのに、彼に会うと離れる事に急に心細さを感じた。
困らせるだけだと分かっているのに、なんだか素早く視線を外すのも億劫だ。
「…イツキ」
ゆっくりとヴィルヘルムが身体の向きを変えて近付いてくる気配がした。
次の瞬間には目元に影が落ちてきて、なにか冷たいものが額に触れた。
「冷たい…」
ひんやりと心地良いものの正体は多分ヴィルヘルムの掌だ。
「…イツキ、熱がある」
「…え?あー…」
そうか言われてみればこの気怠さは、熱があると思えば納得出来る。
「言われてみれば…そうかも…」
体調不良を自覚すると身体もどんどんと重く感じる。
「帰ろう」
「えっ」
そう言うと急にヴィルヘルムがオレの腕を掴んだので驚いた。
「でも、今日はここで…」
「イツキ」
遮るように名前を呼ばれて、思わず黙った。
ローレンツさんに自分の代わりに詰め所へ行くように頼んでから、オレの返事も聞かず歩き出すヴィルヘルム。
二の腕をしっかりと掴まれていて、体重の一部を肩代わりしてもらっているようだ。
黙々と歩くヴィルヘルムを時折見上げながら、数時間前に通ったばかりの道を引き返す。
この声をかけにくい雰囲気は、彼が怒っているからではないかと思い至る。
オレが自分自身の体調不良にも気が付けなかった事を怒っているのだろうか。
それとも他の理由があるのか、直前まで何の話をしていたのだったか…回らない頭でグルグルと考える。
見慣れた大通りまで来て、サリウスさんの家がもう近い事が分かった。
「…すまない」
やっと離された腕から急に熱が引いて、すこし寂しく思う。
せっかく明日は休日だというのに、これではゆっくり話す時間も取れそうにない。
「ごめん…本当に…」
「…なにに対して謝っているんだ」
返ってきた硬い声色に顔を伏せると、ヴィルヘルムの手がオレの肩に添えられた。
「イツキが無理をしない訳がないのに、気が付けなくてすまなかった…」
どうしてヴィルヘルムが謝るのだろう。
「無理はしてない…って説得力ないけど、話がしたいヴィルヘルムと」
このまま屋敷に着いてしまったら、きっとまた何日も会えない。
「部屋まで送ろう」
「もうすこし一緒に…」
オレこそ自分の不調にも気が付けなくて、迷惑をかけて悪かったと謝りたい。
「イツキ」
話したい事が…沢山あるのに…。
間もなくどうやってベッドまで辿り着いたのかさえ覚えていないが、長い夢を見た。
元いた世界での学生時代の思い出や、家族や友人の顔が断片的に浮かんでは消える。
通っていた学校の校舎や実家の様子、よく通った道やなんでもない日に見上げた空も。
取り留めのない風景や人の顔が浮かんでは消える。
会社からもほど近い庭から見える桜の木で住むことを決めた家も、随分昔のことのようだ。
脳が記憶を整理しているんだと分かっていても、懐かしい情景に切なくなった。
次第にこの世界に来てからの記憶がぽつりぽつりと浮かんできた。
熱に浮かされている事は自覚している、これは夢だ。
夕暮れの畦道で目が覚めて、通りすがりの彼がたまたまオレを助けてくれた。
他の誰か、例えば団長さんやローレンツさんがあの場にいてもきっと同じように助けてくれた。
この世界で初めて夜を越した小屋で朝を迎えて、最初にその恩人を光の下で見た時の事を思い出す。
朝日を受けて輝く彼の金色の髪と、海外の俳優かと見紛うような風貌に驚いた。
お陰で否応なく自分がそれまでにいた場所とは全く別の所へ来てしまったのだと確信した。
向こうもオレの様子に相当驚いて、その髪は本物かと思い切り髪を引っ張られたのは地味に痛かった。
それでも優しそうな彼の雰囲気に、不思議とはじめから警戒心のようなものは働かなかった。
言葉が通じなかったオレに面倒臭そうな顔ひとつせず、付き合ってくれた優しさに。
自分も大変な時に他の人へ後を任せるでもなく、道中連れて歩いてくれた生真面目さに。
お礼を言っても”こちらも助けてもらっている”と笑って答えてくれる謙虚さに。
何度救われただろうかと思う。
きっと彼とでなくてもオレは王都に辿り着けたかもしれない。
それでも彼が良かった。
彼でなければこんな気持ちにはならなかった。
「ずっと共にいてほしい」
夢の中で枕元に立つ彼が言う。
オレも、きっとヴィルヘルムがオレを好きだと思ってくれている以上に、彼が好きだ。
それでもあの日からすれ違いばかりで、肝心な話は出来ていない。
もしかして彼はまた気を回し過ぎて、オレが立場的に彼からの言葉を断りにくいと思っているのかもしれない。
そうだとしたらこのままオレから好きだとも一緒にいたいという言葉も返せないまま、ヴィルヘルムが離れていってしまうのか?
そんな可能性考えてもみなかった。
それでも確かにオレはあの日から彼に自分の気持ちを言葉にして伝えられていない。
守護騎士ってもっとずっと一緒にいる約束みたいなものじゃないのか?
ならどうして前より離れている時間が長いんだ?
こんな事ならやっぱり2人で旅をしている間の方がずっと…。
もし彼が嫌になって別々に生きようと言われたら、オレは彼を解放してやれるのか?
回らない頭で唸るまで考えても話は堂々巡りだ。
まだ彼に気持ちを伝えていない、態度や空気感で伝わっていると甘えていた。
珍しく怒った様子だったヴィルヘルムを思い出す。
守護騎士になる為の訓練で忙しいのに、オレの為に頑張ってくれているようなものなのに、オレの考えが足らなかった。
「…ばか」
オレのバカ…。
足を引っ張りたい訳じゃない、彼を頼らずに時には頼られたいとさえ思う。
もしこのまま愛想を尽かされたら、と考えたくなくとも想像する。
いつからか目が醒めていたようで、暗い部屋の中で身じろいだ。
真新しいベッドのシーツと布団の肌触りに違和感を覚えた。
怠さが残る腕を上げて額に手を当てると、すこし熱が下がった事がわかった。
「はぁ…」
吐き出した息はまだ熱く、このまま寝ている必要はありそうだ。
ふと先程からの違和感の正体を探るべく室内を見回ると、ここがいつものサリウスさんの家の客室ではない事に気が付く。
「イツキ、目が覚めたか?」
灯りが漏れていたドアが開いて、ヴィルヘルムがこちらに歩いてきた。
「どうして…」
どうして彼がいるのだろう、まだ夢を見ているのだろうか。
「気分はどうだ?」
起こそうとした身体をベッドに押し戻すように、額に手が置かれた。
「もう少し寝れば大丈夫…」
倒れた人間の”大丈夫”ほど当てにならないものはないな、と自嘲する。
「……」
「…ヴィルヘルム?」
ひんやりとしていた掌にオレの額の熱がじわりと伝わって、その境界が分からなくなる。
黙り込んだヴィルヘルムの顔を見ようと視線を上げるが、逆光になっていて分からない。
数秒の沈黙のあと額に置かれていた掌がそっと退けられた。
「…約束してほしい」
「約束…?」
「どんなに些細な事でも相談してほしい、遠慮せずに」
ここまで言われてやっと分かった、ヴィルヘルムはこんな時でもオレの様子に気が付けなかった自分自身を責めているのだ。
「…約束する」
そばにあったヴィルヘルムの手をとり、気持ちが伝わるようにしっかりと握る。
それから数分もしない内に急激な眠気に襲われ、気が付けば意識を手放していた。
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