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第一章 悪女と婿にしたい男性ナンバーワン
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「そういや庭師のじいちゃん元気?」
クライドが思い出したように言った。
「ジョン? 元気よ。そこの小屋にいるんじゃないかな」
「ちょっと挨拶したいんだけどいい?」
裏の森の片隅にある小屋まで案内をし、ドアをノックする。
「開いてるよ」
ドアを開けると、中には小柄だがどっしりとした老人がいた。真っ白いひげをはやし、物語にでてくるドワーフを思わせる風貌だ。
この小屋は物置兼作業小屋で、庭師の彼は外で作業をしている以外はだいたいここで農具の手入れなどをしている。
「ダリア様どうされました? その方は……」
「ジョンじいちゃん久しぶり、クライドです。クライド・ノーバック」
ジョンは少し目を細めると、懐かしそうに、はあと息を吐いた。
「クライドぼっちゃん。いやもうクライド様とお呼びしたほうがいいんでしょうね。お久しぶりです。大きくなりましたね」
「ジョンじいちゃんは変わらないね。あいかわらずじいちゃんだ」愉快そうに笑う。
「ナイフで木を削るコツとか焚き火の起こし方とか、昔ここでじいちゃんに教わったことが結構役に立ってるんだよ。だからお礼を言いたくて」
「そんなお礼を言われるようなことなどしとらんよ。クライド様の努力の結果だよ」
「じいちゃんの教わった釣りも上手になったんだぜ。今度あの池で勝負しよう」
昔と変わらずやたらジョンに懐いているクライドを、ダリアは少し離れたところから眺めていた。
小さい頃はクライドと二人でこの小屋によく遊びに来ていたから、遊び道具をここに置かせてもらってたっけ。
ダリアは小屋の隅にある古ぼけた箱に目をやった。そこには子どもの遊び道具が無造作に投げ入れられており、その中にホコリまみれのボールが見えた。
ダリアは楽しかった過去を思い出して少し笑った。
クライドが思い出したように言った。
「ジョン? 元気よ。そこの小屋にいるんじゃないかな」
「ちょっと挨拶したいんだけどいい?」
裏の森の片隅にある小屋まで案内をし、ドアをノックする。
「開いてるよ」
ドアを開けると、中には小柄だがどっしりとした老人がいた。真っ白いひげをはやし、物語にでてくるドワーフを思わせる風貌だ。
この小屋は物置兼作業小屋で、庭師の彼は外で作業をしている以外はだいたいここで農具の手入れなどをしている。
「ダリア様どうされました? その方は……」
「ジョンじいちゃん久しぶり、クライドです。クライド・ノーバック」
ジョンは少し目を細めると、懐かしそうに、はあと息を吐いた。
「クライドぼっちゃん。いやもうクライド様とお呼びしたほうがいいんでしょうね。お久しぶりです。大きくなりましたね」
「ジョンじいちゃんは変わらないね。あいかわらずじいちゃんだ」愉快そうに笑う。
「ナイフで木を削るコツとか焚き火の起こし方とか、昔ここでじいちゃんに教わったことが結構役に立ってるんだよ。だからお礼を言いたくて」
「そんなお礼を言われるようなことなどしとらんよ。クライド様の努力の結果だよ」
「じいちゃんの教わった釣りも上手になったんだぜ。今度あの池で勝負しよう」
昔と変わらずやたらジョンに懐いているクライドを、ダリアは少し離れたところから眺めていた。
小さい頃はクライドと二人でこの小屋によく遊びに来ていたから、遊び道具をここに置かせてもらってたっけ。
ダリアは小屋の隅にある古ぼけた箱に目をやった。そこには子どもの遊び道具が無造作に投げ入れられており、その中にホコリまみれのボールが見えた。
ダリアは楽しかった過去を思い出して少し笑った。
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