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- G - (2)

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「もう、のめません……」

 誰に宣言しているのかは分からないが、私と目が合っている訳ではないので意識もハッキリしているかどうか怪しい。試しに軽く肩を叩いてみると、彼とやっと視線が合った。
「ああ、ヴィル……ねむ」
 一瞬愛称で呼ばれたのかとドキリとしたが、瞼を閉じて横になろうとする彼に慌てて肩を掴み軽く揺すった。イツキは変装したままだが、鬘や服などそのままの格好で寝てしまうと翌朝の用意に余計に時間が掛かると、今朝彼自身が零していたばかりだった。

「イツキ、着替えてから寝てくれ」
 眼鏡を外してやり鬘くらいなら取れるかとも思ったが、上手く固定されているようで少し触った位では構造が分かりそうにない。
 力の抜けたイツキの頭を胸に置いてしばらく鬘と格闘していたが、やっと気が付いたらしい彼が自分であっさりと鬘を外した。鬘を受け取りこれ以上型崩れしないよう手近なローテーブルに置き、改めてイツキの様子を窺う。

 力なく私に凭れ掛かったままではあるが、鬘が取れて乱れた黒髪に漆黒の瞳がぼんやりとこちらを見上げていて、無防備に開かれた口元に……視線が。
「……イツキ!きちんとベッドで寝るべきだ!」
 慌てて彼の身体を自分から引き剥がし、膝をついて彼を立たせようと腕に力を入れた。
 一瞬感じた謎の衝動に自分でも驚いたが、思ったより私も酔いが回っているのかもしれない。

 仕方なくそのままの格好のイツキを抱えて寝室まで移動した、片付け等は明日非番の私が済ませれば良い。もう半分眠っているようでベッドに着く頃には静かに寝息を立てていたが、いざベッドに下ろすと突然酔っ払いとは思えない力で頭を抱き込まれた。
「……うーん、あつい」
 独り言のように呟きながら二の腕で私の頭部を挟んだまま、器用に上衣を寛げ始めたイツキに仰天して怪我させないように力加減しつつ身体を引き剥がした。

「なんで……」
 いやいや、こちらこそどういうつもりなのか問い質したい所だが、酔っ払いに何を言っても無駄という事は今までの経験から十分に分かっているつもりだ。特に酩酊している相手はどんなに普通そうに見えても話は通じない。
「きょう、ちゃんとできた……はず」
「ああ、ありがとう。イツキの料理は美味しいと皆喜んでいた」

「ちがう……ちゃんとおくさんできた?」
 おくさんとは……今夜は思考が停止するような衝撃を伴なう言葉が多いが、今のは偽装の妻役を熟せていたかどうか聞かれたようだ。あれだけ今夜の食事会は負担では無いと言っていたが、やはり彼は随分と気を遣ってくれていたようだ。
「ありがとう、私には出来過ぎた妻だ」
 極力軽い調子に聞こえるよう彼の頭に手を乗せてみると、自分からグリグリと私の掌に頭を押し付けてきた。イツキの気が済むまで頭を撫でてから、身を起こして自分のベッドに横になった。

 私が寝たら諦めてイツキも完全に眠るかもしれないと思い目を瞑ったが、隣のベッドで彼が起き上がる気配がして目を開けようかと考えていると、次の瞬間には私の腹の上にイツキが跨っていた。
「……ヴィルヘルム」
「どっどうしたイツキ、寝ないのか?」
 腹部に感じる重みと体温を感じて、それを意識しないようにしながら彼を退かそうとするが強く抵抗された。

「ねる……ふうふは、いっしょにねます……」
 そのまま倒れ込んできたイツキを受け止めるべく彼の両肩を正面から支えたが、完全に脱力していたようで首から頭がぐらりと落ちて来て、頬に当たった。
 身体ごとベッドの余った部分に転がすと、今度こそ眠ったようで彼は寝息を立て始めた。
 不意に頬に触れたイツキの唇の柔らかさと体温に頭を抱えそうになりつつ、今夜だけは階下のソファーで寝る事にした。

 寝室よりも若干夜の冷気を感じる居間で、足のはみ出す決して寝心地が良いとはいえないソファーで横になりながら、これからは余程彼の飲酒には気を付けなければならないなと心に誓った。




 背中の痛みで目を覚ますと、ソファーは流石に自分には狭かったらしい寝返りを打ってそのまま床で眠っていたようだ。
 起き上がり身体を伸ばすと、正面の窓のからは上がりかけた朝日の陽が差し込んでいた。
 自分が動いた事で室内に舞った細かな埃がキラキラと明かりを反射している様子を眺め、3ヵ所程ある窓を大きく開いた。

 空気でも入れ替えれば昨晩の私の雑念も消えるかと思ったが、昨晩のままのテーブルの上の様子を見て、脱力感からそのまま一旦ソファーに身を沈めた。
 酒が入っているとはいえ同僚の前での羞恥しかない発言と、酔ったイツキの事を……いやだが意識のハッキリしていない人間に対して……と思わず手で顔を覆い、今日が非番で本当に良かったと思った。

 普段から彼は素直ではあるが、やや落ち着いていて容姿だけ見れば未だに私より年上というのは信じ難い。また表情についても昨晩見せたような、それこそごく親しい人間に対してするような無防備な表情を私はまだ見れていなかったのかもしれない。
 “可愛らしい”という表現は同性に使うには違和感があるが、それ以外に言い表しようがない。
 親しい人間といえば彼は手紙を出した友人とは、普段から酒を酌み交わす仲だと聞いていたが、昨晩のイツキの様子を思い出して急に不安になってきた。

 私はイツキを好ましく思っている、それは出会ってすぐから逞しくこの国に順応しようとする彼の姿勢や、謙虚な態度を見て当然の流れでそう思っていた。決してその容姿や体躯を対象として魅かれた訳ではない。そうではないのに昨晩のイツキの顔が頭から離れないのは何故なのか、いや人間は相手に対してどんな要素も切り離して考えられるものではない。

 そんな事を考え込んでいると、いつもより少し早めに目が覚めたらしいイツキが居間に入って来た。
「おはよう、ヴィルヘルムも頭痛いか?」
 私の体勢を見て勘違いしたらしい彼が“オレも痛い”と言うので同意しておいた、この場はそういう事にしておく。
 私が1人で片付けるからいいと言ったが、2人で使った食器を台所まで運ぶ所までは手分けしてやった。余程頭痛が酷いらしく元気のないイツキを直視出来そうになく、つい視線を彷徨わせてしまう。

 気が付けば出勤時刻となりいつものようにイツキを工房まで送って行く。
 食材を調達して帰る事を約束して工房の前で別れた。

 宿舎とは別の方向にある旧市街の食品店に向かう、町の人々は光の大祭に向けての準備に余念がなく朝から出店の設営準備や、軒先の掃除に追われているようだ。
 特に夜も灯りを絶やさないランタンは明日にも飾り付けを完了させると聞いている為、役場の人間だろう制服の男が何人も設営に掛かっている。

「騎士様!おはようございます!」
「おはようございます」

 行き交う町の人々にまばらに声を掛けられる。最近は町中の巡回も増やしているせいか少し顔が知られているようで、私服であっても声が掛かる。こうしていると巡回に近い効果はあるが、後ろ暗い事のある人間が遠巻きに逃げて行ってしまう機会を与えてしまいそうで考えものだ。
 商店に到着しイツキのメモ通りに食材を買う、騎士寮での生活が長い私にとって日持ちのしない食材を買い込む事は懐かしい体験で、生家にいた幼少期を思い出させた。

 もうすぐ手紙で姉が指定した満月の夜だ。
 手紙を返せる状況であり、この町に立ち寄る隙があるという事は少なくとも拘束されている訳ではないと信じたいが、余り事態を良い方向には捉えられない。
 エルミアがよく言っていたが私は余り前向きな性格ではない。姉はどこまでも前向きであるが、弟の私は慎重さが目立ち後ろ向きだとよく揶揄われた。

 昼の賑わいを前に穏やかな街並みを眺めながら、頭に入れた旧市街の地図と照らし合わせて、細かな道も見逃さないよう今一度確認しながら宿舎へ戻る。

 私はまだイツキに姉との約束の満月の日が、3日後の光の大祭の夜だと伝えていない。
 正確には迷っている、伝えるかどうか。
 教えれば彼はきっと自分も当日旧市街で姉を捜すと申し出る筈だ。もともと私は彼に精霊の泉で手紙を出す為に、精霊の泉まで共に行ってほしいとお願いをした。
 彼が私の姉の捜索について心配してくれているのはよく分かっているが、それでも自分で自分の身を護れるかどうか怪しい彼が、例えば街中でその変装が解けてしまったら、私は彼を庇ったままエルミアを救出する自信は流石にない。

 当日は鍵をかけた宿舎にいて、自身の身の安全を確保しておいてもらいたいと思っている。団長やローレンツにも相談したが、全員一致でそれが最善策だという事になった。イツキが聞いたら流石に怒るかもしれない為、出来れば当日まで気が付かなければそのままで良いかと思っていたが、今日の街中の様子を見るに祭がある事は流石に伝わってしまうだろう。

 はじめは王都で保護してもらう為に送り届けるだけだと思っていたが、日々発見する彼の新しい一面一面に魅かれる自分がいる事を、私はそろそろ認めなければならない。

 姉を捜しているのに、彼を危険には晒したくない。
 幸い団長やローレンツの助けも得られた為、当日は抜かりなく全力を尽くすつもりだ。



 迎えの時刻となり工房へ向かうと、遠目にも工房の扉の前で人を待つイツキを発見した。目立たない青灰色の鬘も大きな眼鏡で平凡な色味に見せている瞳も、顔の造形までは隠せず物珍しそうに遠巻きに見る人間を何人か確認し、私は眉間に思わず力を入れた。

「イツキ、どうして中で待っていなかった」
 若干責めるような口調になってしまっただろうか、極まりの悪そうな顔をした彼は今日から本格的に工房が忙しく残業の人の手前、建物内に居残り辛かったのだと言った。一瞬ギクリとしたが、その後珍しく少し寄り道をしようと提案した彼に、私は彼が祭の事を知ったのだと察した。


 背の高い葉が風に揺れ、この時期らしい気候の夕刻だった。
 やや崩れかけ傾いた石の階段を、ゆっくりと上がるイツキの後ろについて歩く。
 こんな穏やかな光景はしばらく見ていなかったなと思い、もしや自分は王都での息の詰まるような騎士団の職務は合っていないのではないかと改めて感じた。
 前を歩くイツキの靴が段差に当たる様子を見て、この道も近い内に整備するよう申し出なければと考え、どんどん思考が今のこの状況から逃げを打っている事を自覚した。

 想像した通り、祭とは何かと聞くイツキに今更隠しても仕方ないので、光の大祭の日が満月の日だと伝える。そこまでは知らなかったようで、どうしてもっと早く教えてくれなかったのだと口には出さなかったが、彼の瞳がそう言っている。
 素直に聞き入れてくれそうにないが、当日は宿舎にいてほしいと私の希望も伝えた。

「満月の夜に貴方のお姉さんをこの町で捜す、留守番なんて御免だ」

 眼鏡越しのイツキの瞳を見ると、そこには私が初めて見る彼の怒りの表情があった。
 だが残念ながら私は彼を危険に晒したくはない為、ここは譲れない。

「自分の身も守れないのにって、思ってる?オレもそう思うけど……」
 そうではないが、そうでもある。足手纏いだ等と思った事はない、私が護ればいいだけの話だ。だが彼を護りながら姉を捜すのは難しい。

「旧市街は先日下見もした、貴方が止めてもオレは1人でも捜すよ」
「イツキ!」
 咎めるように彼の薄い肩を掴んだ私に、イツキは首を横に大きく振った。
「捜索の目は多い方が良い筈だ、騎士団の人だって全員が一緒に捜してくれる訳じゃないんだろ?」
 ああ、そうだ彼は子どもではない、冷静に状況を把握している。

「オレは貴方に守ってもらいたくて一緒にいるんじゃない、貴方に恩を返したいから一緒にいるんだ!」

 はじめて聞くような大きな声で叫ぶように言った彼に、私は自分が彼に守護騎士として必要無いと言われたような喪失感と、彼は護ってやらなければならないような存在だと心の何処かで決め付けていた自分の勘違いに愕然とした。

「参った……」

 なにが守護騎士だ、それも相手の了承も得ない騎士など聞いた事もない、なにより彼は私に守ってもらいたい訳ではないと言う。

 彼と出会った時、私は確かになんの見返りもなしに誓いを立てたという事は胸を張って言えるが、彼はもうあの時の異国で言葉も通じず怯えて不安そうな人間では決してない。
 いつまでも守護が必要だと、きっと私はそう思い込みたかったのだ。私が彼に必要とされたいから、そうした私の利己心が”守護騎士の誓い”という一種呪いのような強制力を持って彼を束縛しようとしていたのかもしれない。

 彼はこの誓いに付き合うべき義理など毛頭無い、なにをしようと何処に行こうともイツキの行動はイツキの自由であるべきだ。
 それをお願いという形でこちらの意に副ってもらおうと、事実を伏せて話をするなど騎士の風上にも置けない……自己嫌悪で圧し潰されそうだ。

「私の負けだ、イツキ」

 負けとはなんだ、自分の口から出た言葉にまだなけなしの自尊心を庇うのかと更に自分に対して嫌気がさしたが、途端に明るくなったイツキの顔を見て、そんな事はどうでもよくなった。

「すまない、私の姉を捜す協力をお願い出来るだろうか?」

 ここまでの思考を終わらせる為に、姿勢を正しイツキに右手を差し出すと、私よりひと回り小さな右手が手袋越しでも分かる温かさでもって私の手を握り返してくれた。


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