君の小水が飲みたい

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11、アウズンブラさん?!

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「えへへ、良い買い物したなぁ。ゲリとフレキもご機嫌だし。垂涎のお酒が楽しみだぜ!」

 あれ? 泉に誰かいる?!
 巨人?!
 って、わあ! フレキが水を飲みに走って行ちゃった。

「あ、え?! 待って、待って! ゲリ、走っちゃダメだ! うわあ! オレを乗せたまま、屈んで水飲まないでぇ~! うわあ! え?!」

「おい、人間。泉の水を汚すな。ゲリも気を付けろ。フレキ、久しぶりだな?」

「くう~ん」「ウオン!」
 
 ヒエッ! 方手で腋の下掴まれてる?! こええ! オレの足がプランってなってるし!
 ゲリとフレキを知っているっぽい?
 取り合えず、お礼を言おう。

「あ、あの! 助けて頂いて有り難うございます! オレ、リックです!」

「人間、いやリック。何故ゲリの背中に乗っている?」

「オレはこいつらの世話係です。何時も散歩に行く時はゲリとフレキが交代で運んでくれるんです」

「ほう? だが何故ここを通る?」

「今日はお使いでミズガルズに行って来たんです。道はゲリとフレキが知っているって言われて」

「そうか。で? 何をしてきたんだ?」

 なんだろう? 尋問されている? まあ、泉の水の話しじゃないからしゃべるけど。

「ヴァルハラのワインが昨日騎士団とワルキューレに飲み尽くされちゃって、お酒を買って来ました!」

「お?! リック、良いワインが手に入ったようだな?」

 げ?! 目の色が変わった! カツアゲされちゃう?

「今夜、ミーミルが行くと伝えておけ。久しぶりにオーディンと飲むか」

「はい! じゃあ、オレはこれで失礼します!」

 ミーミル。ミーミルさん?! この泉の名前じゃん! 
 やべえ! 賢くなる水を勝手に飲んだのがばれないうちにトンズラしよう!

「ぶも」

「うわあ!」

 な、何?! さっきまでいなかったじゃん?! 

「あ、や、やめ、やめて。うわ! 喰われる?! ち、ちょっと?! あ、ダメだ!」

「ほう? アウズンブラ、気に入ったのか?」

「ブモォ~ン!」

「へ?! この牛、ミーミルさんのですか? 何かオレを喰おうとしてない?!」
 
「いや、リックが気に入ったようだ。彼女の乳は最高だぞ? 気に入られたんだ連れて行け」

「いや、オレ、牛なんて飼えないし! あ、金! そんな最高の彼女を買うお金は持ってないですから!」

「ふん。正直者が。金はとらん。彼女の部屋はグラニと同室でかまわん」

 グラニ?! オーディン様の愛馬じゃん! スレイプニルと同室って言われても困るんだよ!

「ん? 何だ? まだ何かあるのか? ああ、彼女の食べ物か? グラニと同じでかまわんぞ? 塩がわりに、たまにお前の小水でもあげておけ」

 いや、グラニと同じ餌。
 あと、何?  オレのショウスイ? 塩でイイんだよね?

「ブモォ~ン!」

 あ? ああ! 何でだ! オレの股間が危ない!
 あ、ショウスイ! 小水か?! 何でしょんべん?!
 
「ひいぃ~! あ、やめてぇ~!」

「リック。意地悪はやめて、早く彼女に飲ませてやれ。ほれ」

 ズルッ。

「クポ! チュ、チュ、チュ、チュ、チュ~!」

「あ、アアアアッ! ダメぇ~! ち、ちょっと?! 助けて! あ、やめて、アンッ、ツッ! 出ちゃう! ひいぃ~!」

「ぶも! ジュッ、ジュ~ゴクゴクゴクゴクゴクゴクッ、ジュ~!」

 出ちゃった。色々と……。人前で、出してしまった。
 モノはくわえらてて見えていなかったと思う。
 だが、喘いじゃたじゃん、オレ。
 恥ずか死ねる。
 あ?! ゲリとフレキがよだれ?!
 何でだ?! 

「あ、こら! お前達まで、どうしちゃたんだよ?!」

「ほう? リックは特別に美味いのか? ああ、すまん。アウズンブラ、横取りなどせん。惜しいことをしたが」

 何?! オレ美味しいの?! 怖いわ! アウズンブラがいなかったら、ミーミルさんに喰われてたのかよ?!
 気を付けよう! 
 って、どうやって?!

「「ウオン!」」「ブモォ~!」

 あ。こいつらが守ってくれそう。
 っていうか、オレ、こいつらに飲ませなきゃダメっぽい?

「ああ、えっと、帰ってからな?」

「「ウオ~ン!」」「ブモォ~ン!」

 よだれがすげえ。
 飲ませなきゃダメそうです。
 がっくり。


「よう! リック、お帰り。その牛はどうしたんだ?」

「ただいま帰って来ました、ヘイムダルさん。牛はミーミルの泉で、好かれちゃって、貰ったんです」

「ん?! なんだって?! ミーミルの牛か?! そいつはアウズンブラか?! すげえモン貰ったな?! 大事にしな!」

 え?! 何そのリアクション? この牛そんなに凄いのか?
 まあ、なんだ、アレは確かに凄かったけど。違うっぽいし。
 あ、『彼女の乳は最高』って言われてたから、そっちか?

「はあ。そうします」


「お帰りリック。ん?! そいつはアウズンブラか?!」

「あ、コモンさんただいま。分かるんですか? アウズンブラですけど。頂いて来ちゃいましたけど、グラニと同じ部屋、借りてイイですか? なんか餌も同じがいいらしくて」

「あ?! そりゃあ、グラニが大喜びするから良いんだが、食事はリックがあげた方が良いぞ?」

「へ? ああ、オレの牛ですから、オレがあげますけど、なんかあるんですか?」

「アウズンブラが気に入った飼い主から食事すると、機嫌が良くなって、超、超、超~!最っ高の乳が出るんだよ」

 うわあ。超が三つ。
 アレか?『星、三つです!』ってヤツか?
 まあ、乳でも搾るか?
 飲めば分かるし。

「あ、そうだ。ミーミルさんが今夜行くから、伝えてって言われてたんだ」

「ほう? じゃあ、今日は良い酒が飲めるな。早く知らせに行けってこい」

「あ、はい。じゃあ、アウズンブラ、またね? ゲリとフレキは?……。はい、着いて来るんだよね? ありがと」


「リック! 凄いじゃないか! あそこの酒屋でこれだけの高級品を、こんな値段で買えたのかい?!」

 え?! あのオッサンぼったくりじゃなかったの? 
 そろばん弾いてニヤニヤしてたし。
 オレのにだけ変な混ぜモノもあったんだけど?

「え、ええ、まあ。結果的にそんな感じで」

 混ぜモノのアレは、オレが買い叩いたせいか?!
 まあ、あっちも商売だからな。
 だけど《上田 陸、垂涎の酒》は喜んで売ってくれたんだが?
 何でだ?


「何はともあれ、オレの酒だ! いただきま~す!」

 ん?! すげえうめえ! 
 何でコレ、売って貰えたんだ?

 ……。
 ミーミルの泉に感謝。
 『鑑定』がハンパない仕事をしてくれる

 《神々の造りし蜜酒》《効能、学者。詩人。戦闘。等で、優れた者となる》《門外不出であったが一度盗まれている》

 アレ? 色々とダメっぽい?
 っていうか、盗品じゃん?!
 効能の最後の、ダメじゃん?!
 何と戦うんだよ?!
 身体強化じゃなくて、バーカーサーの方じゃん?!
 薄めて飲もう!
 こっそり、一人で飲もう!
 やっぱりあのオッサンは一癖あったんじゃん!
 
「まあ、イイか? この酒、めっちゃ美味いし。リュックから、オレが出さなきゃ、誰も分かんねえよな。うん。オッサンは言えねえだろうし。うん。オレは何も見なかった!」
 
「オオ~ン~ッ!」 「オンオンウオォ~ン! ウオォ~ン!」

 ん? ゲリとフレキの遠吠えか?
 珍しいな。なんかあったのか?

 そう。オレは忘れていた。
 あいつらとの約束の事を。 
 
 




 
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