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 ・・・・なんか・・・・いい匂い・・・・・






 美味しそうな匂いに誘われるように俺は目が覚めた。

 目を開けると、悪魔は隣に居なかった。

 俺は重い腰を持ち上げてゆっくりとベッドから降りた。





 うっ・・・やっぱり痛いや・・・・・





 俺は腰に手を当て、腰を支えながら 俺の胃袋を刺激する その美味しそうな匂いのする方へ向かった。

 


 
 有「起きたか、顔洗ってこい」




 蒼「え、あ、うん・・・」




 
 まだ寝ぼけ眼の俺に キッチンに立っていた悪魔はそう言うと、洗面所はそっちだからと言って指で案内した。

 俺は素直に指示に従うと、顔を洗って、また悪魔の元へ戻る。





 有「もう少しで出来るから、そこに座ってろ」




 蒼「あ、うん」





 俺はまた言われた通りに素直に椅子に座った。

 手際良くトントンと食材を切る音がして、普段から料理をする人なんだなぁ と思った。

 




 かっこよくて、仕事も出来て、料理も出来て言うこと無いじゃん・・・・・変態だけど。

 



 
 有「ほら、出来たぞ」




 悪魔は俺にそう言うと、俺の前に朝食を運んできた。

 




 ・・・・うわぁ・・・・おいしそうっ・・・・・・

 




 ご飯に 味噌汁 焼き鮭 卵焼き お漬物 といった朝食定番の食事なのだろうが、こんな朝食は久しぶりだった。

 普段の俺は、食べなかったり、エネルギーゼリーで終わらせていた。

 それは何故かというと、時間ギリギリまで寝る派だから・・・・







 有「それ食ったら家に送ってやる」






 悪魔はそう言うと、椅子に座り コーヒーを飲み始めた。






 蒼「朝からこんなご飯久しぶり・・・・・・ん~おいしいですっ!あれ、食べないんですか?」




 有「俺は朝はコーヒーだけだ」




 


 この朝食は俺の為に作ってくれたんだ・・・






 朝から美味しいご飯が食べられるなんて久しぶりだった。

 その前に、誰かの手作りご飯を食べたのが久しぶりだった。






 有「俺の心配より自分の心配しろよ、お前、最近 まともに飯食ってないだろ」






 俺は殆どと言っていいほど、コンビニ弁当の生活だ。

 最近は、仕事に慣れるのに精いっぱいで、仕事帰りに弁当を買って帰っても疲れて寝てしまうことがよくあった。

 服を着ると目立たないが、脱ぐとちょっと痩せ気味かなと自分でも気にはなっていた。






 有「これ以上痩せるな、抱き心地が悪いからな」




 蒼「ごほっごほっ・・・・だ、だき・・・」






 悪魔の一言に不意を突かれた俺は、食べながら咽ってしまった。

 そんな俺を見ると、悪魔はまた顔を少し崩してふっと鼻で笑う。






 蒼「そ、そもそも俺は男ですよ?」




 有「それがどうした」




 蒼「そ、それがどうしたって・・・・じゃあ・・・ぶ・・・部長はゲイ・・・なんですよね?・・・俺みたいな奴じゃなくたって・・・いい人・・・いっぱい居るじゃないですか・・・」




 有「お前がいい」




 蒼「なんで・・・どうして俺なんですか・・・ 」




 有「お前がいいから」




 蒼「そんなの理由になりませんよ!俺は、部長に嫌われてるとずっと思ってたのに、気付いたら何か犯されてて、それで・・・きゅ、急に俺がいいって言われても・・・もう俺・・・どうしたらいいのか分かりませんよっ・・」




 有「なら、俺を好きになれ」




 蒼「えっ?」




 有「お前が俺を好きになれば、問題ないだろ」




 蒼「そ、そんな事、急に言われてもっ」




 有「俺は、お前が男でも女でもどっちでも構わない・・・お前がいい」

 


 有「お前が俺を好きになれないのなら・・・・・俺が必ずお前を落としてやる」




 蒼「っ・・・・・」





 真剣な瞳で見つめられ、俺はそれ以上何も言えなかった。





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