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 ・・・・がっかり・・・された・・・・・・かな・・・・




 蒼「クシュンッ・・・・・はぁ、何か寒くなってきた・・・」




 既に外は暗くなっていた。

 そして雨はまだ降り止まない。それ以上に強さを増していく。

 雨宿りをしている俺の瞳には、車の光が見えた。

 車を降りた人物は、車のライトに照らされながら、傘を差して辺りを見渡している。

 その人は俺を見つけると、足早に俺の元へ向かってきた。




 拓「びしょ濡れじゃないか」



 蒼「あ・・・・うん、傘忘れちゃって・・・」



 拓「俺もお前が行く前に 外確認すればよかったな、寒かっただろ?」




 拓海はそう言うと、俺の肩を抱いた。




 蒼「これぐらい平気だよっ・・・・た、拓海も濡れちゃうからっ」




 拓海が濡れてしまうと思って、俺は拓海の腕を離そうとする。




 拓「俺はどうだっていい、とりあえず、早くうちに帰ろう」




 拓海はそう言うと、俺の肩を抱きながら車まで連れてった。




 蒼「座席濡れちゃうよっ・・・・・」



 拓「はぁ、お前は本当にどうしようもない奴だな」




 拓海はそう言うと、俺を車に押し込んだ。




 ・・・・・また拓海を困らせてしまった。




 拓「とりあえず、これしかないから我慢しろ」




 拓海は不機嫌そうに そう言うと、自分のスーツを脱いで俺に羽織らせた。

 そして、しわの無い 高級そうなハンカチを取り出すと、俺の濡れた髪の毛をそれで拭いていく。




 蒼「・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・拓海・・怒ってる?」




 いつも拓海には面倒を掛けてばっかりなのに、今日はさらに呆れられるような行動を取ってしまった。




 拓「怒ってる」



 蒼「・・・・・ごめんなさいっ・・・・・迷惑掛けて・・・・」




 俺はそう言いながら 俯いた。




 拓「迷惑なんて思ってない」




 拓海はそう言うと、俺の顔を自分の方に向かせた。




 蒼「っ・・・・・・・」




 若干、涙目だった俺は、拓海と強制的に目を合わせられる。




 拓「お前は 人のこと考えすぎた。もっと自分のことを考えろ」



 蒼「自分のこと・・・?」



 拓「自分が幸せになることだけ考えろ。」




 そういえば昔から俺は、他人を優先的に考えることが多かった。

 俺がそう考えるようになったのは、高校生の頃だった。

 中学までは友達がたくさん居た。

 でも、高校に上がると、地元の友達とは疎遠になった。

 男子校だった俺は、なかなか友達が出来なかった。

 その理由は、先輩達に目を付けられることが多かったからだ。

 そのせいか、同級の友達は俺に寄り付かなくなった。

 いつも先輩達に呼び出されて、一緒に行動して、何をすることでもなく たむろする。

 たまに尻を触られたり、股間を撫でられたり、スキンシップが激しいなと思うこともあったけど、昔の俺はその理由が分からなかったんだと思う。

 俺は、そんな先輩達にいつもされるがままになっていた。

 嫌われるのが怖かったからだ。

 先輩達に嫌われれば、俺は一人になってしまう。





 先輩達が卒業した後も、俺はよく呼び出された。

 俺はそれが嬉しかった。

 俺が必要とされている気がして、呼ばれればすぐに駆け付けた。

 そんな先輩達も結婚や家庭を持つと、だんだん俺の前から居なくなっていった。

 それから俺はずっと一人だった。

 彼女も居たときはあったけど、付き合ってから長くは続かなかった。

 優しすぎて何考えてるんだか分からないって理由がほとんどだった。

 それからは恋愛は意識しなくなった。

 仕事は仕事、プライベートはプライベートではっきり区別を付けた。

 プライベートと言っても、ほとんど家に帰っては寝て起きての繰り返しで、いつもパッとしない日々だった。

 そんなある日に、この人と出会った。

 人の心に土足で入ってきて、掻き回して、優しくして、甘やかしてくれる。

 俺を光のある方へ引っ張り出してくれそうな気がした。

 そんな人、俺の人生の中で初めての人だった。

 手放してはいけないと思った。




 拓「どうした?」



 蒼「あっ、うん、何でもないっ」




 考え込んでいた俺に拓海は心配そうに声を掛けると、"だいぶ拭き取れたから行くぞ"と言って、車を出した。




 蒼「クシュンッ・・・」



 拓「着いたらすぐに風呂に入れてやる、寒いだろうがもう少し我慢出来るか?」



 蒼「うん、大丈夫・・・平気っ・・・・ハックシュンッ」



 拓「ほら、また人のこと考えてる。」



 蒼「あ・・・・・」



 拓海はそんな俺にクスクスと笑った。




 ・・・・・俺にはやっぱりこの人しか居ない・・・。




 そう再認識出来た時間だった。




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