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帰り道、私を背負おうとする兄と、それを拒絶する私とで兄妹喧嘩が勃発した。
結局、一緒に帰ってくれたナブが間に入ってくれて、兄には私の荷物を持ってもらうということで妥協してもらった。
一緒についてきてくれたナブは、兄のシスコンぶりには慣れているので笑って見ているだけだ。
「お兄ちゃん、心配してくれるのはありがたいけど、度が過ぎると周囲が本気で引くから止めて」
しょぼんとしている兄は子犬のようだ。垂れた耳が見える。
「今日だって結局ナブにも迷惑かけちゃったし……」
「僕は大丈夫だよ。久しぶりに翔くんとチカと一緒に帰れてむしろ嬉しいから」
にこにこと答えるナブに、兄の垂れた耳がピンと立ち上がった。
「ナブは本当にいい子だよな。さすが俺の弟分」
ナブはえへへ、と照れ笑いをする。
ナブは私達兄妹の近所に住んでいる、いわゆる幼馴染だ。
付き合いは幼稚園から。ナブは最初、別の幼稚園に通っていたけど、途中で私達兄妹と同じ幼稚園に転園してきた。幼稚園バスの乗り場が同じだったためすぐ私達は仲良くなり、というか、私達兄妹が勝手にナブを弟認定して遊びに付き合わせた。その頃は私のほうが背が高かったとはいえ、同級生のナブを弟呼ばわりは失礼だったと今では思う。
ちなみにナブというニックネームは兄がつけた。
「ミチカのニックネームがチカなんだから、マナブはナブだろ。だって弟だし!」
という幼児特有の謎の理論でつけられ、その場にいた私も「おそろい!」と喜んでしまったため、ナブという変なニックネームに決まった。
小学生の頃、さすがに変だと気づいて、そのニックネーム止めようか? とナブに提案したことがあるが、
「ナブがいいよ。翔くんがつけてくれてチカとおそろいだから気に入ってる」
とニコニコ答えてくれた。
優しくて争いを好まない。人と争うくらいなら自分が身を引くタイプだ。
だから、保健室で先輩たちを遮って私達と帰ると主張したときは驚いた。
あれが、ナブが兄を思う気持ちの強さなのだろう。
ナブはいつから兄が好きだったんだろう。いくら好きでも弟としてしか思われていない恋心。
いままで気づかなくてごめん。私は心のなかで謝罪をした。
歩きながらも、頭の中をぐるぐる回っているのはキミボエのことだ。
あのときとっさに頭に浮かび、なぜか納得して今に至るけど、実は記憶自体がまだ曖昧だ。
記憶を整理するため黙って歩いていると、両隣を歩いているナブと兄が心配そうに声をかけてきた。
「ねえ、つらそうな顔をしているけど、本当に大丈夫?」
「チカ、やっぱり病院に行こう」
顔に出ていたらしい。慌てて二人に言い訳をする。
「大丈夫だって。保健の先生も貧血って言ってたでしょう。週末ゆっくり休めばよくなるよ」
納得しない表情の二人を無視して、私は家までの道を急いだ。
結局、一緒に帰ってくれたナブが間に入ってくれて、兄には私の荷物を持ってもらうということで妥協してもらった。
一緒についてきてくれたナブは、兄のシスコンぶりには慣れているので笑って見ているだけだ。
「お兄ちゃん、心配してくれるのはありがたいけど、度が過ぎると周囲が本気で引くから止めて」
しょぼんとしている兄は子犬のようだ。垂れた耳が見える。
「今日だって結局ナブにも迷惑かけちゃったし……」
「僕は大丈夫だよ。久しぶりに翔くんとチカと一緒に帰れてむしろ嬉しいから」
にこにこと答えるナブに、兄の垂れた耳がピンと立ち上がった。
「ナブは本当にいい子だよな。さすが俺の弟分」
ナブはえへへ、と照れ笑いをする。
ナブは私達兄妹の近所に住んでいる、いわゆる幼馴染だ。
付き合いは幼稚園から。ナブは最初、別の幼稚園に通っていたけど、途中で私達兄妹と同じ幼稚園に転園してきた。幼稚園バスの乗り場が同じだったためすぐ私達は仲良くなり、というか、私達兄妹が勝手にナブを弟認定して遊びに付き合わせた。その頃は私のほうが背が高かったとはいえ、同級生のナブを弟呼ばわりは失礼だったと今では思う。
ちなみにナブというニックネームは兄がつけた。
「ミチカのニックネームがチカなんだから、マナブはナブだろ。だって弟だし!」
という幼児特有の謎の理論でつけられ、その場にいた私も「おそろい!」と喜んでしまったため、ナブという変なニックネームに決まった。
小学生の頃、さすがに変だと気づいて、そのニックネーム止めようか? とナブに提案したことがあるが、
「ナブがいいよ。翔くんがつけてくれてチカとおそろいだから気に入ってる」
とニコニコ答えてくれた。
優しくて争いを好まない。人と争うくらいなら自分が身を引くタイプだ。
だから、保健室で先輩たちを遮って私達と帰ると主張したときは驚いた。
あれが、ナブが兄を思う気持ちの強さなのだろう。
ナブはいつから兄が好きだったんだろう。いくら好きでも弟としてしか思われていない恋心。
いままで気づかなくてごめん。私は心のなかで謝罪をした。
歩きながらも、頭の中をぐるぐる回っているのはキミボエのことだ。
あのときとっさに頭に浮かび、なぜか納得して今に至るけど、実は記憶自体がまだ曖昧だ。
記憶を整理するため黙って歩いていると、両隣を歩いているナブと兄が心配そうに声をかけてきた。
「ねえ、つらそうな顔をしているけど、本当に大丈夫?」
「チカ、やっぱり病院に行こう」
顔に出ていたらしい。慌てて二人に言い訳をする。
「大丈夫だって。保健の先生も貧血って言ってたでしょう。週末ゆっくり休めばよくなるよ」
納得しない表情の二人を無視して、私は家までの道を急いだ。
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